第6回世界公園会議 フィナーレに向けて

。 セッションの取りまとめの様子

わずか5日程度の間に、数百近いイベント・セッションが開かれた第6回世界公園会議も19日の終了に向けて、集約(できるのか?)に向けて少しずつ動き出しています。

この世界公園会議のプログラムを紹介していなかったので、今更ながら、ご紹介します。

世界公園会議 主要テーマ

今回の世界公園会議は、8つのストリーム(テーマ)と、3つの横断的テーマに分かれて、時に重複しつつも第5回世界公園会議からの進展や、現在のホットトピック、将来の行動計画をまとめていくという形になっています。

・ストリーム1 Reaching conservation goals 保全目標の到達

・ストリーム2 Responding to climate change 気候変動への対応

・ストリーム3 Improving health and livelihood 健康や暮らしの改善

・ストリーム4 Supporting Human life 人々の暮らしの支援

・ストリーム5 Reconciling Development Challenge 開発課題の再調整

・ストリーム6 Enhancing Diversity and Quality of governance  ガバナンスの多様性と質の強化

・ストリーム7 Respecting Indigenous and Traditional knowledge and culture 先住の、伝統的知識と文化の尊重

ストリーム8 Inspiring New Generation新しい世代を刺激する

横断的テーマは、

・Capacity development 能力開発

・Marine 海洋

・World heritage 世界遺産

・New social compact 新しい社会の約束

となっています。

ストリーム1では、53のイベントが実施されましたが、そのテーマを概観すると

・保護地域の面積と管理カテゴリー

・保護地域の生態学的代表性

・保護すべき場所を特定する新しいアプローチ

・保護地域の危機への対処と保護の質の強化

・保護地域の管理効果の評価、

・革新的な保護地域管理、

・連続性やランドスケープ、

・愛知ターゲットを超えて となります。

それぞれで議論されたことをPromise of Sydney(シドニーの約束)という共通の文書でまとめていくのですが、そのメッセージ案が話し合われ、まとめ役が最後の集約を明日の閉会に向けて行なっていきます(この会議では要素を出し合い、きれいな読みやすい文章には会議後行なう予定だそうです)

主要な発見事項

− 生物多様性の危機は緊急の課題として続いている。

− 面積目標について、保護地域の面積拡大はつづているが、しっかり守られていない地域ギャップの存在が確認された。公海、温帯草原の危機など、また、絶滅危惧種の生息地とのギャップも存在している。

− 連続性を確保する取組みはあるが、その成功の評価は世界的にもしっかり評価されていない、

− 既存の保護地域の質の低下に向けた取組み、

− 重要地域 IBA AZE は少しずつだが保護地域のカバー率を上げているが不十分

− 効果的な管理の評価を行なった地域が世界の保護地域の30%近くまで来た。ただし、評価のうち24%が効果的に管理されているという結果で、生物多様性上の成果すなわち管理の質の更なる向上が期待される

− 保護地域制度の情報共有の重要性

− 保護地域への深刻な危機要因-野生生物犯罪や、人と野生生物のコンフリクト、外来種(報告書の発表が行なわれた)への対処の重要性

解決策

新たなKBA(重要生物多様性地域 Key biodiversity Area)基準の合意、IUCN生態系/種レッドリストの発表、IUCN保護地域グリーンリスト、保護地域の更なる理解向上、大規模連続性の確保、生態学的復元の推進

愛知ターゲット11を達成しても、生物多様性の損失を止められない。さらに大きな目標を考えていかなければ行けない。そのための、新しいビジョンが必要で、cooperation, courage and commitment の3つのキーワードがそのステップチェンジに重要となる。

コメント

保護地域の劣化や破壊についての議論をカバーしきれていない。厳格な保護地域が保全のコアとなるべき。淡水システムについても目標が必要、愛知ターゲット全部に取り組むことの重要性や、地質地形の多様性、生態系サービス、文化的知識の強調をすべき、愛知目標11と愛知目標12との連携も書き込んではどうかという意見が出されました。

難しいところでは、人口増に関する議論。各国政府のむやみな人口増加政策を止めるべきではないかという意見もありました。

この成果を、一般の人々や政府などある特定の対象グループに伝えていくこと、IUCN-WCPA(世界保護地域委員会)というコミュニティーがこの目標達成をどのように支えるか(支えられるか)を明確にしようと言う意見が出されました。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平