外来種決議の紹介
今回結構注目された「外来種決議」。先週金曜日にはガイドラインがまとまったことについてCBD事務局からプレスリリースが流れていました。
外来種に関しては将来とるべき行動を取りまとめるとともに、ペットや観賞用生物(テラリウム、アクアリウム)、生き餌や食べ物として使われる生物の扱いに関する指針をまとめました。指針については、科学技術助言補助機関会合になかったものとして、上記の生物に関して、リスクアセスメントを行なわれていないものは、侵略性を持ちうるものとして取り扱うことという認識が加えられました。
<Future Actions>
将来とるべき行動の議決には、各国が外来種対策を策定したり、更新する際に配慮すべき政策事項が列挙されています。SNSも活用したコミュニケーション戦略や、自然再生事業における種の導入のリスク、中にはバイオコントロールも含めた制御手法の行動なども入っています。
各国に、求めたのは下記のようなものです。コミュニケーション戦略、他の条約等のリスクアセスメントの活用、GIASIP(Global Invasive Alien Species Information Partnershipの略。)への情報提供、侵入ルートの分類基準の活用、侵入ルートの特定と優先付け、生態系復元における種の導入リスクの最小化、ネット販売による導入への情報共有、失敗も含めたコントロールや撲滅事例の共有、保護地域や重要生物多様性地域(KBA)に対する一層の外来種対策、隣国との協力、関係機関の専門家の巻き込み、植物保全戦略目標10との連携が入っています。
バイオコントロールによる外来種対策については、成功事例、失敗事例を事務局に集めて、SBSTTAで検討しようという提案が加わっています。IUCNの専門家は、西アフリカで成功した事例があり、うまくいけば費用対効果が高いが、失敗したときのリスクの大きい危険な手法なんですよねと言っていました。
また、同決議には、沢山の事務局への要請が記載。侵入ルートの優先付けや管理に向けた地域取組み(International Islands Initiativeなど)の促進や、能力開発への促進。その他にもIPBESと協力して意思決定支援ツールの開発や、管理・撲滅手法や土地利用に及ぼす影響など費用対効果分析、愛知ターゲット9の進捗レポートの作成、外来種に関する既存の決議について使いやすいガイドを開発することなどが入っています。
SBSTTA18で議論になった、WTOや関連機関と種を扱う販売者と購買者(eコマース含む)に危険を知らせる手法について探求して、COP13の前のSBSTTAに報告することが入っています。
<ガイドライン>
ガイドラインについては、目的とガイドラインの性質、予防と責任あるものの措置、リスクアセスメントと管理、対策、情報共有、他の国際責務との一貫性という節からなります。
SBSTTAでまとまったガイドラインにさらに踏み込んで、アセスメントされていないペット等の生き物は、侵略性をもつ可能性があるとして扱われなければならないという指針が加わったりしています。
目的とガイドラインの性質(パラ1−パラ5)
パラ1は、ガイダンスの目的。パラ2は、観賞用、ペット、生き餌等でもたらされる外来種は、侵入ルートとして、エスケープ(閉鎖環境から逃げ出すこと)と考えられるという解説があります。パラ3は用語で、混雑種も含むとされています。パラ4は、ガイダンスの適用されるテーマ(輸出入)と、適用すべき集団(国や企業、消費者)を規定する内容です。輸出入には、国内移動も含むようになっています。
パラ5は、ガイダンスが強制ではなく、自主性(voluntary)を持つものという確認と、他の国際義務に影響は与えないこと、他方類似のガイダンスとの強調を明確化する内容。ルールだけでなく、国際機関の取組みとも整合をとる趣旨です。
予防と責任(パラ6−10)
パラ6 企業を筆頭にあらゆるセクターが、生物種の移動に際して外来種としての悪影響がでる可能性があることを注意喚起する内容。パラ7は、非侵略性の生物種を、一般に利用するよう奨励する内容。
パラ8 侵略(ivasion)の危険や寄生や病原菌の拡大につながるリスクを持つ生き餌の使用は、控えさせるまたは禁止するべきという内容。
パラ9は、外来種を扱う(買い手、売り手(買い手、売り手に“なりそうな”ものも含む)双方)関係者への取り扱いについての普及啓発
パラ10は外来種を扱う機関に責任と最大限の注意を呼びかける内容
リスク評価と管理(パラ11−17)
パラ11は、輸出入に際してのリスク評価の義務付け(といってもガイドラインそのものは自発的ガイド)と、リスク評価項目(a)-(d)の四項目を規定
評価するのは、(a)エスケープの可能性、(b)定着や拡大の可能性、(c)定着、拡大した場合の影響の大きさ(d)病原菌や寄生生物の拡大のリスクの4点を評価するという内容。パラ12は、エスケープの可能性は、種の特性とその種を閉じ込める方策と、合わせて評価すること。パラ13は、リスク評価の上、受容可能とされたら、使ってよい。ただし、評価の成果を変えうる新たな情報が入ったら、再評価が必要という内容
パラ14は、リスク評価の上、アクセプトできない場合、リスク管理が必要(その場合、下記(パラ16)の行動を少なくとも1つ以上採る)という内容
パラ15は、リスク評価上、アクセプトできず、リスク管理で、リスクを下げられない場合は、輸出移動の許可をしてはいけないという内容
パラ16(COPで加筆)アセスメントされていないペット等の生き物は、侵略性をもつ可能性があるとして扱われなければならないという内容。
パラ17は、WTO関連機関の基準や指針、提言のリスクアセスメントへの活用という内容
対策(measure)(パラ18−20)
パラ18はいくつもの対策を列挙する内容。
具体的対策には、(a)エスケープ防止、(b)エスケープ防止のための普及啓発、(c)野外への放出しては行けないこと、エスケープの場合すぐに再捕獲すること、素早く報告を行うこと (d)返還や再販売等の、野外に遺棄されないような体制を整えること、(e)定着や拡大に対処するため、根絶やコントロールの手法を確保しておくこと、(f)生き餌を適切に安全に廃棄する手法の確保、(g)違法取引を防ぐことなど、(h)不妊化させた生物をペット等として利用することを奨励すること(新規項目)
パラ19は観賞用生物(陸生、水生),ペットなどの販売品には、分類情報(学名、taxonomic rank(分類系統情報かな)、Taxonomic Serial Number(分類学ナンバー)、本来の生息地)を明確に示す
パラ20は、販売情報に、可能性のある危険性についてラベルを行なうこと
情報共有(パラ21−23)
パラ21は、リスク評価情報の広い公開性、パラ22国は輸入に際し安全と思われる種のリストを詳細な情報とともに維持し、共有する内容。パラ21は、国は、リスクのある種のリストをクリアリングハウスメカニズムで共有するという内容。
他の国際義務との一貫性(パラ24)
パラ24は、他の国際義務との一貫性を規定する内容です。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平