愛知ターゲットとは

愛知ターゲットは、正式には、生物多様性戦略計画2011-2020の一部となります。
生物多様性戦略計画は、生物多様性条約の10年間の基本的方向性をまとめるもので、
①戦略が描く未来像(ビジョン)「2050年までに人と自然が共生する社会」、
②その未来像に到達するために、2020年までに条約加盟国行った決意(ミッション)「2020年までに、生物多様性の損失を止めるための行動を取る」
③5つにグループ分け(戦略目標と呼ぶ)される、20の個別目標
④実施を支える仕組み という構成からなります。

にじゅうまるプロジェクトですが、文章量の都合から、全てを指して「愛知ターゲット」と使っています。(*政府公式訳は、「愛知目標」ですが、愛知“県”の目標と誤解された経験もあり、世界目標であることを少しでも理解してもらうため、にじゅうまるプロジェクトでは、ターゲットという表現を使っています。)

2050年ビジョン
2050年ビジョンには、日本が提唱した概念「人と自然の共生(living in Harmony with Nature)」が、理念として掲げられています。

2020年ミッション
「2020年までに、生物多様性の損失を止めるための行動を取る」という決意が文章化されたのには背景があります。実は、2010年目標という目標が、2002年にオランダのハーグで開かれた第6回締約国会議で決まっていました。しかし目標は「生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」というものでした。生物多様性の損失速度のはかり方も曖昧であれば、顕著に減少したというには、過去-2002年または基準年-現在という3点の情報が必要なのに対し、その情報もないという目標設定でした。そのため、愛知ターゲットは、「行動をとる」(その結果としての生物多様性の状態の改善は、少し先かもしれない、、、)に重きを置きました。行動をとるか、とらないかは、私たちの意志・決意でできることだからです。

20の個別目標をグループ分けする「5つの戦略目標」
愛知ターゲットには全20の目標がありますが、5つのグループ(戦略目標と呼ばれます)に分けられています。このグループ分けは生物多様性条約に関する科学者の会議によって提案されたもので、原因・状態の維持・改善・取り組みの強化という一連のパッケージで、取り組むという意図があります(DPSIR モデルと呼ばれます。)

地球規模、国家規模、地域規模で、

多様な主体(国連、国際機関、政府・自治体・科学者・NPO・ユース・市民・農家・林業家・漁師・・・)がそれぞれの立場で

生物多様性・自然の恵みを守り・向上させ、賢明に利用し、公正に利益を分かち合うための行動を

分かりやすく20に単純化し、2020年までの目標としてまとめあげた。というのが愛知ターゲットになります。

戦略目標Aは「生物多様性の価値を理解する社会を作ろう」という1から4の目標が入ります。自然が破壊されるのは、その重要性・人々が何をすれば良いか分からない、道路作りのときに自然のことを検討することになっていないから。さらにはモノを作る・買うといった社会全体の仕組みを変えていこうという目標群になっています。

戦略目標Bは「自然に迫った危機から守ろう、賢く使おう」として、目標5から目標10が入ります。森林伐採を抑制したり、過剰漁獲をやめたり、外来種が生態系に放されるのを止めようなどの悪影響を極力抑えていこうという目標群になっています。人の手のつかない地域だけではなく、第1次産業が行われる地域も含んだ目標が入っています。

戦略目標Cは「今ある自然を未来に残そう」として、目標の11から13が入ります。自然の立場を優先し、大事にする地域(保護地域)を作ることや、絶滅危惧種の絶滅を防ぐ活動、品種の多様性を守っていくことなど、重要な自然、特に危機にある生物種や、種内の多様性の状態を残していこうという目標群になっています。

戦略目標Dは「自然を元に戻し、その恵みを公平に分け合おう」として、目標14から16が入ります。自然資源に依存した人々のことを特に考えた取り組み(自然再生も含む)、自然の恵みの一つとして気候変動対策や砂漠化の対策などが入っています、生物多様性がもたらし、保持してくれる自然の恵みに焦点があてられた目標群となっています。

戦略目標Eは「約束を守れるように、参加しよう、学ぼう、応援しよう」として、目標17から目標20が入ります。上記4つの戦略目標を達成するために、様々な人が立場を超えた行動や、そのための科学技術、伝統的な知識の掘り起こし、そして、達成のための人・資金を増やしていく行動などが入っています。目標達成のために、人々の意識や知識、支援の拡大に焦点を当てた目標群となっています。

愛知ターゲットは、相互に深い関わりを持っています。一つの活動・事業が、複数の目標の達成に貢献することもよくあります。たとえば、生態系に配慮し、持続可能な農業のために、化学肥料などを極力抑えた田んぼ作りをし、ふゆみずたんぼも行うという取り組みは、愛知目標の7番(1次産業の営み)、8番(化学汚染)、12番(種の保全)に関わるでしょう。過剰伐採によって生まれた荒地を森林に戻すという取り組みは、自然の恵みを取り戻す活動(目標14 生態系サービス)であると同時に、気候変動などに強い環境を取り戻す活動(目標15 復元)になります。

愛知ターゲットガイドのご紹介

aichiにじゅうまるプロジェクトでは、『愛知ターゲットガイド』(国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)作成)を販売しています。

この冊子は、「愛知ターゲット」を、生物多様性条約事務局の公式ガイド(リンク先英語)に基づいて解説している国内唯一の資料です。
愛知ターゲットの内容や構成、関連する情報をわかりやすい言葉でくわしく解説しています。また、身近な取り組みとのつながりや、取り組みを応援
する「にじゅうまるプロジェクト」などの活動についても知ることができます。500円(税込・送料別)でIUCN-J事務局にて販売中です。

購入方法については、こちらをご覧ください。部数に限りがありますので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。