10月9日 第2作業部会 資金動員戦略(Item4.1)
二日目になりました。一般にCOP11最大の論点は、「資金拡大の目標値」と言われており、それは「資源動員戦略(item4.1)」というところで話し合われます。世界的に財政危機にも陥っている状態の中で、愛知目標の達成のための資金をどう確保するか、今よりも増やしていくかということで議論をしています。6月に開催されたRIO+20の成果文書においても、先進国から途上国への資金供出の公約が書かれた箇所が、先進国の拒否によって明文化されずに終わったこともあり、議論・合意形成の難航が予想されます。
ちょっと前提を紹介すると。
COP10で、①生物多様性保全に係る資金の「顕著な」拡大をめざすことと、②その資金を測る指標、が合意され、③指標に基づいてその金額をどこまで伸ばすかという「資金増の目標値」をCOP11で決めること、の3点を決めました。
WGRI4という準備会合では、①生物多様性に費やされる資金の基準値(基準年 2006年から2010年の平均値)と、②指標がどうなっているか(生物多様性のための資金額)という現状をしっかり把握するために、各国が提出する共通フォーマットの報告書のフォーム(案)とレポートのメカニズム、などについてCOP11決議案を作成し、③報告書のフォーム(案)を元に、COP11前までに資金供出状況をまとめることを決めました。
さらに前提の部分が続きます。
会議の重要資料として出ているものの一つが、直前に書いた、29カ国から提出されたレポートに基づく、「今生物多様性にどれだけの資金が支払われているのか」という条約事務局のとりまとめ。それと、UKとインド政府がリーダーシップをとって作り上げた「愛知目標の達成にどれだけの資金が必要か」というハイレベルパネル(議長は、TEEBでも有名なパバン・スプデクさん)の報告書です。ハイレベルパネルでは愛知目標達成には1300億ドルから4300億ドルが、2013−2020の間に必要という推計です(世界的には、補助金が年間1−2兆円近く投じられている)。
長い前提でしたが、このような動きをふまえて、焦点となるのは、
報告書のフォーム案の取り扱い
改善を必要としつつ2020年使う枠組みとするか、条約として使っていくには不十分として再考とするか?
ハイレベルパネルディスカッションの成果
「少なくとも1300億ドル必要」という数字をCOP共通認識の資源拡大の出発点とするか、あくまでも参考値とするか。こういう数字は気をつけないと一人歩きする数字になります。
目標値や指標の設定・改定
全体総額のみならず、国際フロー(ODAのような国からやGEFなどの機関から、主に途上国に支援される資金)を10%に増やすとか、75%の国が報告枠組みを使ってレポートをする(現在193カ国中29カ国しか報告していない)といった事務局とりまとめの目標の扱い。
どうやって「現状」と「目標値」のギャップを埋めるか?
先進国の供出のみならず、途上国内での生物多様性への予算の増加、民間団体(特に企業)との共同、国際税(為替取引税など)の模索、生態系支払い(Payment for ecosystem service。日本では森林環境税などの形で自治体レベルで導入されている)の促進など
などがあります。
(財)日本自然保護協会 道家哲平