第2回 四国生物多様性会議 in 高知 の報告です

12月15日(土)、第2回 四国生物多様性会議 高知に「にじゅうまるプロジェクト運営委員」という立場からパネリストとして参加して参りました。そこでどんなお話をしてきたか、しようと思って伝えきれなかった部分も含めて、以下に記してみようと思います。

***

2010年に、愛知県名古屋市でCOP10(コップテン:生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されました。

17号裏表紙コラムDSC_3071.JPG
(COP10ですべての決議が採択された瞬間)

生 物多様性は、さまざまな個性をもついのちが、多様につながりあっているということを示す言葉です。「自然」とか「環境」となんとなく呼んでいるものたちに はそれぞれ個性があって、不思議な魅力をたくさん隠しもっていて・・・だから私たちも、そういうことを受けとめる感受性を忘れずにいましょう、というよう なことと、私は理解しています。例えば「緑を大切にしよう!」というときに、ただやみくもに木を植えればいいってことではないよね。その木自体にも個性が あるし、その木を生活の一部とするいきものたちもたくさんいる。もちろん人間だって、そのいのちのつながりの環のなかにいるひとり。例えば、そんな気づき のまなざしをもって、世界と出会っていこうね、っていうこと。

生物多様性条約は、「地球にいきるいのちの条約」なんていう風に表現された りもします。Biodiversity is life. Biodiversity is our life(生物多様性はいのち・生物多様性は私たちの暮らし、と訳さていますがLifeが暮らし・いのちをあらわす言葉でもあり、この表現は示唆にとんだ ものと言えます)。いのちや暮らしというのは、静止画じゃないよね。そこには常に、背景に流れている、言語化されていないものがたりがある。そのものがた りを感じとる想像力をもって生きましょう、ということも、生物多様性の重要なメッセージではないかと思うのです。

biodiversityislife.jpg
(2010年国際生物多様性年のロゴとキャッチコピー)

さて。日本が議長国となったこのCOP10という会議で、生物多様性を守るための「愛知ターゲット」と いう目標が制定されました。それは「2050年までに人と自然が共生する社会を実現すること」というビジョンと「2020年までに守るべき具体的な20の 目標」を示した、とても大切な約束ごとです。その目標を達成するためには、そういう目標があるということをみんなが知っていて、「大切だね」という気持ち でつながり、「一緒にがんばろうね」っていう気持ちが育まれるような環境をととのえていくことが必要。ということで、考えだされたのが、IUCN(国際自然保護連合)日本委員会の運営する「にじゅうまるプロジェクト」です。

logo_yoko_subtitle_color_t.jpg
(にじゅうまるプロジェクトのロゴ)

2020年までに、20の目標を達成しよう。そして、愛知ターゲット達成にむけてとりくむみんなにで、おたがいに「にじゅうまる」をつくろう。そんな気持ちから、愛知ターゲット達成のためのこのプロジェクトには「にじゅうまるプロジェクト」という名前がつけられました。

生物多様性というのは、とてもひろがりと深みのある言葉です。だから、それを守るための活動も本当にいろいろなものがある。それは、20の目標にざっくりを目をとおすだけでも、なんとなく想像がつくと思います。

愛知ターゲットイラスト.tiff

例えば、目標1は、 とても簡単にいうと、誰もが生物多様性の価値や、それを守ったり大切につかうためにどうすればいいか、わかっていいるということ。お水も、空気も、たべも のも、衣服も・・・私たちが暮らしに必要としているすべては、生物多様性があるからこそ、授かり受けている恵みだよね。そういうことを、あらためて実感す るという時間を持つことが大切だし、特に政治や政策に携わるような人は、そのことを重々承知した上で、未来をどうしていきたいかの計画をたてる必要があり ます。

目標4は持続可能な消費と生産に関係すること。私たちのライフスタイルが、地球に過度な負担をかけて、いきものたちの暮らす環境をうしなうことにつながっているかもしれない・・・そんなことがないように、企業も消費者も、みんなで考え、行動していくことが大切です。

目標7は一次産業の営み。一次産業の衰退、なんていわれているけれど、森林やたんぼ、川や海といった場所に、豊かな生物多様性がたもたれている。そんな未来を描くことは、いきものたちを守ることばかりではなく、人を元気にすることにもつながっているのかもしれません。

・・・ というように。少し意識を変えてみることで、生物多様性を大切にすることの具体的なつながりに気づき、それを守るために、どんなことができるかな・・と考 えてみる最初のきっかけがつかめるような気がします。そして、生物多様性を守るための行動を結びつけていけば、一つひとつは小さなものであっても、大きな 力にすることがきっとできるはずです。

これは、私の実家(栃木県宇都宮市平石地区)ちかくにある河原で、地域の人たちが大切にまもっている希少種カワラノギクの花です。

DSC_7867sかわらのぎく.jpg

地域の人たちは、昔から鬼怒川の河原にあったこの植物をとても大切に想い、それを未来をいきるこどもたち(まごたち)にも残したいと、一生懸命保護して育てる活動に取り組んでいます。

カワラノギクは、土止め用として河川整備に使われた外来種シダレスズメガヤのすさまじい繁殖力で、その生息の場を奪われていってしまいました。シダレスズメガヤを使用する政策には、配慮にたりないところがあったのかなと思います。

