コウノトリを呼ぶ田んぼづくり。人にもコウノトリにも優しい栃木県小山市の5年目の取組み。
先日、にじゅうまるスタッフは、田んぼの生物多様性向上10年プロジェクトへ活動が登録されている「ふゆみずたんぼ実験田」推進協議会(事務局・小山市)が主催する「ラムサールふゆみずたんぼ」オーナー制の田植えに参加してきました。皆さんは「ふゆみずたんぼ」という農法を知っていますか?
「ふゆみずたんぼ」は、普通の田んぼの管理とは少し違う管理をしています。普通の田んぼでは稲刈り(9月ごろ)のあと、水を抜いて乾燥させてしまうのですが、「ふゆみずたんぼ」では乾燥させず、あえて代かきをして田んぼに水を張って、冬から春にかけて水を貯めておきます。
これによって稲の切り株などが水中で分解され、それを餌として藻が発生。藻を餌としてイトミミズといった小動物、ドジョウ、カエル、サカナが田んぼに集まってきます。この良好な循環を意識的に発生させて、生きものが豊かな環境を作り出すのが「ふゆみずたんぼ」という農法です。この農法は雑草を抑える効果もあり、農薬や化学肥料を使用しない安全・安心な農法として注目されています。
環境に配慮した「ふゆみずたんぼ実験田」に小山市は2011年度の冬より取組んできました。5年目の作付の今年は市内全14箇所で実験が実施されています。今回はその1箇所の寒川地区の実験田で田植えを体験しました。参加者は100人を超え、大賑わいのイベントでした。
実際、田んぼに入ってみるとは本当に生きものが豊富で、メンバー一同大喜び。ドジョウの子どもやカエル、エビといった生きものが水田を泳ぎ回る姿には感動です。参加者の中にはカエルを大量に捕まえている子どももいて、お母さんにこれ飼ってもいい?という交渉をしている場面もありました。将来が有望ですね!
田植えは午前中で終了し、午後は2012年に小山市内にあるラムサール条約に登録された人工湿地「渡良瀬遊水地」を見に行きました。その広さは東京ディズニーランド約65個分という広大さで本州以南最大の湿地でもあります。
この「渡良瀬遊水地」は豪雨の際には川の水を一時的に溜め、川の氾濫を防止するという役目を持ちますが、平常時は湿地の環境が維持されているため、チュウヒといった絶滅危惧種180種以上を含む希少な生き物たちが生息しています。
またここは良質なヨシ原もあり、国内のヨシの重要な生産地ともなっているそうです。お盆頃から9月上旬にかけて、何万羽ともいうツバメたちの、ヨシ原へのねぐら入りも見られ、観察会が開催されるそうなので是非参加してみてください!
この広大な湿地環境である「渡良瀬遊水地」と、周りに広がる田んぼの連続した環境こそが、小山市の豊かな自然環境を表現しているのでしょうね。この二つの環境を活用して現在小山市では「コウノトリ・トキの野生復帰」を目指しています。ここ2年で、3度コウノトリの飛来も確認され、この夢は実現しつつあるそうです。
今後、「ふゆみずたんぼ」の活動が広がり、コウノトリが小山市の空を優雅に飛ぶ姿を想像すると楽しくなりますね!
今回田植えをした「ふゆみずたんぼ実験田」の稲は、これから秋に向け徐々に生長していきます。そして来年には「ラムサールふゆみずたんぼ米」として販売される予定です。因みに平成27年度の「ラムサールふゆみずたんぼ米」は完売したそう!なお、このお米で作られた、まろやかな辛口が特徴の日本酒、「この酒 小山のラムサールふゆみずたんぼ米」と言う商品も販売されています。ぜひ興味がありましたら、お試しください!
参考:小山市 安全・安心な環境にやさしい農業を目指して(https://www.city.oyama.tochigi.jp/gyosei/machizukuri/hozenkojotaisaku/huyumizujikkenndenn.html)