にじゅうまるCOP2、2日目は8つのテーマで分科会が開催されました。

にじゅうまるCOP2の2日目は、愛知ターゲットの「主流化」をテーマに、8つの分科会が開催されました。テーマごとでの取り組み状況や、今後の課題などを、様々なステークホルダーが一同に会し検討することで、解決策や新たな方向性等を探りました。

 

分科会1:「わかものを巻き込むために」
      (生物多様性わかものネットワーク)

生物多様性わかものネットワークがつくった「生物多様性わかもの白書」を用いて、わかものを巻き込むために必要な5つの要素を紹介。奈良御所実業高校から「生物多様性の保全」研究班での学生を巻き込む事例、日本エコロジスト支援協会から「命をつなぐプロジェクト」について紹介がありました。若者の活動で若者を巻き込む、多世代で若者を活動に巻き込むためのアイデアを共有するなか、生物多様性という言葉にギャップを感じて壁を作られてしまわないよう、他の概念を切り口として関わる仲間を増やしたらどうかなど、多様な意見が交わされました。

若者と大人の入り混じった議論が交わされていました

若者と大人の入り混じった議論が交わされていました

 

分科会2:「動植物園の活用で、生物多様性認知度をUP!」
     (CEPAジャパン/国連生物多様性の10年市民ネットワーク)

午前中は東山動植物園をフィールドに、副園長の黒邉氏のご案内で動物園のアフリカゾウ、ゴリラを視察。午後は名古屋大学の会場に戻りワークショップを開催し、午前中の視察を踏まえて意見を共有して「もっと身近に動植物園を!」と感じられるように、どのようなことができるかを話し合いました。アウトプットとしてデジタルの活用、部屋、公園、団地、地域など多様な場で動植物園を感じるためにできることなどについてアイデアが報告されました。

現地に足を運んだ唯一の分科会でした。

現地に足を運んだ唯一の分科会でした。

 

分科会3:「絶滅危惧種保全に向けた企業と市民の新たな連携を考えよう!」
     (公益財団法人日本自然保護協会)

絶滅危惧種を守るためには、公的資金だけに頼るだけではなく、民間連携も必要との認識のもと、行政、企業、市民との連携、マッチングの可能性について、既に取組みを進めている企業の方の視点等も交えて多角的に話し合われました。絶滅危惧種を守る上では、それについての情報を公開し知ってもらうことが、地域の人から協力を得るうえで必要だという意見や、多様な主体との連携を広げるために「絶滅危惧種」という切り口だけではなく、生活との関係にまで落とし込み、腑に落ちる伝え方をすることが大切といった意見もありました。

多くの企業も議論に参加していた分科会。今後が楽しみです。

多くの企業の方も議論に参加していた分科会。これからの発展が楽しみです。

 

分科会4:「地域にとって必要な生物多様性地域戦略とは」
(四国生物多様性ネットワーク)

地域戦略をつくろうとしている自治体関係者から、地域戦略を活用して地域を盛り上げようという人や、折角戦略をつくったけれどもうまく機能していないと感じている人まで、多様な立場が集まり、具体的な情報を共有しつつ率直に意見交換を行いました。

行政や専門家だけではなく、地域に暮らす人たちが意欲的に参加して取り組んでいくしくみをつくることが大切、人が出会いつながる場をつくることが必要など、実体験に基づく意見がたくさん交わされました。

ここは自治体の方が多い分科会でした。現場の実情が良くわかる分科会でした。

ここは自治体の方が多い分科会で、現場の実情が良くわかる分科会でもありました。

 

分科会5:「魚食クライシス〜文化と生物の多様性〜」
(名古屋大学夏原研究室)

文化としての魚食に注目し、身近な生物と文化の多様性について考えました日本の魚食文化はさまざまな料理法を通して知られていますが、最近は魚を食べる機会自体が減っています。

生物多様性に含まれるストーリーを知れば、人はその価値にお金を払うという前提のもとに、価値をどうストーリーとして伝えるかが重要であること、また文化の理解には30年もの時間が必要であり、長期的ビジョンを持って取り組まなければならないという意見、川魚を食べる文化が市場として成り立つ事例などを通じて、文化を守るための施策について考えました。

魚食、文化に関する熱い議論を聞くことが出来ました。

魚食、文化に関する熱い議論を聞くことが出来ました。

 

分科会6:「目標3(奨励措置・補助金)COP13に向けた提言づくり」
(NPO法人野生生物保全論研究会)

