国際自然保護連合(IUCN)ウナギ専門家グループ議長のマシュー博士が来日され、勉強会を行いました

8月22日、ロンドン動物学会博士で、IUCNのウナギ専門家グループ議長のマシュー・ゴロック博士が日本自然保護協会のオフィスを訪れ、ウナギに関する講演をしてくださいました。

NGO意見交換参加者で記念撮影

NGO意見交換参加者で記念撮影

 

講演は、「ウナギとは?」という説明から始まり、ウナギの保全における現在の状況や、レッドリストの評価状況、さらにはケーススタディとして、ヨーロッパウナギの保全活動などについて説明していただきました。

世界には全部で16種のウナギが生息していますが、現時点でそのうちの13種がIUCNのレッドリストに掲載され、その中でも、4種は特に絶滅の恐れのある種(Threatened)に分類されており、保全が急がれています。

またある一種のウナギの利用に変化がおこると、その他の種にも大きなしわ寄せが起こります。実際、2010年にヨーロッパウナギの輸出が禁止された際、これまで輸出量の少なかったカナダやアメリカ、フィリピン産のウナギが激増しました。他にも、ニホンウナギのシラスウナギの採取量が減少した年は、他の種のウナギの輸入量が激増しています。そのため、ウナギの保全に当たっては、ある特定の種(ニホンウナギやヨーロッパウナギ)だけを保全するのではなく、全ての種のウナギを包括的に保全することが重要であると博士は説明していました。

さらに、種によってはデータや知見が不十分であるものも多いため、国レベル、さらにはローカルレベルで連携して調査を行い、保全のためにデータを蓄積することも必要だと学びました。

調査の際には、研究者だけでなく、市民参加のアプローチも非常に重要で、市民によって広域かつきめ細かな調査を行い、専門家がその結果の精度や質を上げるといった連携をとることが望ましいとわかりました。

ウナギは人の活動による影響を受けやすいところに生息しており、人の影響がどのようにウナギに影響を与えているのかを確かめる為にも調査は必要不可欠です。知見やデータが不足している部分については、予防原則に則って、科学的知見が明らかになる前から対策を取り、その後調査の結果に合わせて対応を変えていくことが大切であると感じました。

またウナギは、国際取引・生態調査・市場調査・生息地保全など多岐に渡る取組が必要なことから、NGOも、ウナギを多様な生態系の象徴種として協働するグループをつくってはどうかといった意見も出されました。

道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)、竹尾亮佑(IUCN-J)