生物多様性条約第15回科学技術助言機関会合三日目の報告(特に愛知ターゲットの指標)
三日目は、作業部会1「持続可能な利用(野生動物の食肉利用)」と作業部会2「極地域」に関する意見表明後、全体会議(プレナリー)にて、SBSTTAの運営方法の改善に関する意見表明を行ない、その後、初日に意見出しの終わった「世界分類学イニシアティブ」について討議用文書(Conference room paper)について検討しました。
18時半から外来種と愛知ターゲットの指標に関する個別会合がサイドイベントと同時に開催されました。
特に、愛知ターゲットの指標に関する議論の状況を報告します。
<指標に関する個別会合(コンタクトグループ)>
昨夜のポイントとしてSBSTTAが主語(すなわち、すぐに行動するもの)とCOPが主語(すなわち、COP11の決議(2012年9月)後に行動するもの)とに分けられると紹介しました。
個別会合の文案(word)には、「SBSTTAは、事務局に対して、“COP11の決議の前”に、指標に関するキャパシティービルディングに関わる活動と、指標の改善に関する活動の準備(initial work)を行なうよう求める」という案になっていましたが、事務局の負担が多いとして、カナダ・ニュージーランド・オーストラリアなどが(国名は道家のメモによる)削除を求めて、結果削除されることとなりました。元々この文案には、「資金の見込みがあって、可能であれば(やりましょう)」という注釈がついていたので、残しておいても良いのではと思ったのですが残念です。
主要な共通了解事項としては、
・指標はさらに精査が必要。(特に、他の国際条約で使っている指標も活用できるか検討する)
・現行の指標および指標の考え方に対してどう能力開発を進めるかという手法を合意。
①指標に関する技術的なガイダンスをまとめる、②利用可能な指標に地域差がないかどうかまとめる、③技術/情報が少ない途上国向けにシンプルで、あまり資金を必要としない指標セットを作る、④今行なわれているトレーニングワークショップ(日本政府が提供している生物多様性日本基金による成果)で指標について学べる機会を作る
・現行の指標をより良いものに変えていくための手法を合意。
①現行指標に関するより詳細な解説書(解析方法、開発状況、指標の背景にある解説等)、②集中的に検討すべき指標の開発、③全加盟国が採用できるシンプルな指標セットの開発、④林業、農業、漁業に関する機関との連携による指標の開発、⑤指標データベースの改善と維持、⑥指標の解説書
<解説>*本解説は、報告者によるものであり、組織を代表してのものではない。
IUCNのサイドイベントのアイデアも含めて、この成果をどう市民活動に活かすかということに触れたいと思います。ここからは、多分に個人的な解説です。
非常にかみ砕いていうと、今回「世界共通の質問方法(又は愛知ターゲットの説明方法)」が決まりました(と紹介したいと思います)
まず、国、地方自治体、企業、もちろんNGOが、愛知ターゲットの全体目標(ミッション)に向けて行動しているかどうかを確認するにはこう聞くことになりました。
「あなたは、生物多様性の損失を止めるために、2020年までに効果的で、緊急の行動をとろうとしていますか(又は従来の行動を変えていますか)?」
COP11では、あらゆる関係者が、この質問への「答え」を持ってこなければなりません。
愛知ターゲットを理解してもらうために、4つの質問(その答えとなる個別目標との関係)が共有されました。
1.生物多様性の変化は、今、どういう状況でしょうか?
戦略目標C、個別目標の11、12、13 に関係
2.なぜ、私たちは生物多様性を失うのでしょうか
戦略目標B 個別目標5、6、7、8、9、10 および
戦略目標A 個別目標1、2、3、4 に関係
3.生物多様性の損失は何を意味するのでしょうか、あるいは、守ることは社会に何をもたらすのでしょうか
戦略目標D 個別目標14、15、16 に関係
4.それに対して、私たちは何をしなければならないのでしょうか
戦略目標E 個別目標17、18、19、20 に関係
どうでしょう?分かりやすくなったでしょうか。にじゅうまるプロジェクトでも、この考え方をベースにした愛知ターゲットの解説書などを作れると良いなと思いました(一緒にやってみたいというかた募集します)。
報告 道家哲平 日本自然保護協会