国際生物多様性の日2013 メッセージ(仮訳)
国際生物多様性の日2013 「水と生物多様性」のメッセージを仮訳しました。
国際生物多様性の日2013に向けたメッセージ
(原文はこちら)
1.水は生命そのものであり、食糧安全保障、飲み水や衛生、多くの経済活動など私たちの暮らしを支えていると同時に、生態系の健全性とそして生物多様性を支えています。
2.私たちは、水の需要がしばしば供給を超えたり、最低の基準も満たさないような水質、極度な干ばつや洪水をますます目にするような、徐々に水の不安定な世界で生きることになろうとしています。
3.水の安全保障は、政治的にも、市民にとっても、そして経済にとっても大きな課題となっています。「世界経済フォーラム2013世界リスク報告書」では、水の供給危機が世界経済システム破たんに次ぐ第2位の危機要因と報告され、食糧不足や恒常的な不均衡、エネルギーや農業価格の極度の不安定さをもたらすものと報告されています。
4.生態系は水の手に入りやすさやその水質を調整しています。生態系の劣化は水供給の不安定さにつながりますし、生態系の保全や復元はそれゆえ水の確保を助けてくれます。生物多様性はこの生態系を支えるものであり、そのため人類の福祉や持続可能な開発に対して生物多様性が果たす目に見える重要な貢献の一つといえます。
5.生態系は、ダムや水処理施設といった人が作り上げる設備と同じような働きを持つ自然の水施設といえます。自然と人工の水施設は一緒に管理することができ、そうすることで持続可能な成果、効率性の向上、コスト削減などの大きな便益をもたらします。環境と開発の互いに利益のある(win-win)成果です。
6.水の管理につながる自然基盤の活用は千年以上にもわたる長い歴史と、しっかりとした根拠があり、徐々に広まりつつありますが、その可能性を最大化するほど主流の考えとはなっていません。
7.水に影響を及ぼす生態系の構成要素には、森林、草原、湿地、土壌があり、それぞれ作用しあいながら、地域・広域・世界規模で水の安全保障という成果をもたらすことができます。
8.生態系なしでは、水循環もそれに関わる炭素や栄養塩の循環は全く違ったものとなり、有害な結果がもたらされます。また、水を巡る政策や決定は十分にこの相互のつながりや相互依存の関わりについても、生態系を活用するというソリューションについてもほとんど考慮していません。
9.水に関する恩恵は、生態系が提供する価値であり、生態系とは湿地だけでなく森林や草原土壌など多くの生態系タイプが提供するものである
10.気候変動の影響は、まず水循環の変化を通じて現れ、それが生態系にも影響を及ぼします。生態系に基づいたアプローチは、気候変動に適応するための最初の対策であり、水の管理が大事な部分を占める。
11.水と炭素の循環は相互に依存している。生態系による持続的な炭素固定や貯蔵を行うためにも水は必要とされ、(炭素固定も担う)植物や他の生物多様性は、その必要とされる水を調整するプロセスに関わる。例えば、森林は水を必要とし、同時に、水のコントロールの役目をする。気候変動への適応と緩和は水を通じて相互に依存している。
12.生態系の視点を水の管理に活用できる可能性がいくつもあります。①農業景観における土壌の健全性や表土の保全と同時に、水の利用や汚染・土壌浸食・地滑りなど“農業をやめることによる悪影響”を低減しつつ、食料安全保障のための水の安全保障を達成する。②持続可能で安全な都市を実現するために都市の水管理に自然インフラアプローチを組み込む。③洪水氾濫原や沿岸湿地、汽水域などの湿地の拡充で自然災害への回復力を高める。④森林など管理された景観が、飲み水の供給の持続性を高める。⑤洪水や旱魃の深刻度やリスクを緩和する。
13.水管理のために生態系を保全し、回復することは、重要な共通の利益をもたらします。例えば、湿地は、水の規制を助けるとともに、漁業を支援することにもなります。森林は、材木を提供するとともに材木以外の林産物や花粉を運ぶ虫や野生生物のすみかとなります。改善された景観は、レクリエーションや文化的価値を提供します。これらの共通利益は、水に関わるインフラへの投資とリターンを考える時の重要な“利益”として考えなければなりません。
仮訳 にじゅうまるプロジェクト事務局
(財)日本自然保護協会 道家哲平