聞き飽きた「自然保護」の連呼では効果がでない? 行動を促進させる心理学、コンサベーション・サイコロジーという言葉をご存知ですか?~1~

「環境」や「サステナビリティ」といった言葉がニュースで取り上げられるようになった90年代以降、「気候変動」や「環境問題」「自然保護」といった言葉は誰もが日常的に目にするほどの一般的なトピックになりました。

 

その反面、今や「自然を守ろう」「環境を大切にしよう」というメッセージはすっかり耳慣れてしまい、エコ・キャンペーンをいくら打っても、それだけでは具体的な成果をあげることが難しい、という課題が世界的に共有されています。

 

そこで注目を集めているのが、心理学的アプローチであるコンサベーション・サイコロジーです。サイコロジー(心理学)から自然保護(コンサベーション)の推進を図るために、知識やマインドに働きかけるばかりではなく、具体的に人々の行動を変えることにまで結びつけるという学問です。

 

今回、心理学的アプローチを推進する、IUCN-CEC(国際自然保護連合教育コミュニケーション委員会)の理事のリー・ハンインさんが2月に来日されたので、ぜひこの学問を知りたいと考え、にじゅうまるプロジェクト運営委員の一人、今井麻希子さんがリー・ハンインさんへ、インタビューをさせて頂きました。その内容を2回に分けお伝えさせて頂きます。

Hanying Liさん:IUCN-CEC理事、中国普及啓発コーディネーター

Hanying Liさん:IUCN-CEC理事、中国普及啓発コーディネーター

 

CSR担当者も注目!「行動心理」と「思考パターン」に着目した企画づくりの重要性と需要の高さ。

 

リーさんは、環境保全や心理学を専門とするコンサルタントとして10年以上にわたり、中国で政府やNGOらと共に環境や生物多様性に関するプロジェクトに従事した経験を持ち、IUCNやWWF(世界自然保護基金)のアジアチームに属して国際的なプロジェクトも数多く手がけてきました。その経験から、心理学的アプローチの必要性を強く感じていると言います。

 

特に先進国において、人々が行動を変えない理由は、環境問題について知らないからではありません。頭ではわかっていても、実際に行動を変えようというモチベーションにまで結びついていないのです。

 

そして、この問題に関心を示しているのは、環境保全に取り組むNGOや政府の政策担当者だけではありません。CSR活動等を通じて環境保全のプログラムを展開する企業もまた、こういった課題に対応するニーズを強く感じています。

 

と、リーさんは語ります。また国際的にも、このトピックへの関心はとても高まっているといいます。なんと先日上海で開催した無料セミナーには、上海にアジアの事業本部を置く大規模多国籍企業を含む多くの企業CSR担当者らが参加し、大変な反響があったほど。「有料でもいいからもっと学びたい」というリクエストが多く寄せられ、来年は有料の3日間のセミナーを開催することが決まったそうです。

 

「聞き流されるコミュニケーション」から、「腹落ちして行動に結びつき具体的成果をもたらす教育的普及啓発」へ。リーさんは、今回の来日を通じて、日本の環境教育の経験から学び、今後、このコンサベーション・サイコロジーを日本にも伝えたいと、意欲的に語ります。

 

今日はここまで!2回目はコンサベーション・サイコロジーの具体的な手法について紹介します。お楽しみに!

報告:今井麻希子

CSR マネージャーに対して実施したプログラム:上海

CSR マネージャーに対して実施したプログラム:上海