COP14報告会を開催しました。

2018年12月18日(火)に環境パートナーシッププラザ(GEOC)にてCOP14(第14回生物多様性条約締約国会議)の報告会を行いました。

主催:国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)
共催:日本自然保護協会生物多様性わかものネットワーク国連生物多様性の10年市民ネットワーク
協力:環境省 自然環境局生物多様性戦略推進室、地球環境パートナーシッププラザ
参加者は30名程度集まり、COP14に参加した方から議題の詳細な決定内容の解説や複数のセクターによる活動の報告および質疑応答などを行いました。

報告会の概要

環境省からは、閣僚級会合(ハイレベルセグメント)、ビジネスと生物多様性フォーラム、個別会談の概要、COP14結果概要、サイドイベント、中国の動向についての概要報告が行われました。COP14結果概要として「ポスト2020プロセス」「生物多様性の主流化」「気候変動」「保護地域(OECM)」「塩基配列情報(DSI)」「合成生物学」の6議題が取り上げられました。

NGO・研究機関による各テーマの注目・解説では、「ポスト2020」「遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)」が扱われました。
「ポスト2020」解説では、“特別作業部会の設置と共同議長指名”、“プロセスそのものの普及啓発のためのハイレベルパネルの設置”というCOP10の愛知目標の検討時にはなかったプロセスとして今回新たに合意された決定の紹介や、ポスト2020のキーワード紹介、パリ協定のような仕組みの導入、各締約国が自発的に行う“生物多様性コミットメント”の利点や課題・不明点などに関する説明がありました。
「遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)」解説では、SBSTTA22時点では決議案がすべてブラケット(未合意)になっていた文書に対し、“DSIの利用は、CBDや名古屋議定書の適用範囲に含まれるのかどうか”、“DSIの利用から生じた利益のあり方”、“ポスト愛知目標との関連”などの論点のもと、交渉が行われたとのことでした。途上国側(マレーシア、ブラジル、アフリカグループなど)は、DSIは、遺伝資源の利用の結果であるため、生物多様性条約や名古屋議定書の適用範囲に含まれることを主張した一方、先進国(EU、カナダ、ニュージーランド、韓国、日本、スイス)は、DSIの定義が不明なこと、遺伝資源とDSIは同等ではないこと、MATによってカバーが可能であること、などを主張した、との内容が説明されました。
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発表の様子

また、複数のセクターによる活動報告では、「企業と海洋」「先住民地域共同体」「ユース」に関する報告が行われました。

「企業と海洋」では、生物多様性の主流化における重要セクターの1つである「ビジネス(企業)」を中心に発表が行われました。COP14でも紹介された、日本の電機・電子4団体生物多様性ワーキンググループ作成の「Let’s Try Biodiversity(企業が取り組むはじめての生物多様性)」の内容紹介もありました。
先住民地域共同体からは、8(j)WGの今後や、名古屋議定書履行におけるFPIC(自由意志を発揮できる状態での事前の情報提供に基づく同意)、ポスト2020が重要論点となっているとの内容が報告され、責任と行動変化に関するモデルの紹介がありました。
ユースからは、派遣者決定や事前意見交換会・勉強会などの派遣前の準備プロセス、現地での日本ユースの活動内容の発表に加え、GYBN(Global Youth Biodiversity Network:生物多様性世界わかものネットワーク)による政策提言・キャンペーン・ブース運営・サイドイベントの実施などの活動内容について報告をし、最後には、ユースの活動に特化した報告会を来月に実施するという広報も行いました。

質疑応答では、ポスト愛知目標策定に向け、そもそも愛知目標ができた際にはどのようなプロセスをふんでいたのか、ポスト2020目標の「知識ベース」という言葉の意味するものは何か、消費者に対してどのように生物多様性を主流化してもらうか、愛知目標の達成までの残り2年間でどのようなことをしていったらよいのかなどの質問がありました。

特にポスト2020目標については、残りの2年間を緊急行動期間として行動を行っていくことが大事なのではないか、という意見がフロアからあがり、環境省からは真剣に何をしていったらよいか考えているため、報告会などでの意見を参考にしているとのことが話されました。また、IUCN-Jからは、にじゅうまるプロジェクトによる貢献や、日本における企業とNGOなどとのコラボ事例の成果発信、2年に1度実施している「にじゅうまるCOP」の開催を予定していることなどが話されました。

 

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質疑応答時の会場の様子

閉会挨拶では、会長の渡邉綱男よりCOP14で開かれた自然文化サミットで「人と自然の共生」「生物文化多様性」に注目が集まったことが紹介されました。また、COP10で多くの提案を行った日本へのポスト2020への期待が高く、2020年に向けて多くの取り組みが必要なため、多様なセクターの人と連携して、2020年に向けて活動していきたいと述べました。

プログラムと発表資料

<概要報告>
・環境省 自然環境局生物多様性戦略推進室(PDF)

<NGO・研究機関から、各テーマの注目・解説および各セクターの活動報告>
・国際自然保護連合日本委員会 道家 哲平 「ポスト2020」(PDF)
・総合地球環境学研究所 小林邦彦 「遺伝資源に関するデジタル配列情報」(PDF)
・CEPAジャパン 宮本育昌 「企業と海洋」(PDF)
・UNDB市民ネットワーク 三石朱美 「先住民地域共同体の活動」(PDF)
・生物多様性わかものネットワーク 引地慶多・矢動丸琴子 「ユースの活動」(PDF)

<閉会挨拶>
・国際自然保護連合日本委員会会長 渡邉綱男

 

本報告会は環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催いたしました。

国際自然保護連合日本委員会 矢動丸琴子