DSC_7872sしだれすずめがや.jpg
(シダレスズメガヤ)

だから、地域の人たちにとって、シダレスズメガヤをとりのぞきながら、カワラノギクが育つ場所を少しずつ増やしていこうと、一生懸命がんばっています。

カワラノギクを守る活動をしているうちに、ミヤコグサがはえているのもみつかったそうです。

DSC_7866sみやこぐさ.jpg
(ミヤコグサ)

花 が咲いているのをみては「うれしいねえ」といって喜ぶ地域の人たち。べつにこの人たちは「愛知目標を守ろう」とか「生物多様性を守ろう」といって活動をは じめたわけではありません。「故郷の美しい風景を子どもや孫たちに残したい」。そんな気持ちからはじまる活動の方が、世界にはたくさんあるのではないかと 思います。「生物多様性の保護」なんて立派な名前がついていなくても。

だから、そういう「自然や未来を大切に想う気持ち」から行われている活動から「あ、これって、生物多様性を守ることにつながっているんだ」という要素をみつけて、それを生物多様性という言葉から読み解いてみることも、「にじゅうまる」でできることかな、と思います。

「生 物多様性条約で合意された目標からいいますとね・・・」と言葉づけを最も必要としているのは主に政府の側。条約で約束したことを、政策と実施の両方で実現 させていかなくてはならないのだから。そのための予算取りや方向性を決める上の「政策言語」として「生物多様性」は使われているのです。自分たちが大切に していることを政策の言葉で説明できるということは、市民が自分たちの想いを社会を変える力に結びつけていく上でも、きっと大切なことだと思います。だか ら、なんだか難しそうな言葉に思えるかもしれないけれど「生物多様性」という言葉は、知っておくととても役に立ちますし、自分を守る言葉にもなるのです。

DSC_7858sかわらのぎく.jpg
(地域の人たちの活動が認められ、カワラノギク保護活動地域であることを示す看板がたてられました)

ち なみに、このカワラノギクを守る活動は、愛知目標でいうと、目標8(外来種)、目標12(主の保全)にあたりますし、この活動を「生物多様性」という文脈 に結びつけて伝えることができたら目標1(普及啓発)にもつながっていきます。地域の人たちの想いで支えられているこの場所が、生物多様性について学ぶこ とのできるフィールドとしても機能してゆくのです。

こういう風に、生物多様性を守るための「愛知ターゲット」に関連している活動は、本人 たちの自覚のある無しに関わらず、世の中にはきっととてもたくさんあるのだと思います。だから「にじゅうまるプロジェクト」では、「私たち、生物多様性を 守ってます!」という自覚のある人たちを結びつけるだけではなく「え、この活動って生物多様性というものと関係があるのですか?」というタイプの人たちに は、活動と生物多様性のつながりについて、気づくヒントを提供する。そうすることで、想いと政策が結びつき、問題の解決やいのちを大切にする想いが大切に される社会をつくることにつながっていけたらなと、考えているのです。

にじゅうまるプロジェクトへの登録は、こちらのサイトから登録フォームにご記入・ご送付いただくことによって行うことができます。

登 録すると、プロジェクトのページ等で紹介されることはもちろん、「生物多様性」に関係するタイムリーな情報(例えば、政策や助成金のこと、言葉の解説や ニュースなど)を受け取ることができます(2013年1月から、登録団体にニュースレターをお送りさせていただく予定です)。

「にじゅうまるプロジェクト」の運営母体はIUCN(国際自然保護連合)日本委員会と いう、世界最大の自然保護団体の日本支部です。IUCNには91カ国、127の政府機関、903のNGO、44の協力団体が会員となり(2012 年11月現在)、181ヶ国からの約10,000人の科学者、専門家が参加しているとても大きな組織。IUCN日本委員会はそのネットワークとのつながり を持っているとてもパワフルな団体です。

そして、にじゅうまるプロジェクトの運営メンバーは、日本でCOP10が開催された時に積極的に生物多様性に取り組んできた人たち。つたえることの難しさを、常日頃感じながら奮闘している人たちです。

大切に守りたいものがあって、生物多様性という言葉と結びつくことに可能性を感じる方がたに、是非、「にじゅうまるプロジェクト」を通じてであい、一緒に素敵な未来をつくっていけたらと思っています。

最後に。

あんまり立派っぽいことをいうと、ついつい力がはいって、つかれちゃいますよね。

ということで、「にじゅうまるポーズ」。

nijumarupose.tiff
(にじゅうまるポーズ)

じゅうなんに・クリエイティブに・リラックスして・たのしくつながってみよう。そんなことを伝えたくて、このポーズを思いつきました。

手を、重ねて輪っかにすることがポイント。それから、「じゅうなんたいそう」ですから、身体を伸ばしてリラックスしてくださいね。

ということで、最後は第二回四国生物多様性会議に参加したみなさんと撮ったにじゅうまるポーズの集合写真です。

第2回四国生物多様性会議にじゅうまる.jpg
◎にじゅうまる~◎

本当に、こころから、また四国にいきたいなと思っています。機会をくれた四国生物多様性ネットの谷川さん、どうもありがとうございました◎

にじゅうまるプロジェクト運営メンバー 今井 麻希子