2016年12月の生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)までに、生物多様性に影響を及ぼす奨励措置・補助金の分析研究を完了するということが、生物多様性条約会議で合意されました。現場の声が活かされた奨励措置・補助金改革を目指して実施したアンケート結果やディスカッションを踏まえ、奨励措置・補助金について

1)生物多様性への正または負の影響を判別するしくみを構築する、2)政策評価の権限を強化し、愛知目標3を確実に進めるための手段として活かす、3)生物多様性に正または負の影響を与えうる補助金の柔軟な改善-統合・廃止が可能になる制度を構築する、4)国・自治体が生物多様性の保全及び持続可能な利用のための地域主体の政策統合を積極的に支援する、5)企業の取り組みを促すため、取引店入札の際に生物多様性に関わる認証制度を創出・活用する、6)正の補助金が有効に活用されるための実践的なコンサルティングシステム

という6つの提言がつくられました。

補助金というテーマで実施された分科会。実施されれば効果の大きいテーマでもあります。

補助金というテーマで実施された分科会。実施されれば効果の大きいテーマでもあります。

 

分科会7:「田んぼの10年プロジェクトの歩みと水辺の生きものがつなぐ田んぼと干潟」
(ラムサール・ネットワーク日本)

仲間を増やすために、水田の生物多様性の価値についての理解が浸透することが必要で、2020年までに500ほどの団体とつながっていきたいということ、生物多様性に配慮してつくられた作物・商品が評価され、売れるようにするために、まなざしを変える、つくる人・うる人・買う人をつなげるしくみをつくる、一次産業の流域ネットワークづくりを目指すなどという意見が共有されました。そして昼には荒尾干潟ののり、三河湾のあさり、蕪栗沼のふゆみずたんぼ米、渥美半島のたくあんを使った「ラムサールおにぎり」がふるまわれ、食べて、感じて、つながる体験を共有しました。

おにぎりパワーでみんな笑顔!

おにぎりパワーでみんな笑顔!

 

分科会8:「どこをどう守る?効果的な保護地域の実現へ」
(国立環境研究所)

民間保護区の重要性を確認し、企業がこの領域にどううまく関わるかについて考えました。「保護区」という制約がつくと企業には厳しいのではという見解の他、都心部でも屋上を緑地として活用し、都市域の緑地ネットワークなどとして意義付けを行うことにも可能性もあるかもしれない、ISOの取得要項の中に生物多様性への配慮という項目が加わったため、こういったことに関連づけて提案を行うといいのでは、などの意見が交わされました。

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保護地域の持つ可能性の認識や、企業にとってのネックのポイント等が共有された時間となりました。

 

全体セッションでは、各分科会への質問や意見が交わされました。「インターンのようにわかものの参加する活動を増やすことが大事」「活動体験ができるイベントをつくって生物多様性への関心を持ってもらい、入ってからやめたいという採用のミスマッチを減らすことも必要」「おいしいものを食べられるということは、生物多様性の恵みだということを浸透したい」「田んぼのお米も、海のおさかなも、沖縄のもずくも、守らないとなくなってしまう。守られているから、守りたい」「農家の方が使える補助金(多面的機能支払交付金、中山間地域等直接支払交付金、環境保全型農業直接支払交付金)に関する情報を、農家のおじいちゃんおばあちゃんが自分で入手し、活用するのは難しい。よくわからない難しい言葉を通訳するようなひとが必要」などという意見が共有されました。

 

分科会を通しての会場からの意見も多く出ました。

分科会を通しての会場からの意見も多く出ました。

最後にIUCN-J副会長の草刈氏から、生物多様性を保全のためには、「5アクション」だけでは足りない。分科会の間で交流ができればよかったが、それができずもったいなかった。20の愛知ターゲットはすべてつながっているのだから、テーマの重なるグループのフォローアップをしていきたい。議員へのアプローチをするなど、次の2030年につなげる活動を進めていきたいという話がありました。熱気に包まれ、あっという間に過ぎた2日間でした。次回のにじゅうまるCOP は、2年後の2018年に開催される予定です。

 

閉会した後も、名残惜しく議論を続ける参加者の皆様

閉会した後も、粘りながら議論を続ける参加者の皆様。

 

(報告:にじゅうまるメンバー 株式会社yukikazet 今井麻希子)

当催事は、平成27年度地球環境基金、経団連自然保護基金の助成を受けて開催しています。