戦略計画の実施状況、資金動員戦略(5月7日)
WGRI初日は、愛知目標達成の評価および、その実施のための資金動員に関する(資金動員戦略)議論が行われました。
生物多様性条約戦略計画2011−2020、愛知ターゲット
戦略計画の実施にあたって、重要なツールとされているのは、生物多様性国家戦略・行動計画(National Biodiversity Strategy and Action Plan、NBSAPと略される)という条約6条で定められた仕組みです。
COP10の決議と愛知目標17では、生物多様性国家戦略を作り、又は見直し、効果的な参加と、愛知目標に基づいた国別目標の設定を求めています。条約事務局によると、まだ9カ国しか見直しをしておらず、各国の取組み加速を進める方法を議論しなければなりません。
さらにこの議論では、クリアリングハウスメカニズム(情報の集約と、拡散のため手法(ウェブサイト等))と国連生物多様性の10年の実施計画が含まれます。
40近い各国のステートメントを聞くと、ラテンアメリカの大きな国(ブラジルやメキシコ)や欧米の国は、かなり見直しが進んでいるようで、COP11までに間に合わせようという動きがある一方で、アフリカ、アジアは資金やキャパシティの不足からかまだ着手できていない様子でした。それから、生物多様性日本基金への感謝の言葉が発展途上国からたくさんありました。
生物多様性条約の年間基本予算(各国が供出)1200万ドル(このうち20%強を日本が支出)に対し、ボランタリーな供出金として4800万ドルを2015年までの貢献として供出しています。
先住民地域共同体からは、「エコシステムアプローチや伝統的知識のメインストリーミングがNBSAPでなされていないことに懸念。この弱点を克服する必要を強調したい。事務局長のコミュニティベースドの取組み強化の発言を歓迎。目標18の強調と、ジェンダーの取組みについても触れたい」などの意見が出ました。
IUCNからは「交渉(ネゴシエーション)から、実施のレベルに移らなければならない。世界的な愛知目標は、各国が意欲的な目標を立てなければ、絶対に解決し得ない。RIO+20においても、自然があらゆる社会の基礎にあることをもっと強調する必要がある。
「2020年まで生物多様性の損失を止めるための行動をとれているだろうか?」WGRIを通じて、愛知目標のミッションを問い続けたい」という力強い発言です。
NGOからは「愛知ターゲットについて、既に作られた計画を見ても、エコシステムアプローチや、ILC/ジェンダーなどの社会的な要素が少ない。数値目標なども不十分な状態であり、これらの課題について、今国家戦略の策定をしている国は十分注意してほしい。」という発言をしました。
資源動員戦略
COP10で宿題となった資源(資金)動員の目標設定に向けた議論です。指標などはCOP10で採択したのですが、妄評設定までには幾つものステップが必要です。第1に、何を基準年にするか(2006−2010という案)、進捗を測るモニタリング/報告システム、どれだけの資金が必要か(ニーズ評価)、どこから資金を得るか、という論点をまとめます(道)
基準年ですが、2006年から2010年の間の平均値というが事務局案です。資金動員戦略に関して各国から情報を出せるようなキャパシティビルディングも論点です。
この文脈の中で、innovative financing mechanism(革新的資金メカニズム)という言葉を止めて、生物多様性資金メカニズム(Biodiversity financing mechanism)と呼び方を替えようという提案も入っています。
欧州も、公的資金については多くの政治的課題に直面していますし、政府間の意見をまとめるのは大変そうです。
もう一つ関連議題として、地球環境ファシリティーの評価という議題があります。
報告 (財)日本自然保護協会 道家哲平