条約の縄張りについて

生物多様性はすべての人間活動の基礎にあるものです。いろいろな人間活動に関係するものですので、生物多様性条約以外の国際条約やSDGsのような国連・国際的なイニシアティブにも影響を及ぼす議論が発生します。

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コンタクトグループの様子

生物多様性と気候変動、SDGsの深い関係

今日から始まったポスト2020年世界生物多様性枠組みのゴールに関する議論で、どこまでをこの枠組みの対象に含めるかが一つの争点になっています。自然は、気温上昇を2度以内に抑えるために必要とされるGHG排出削減の37%を低コストで提供できるため(森林減少の防止による排出削減などにより)、気候変動の緩和策として効果的です。また、SDGsの1/3は健全な自然が無ければ達成できないことを示す研究も間もなく発表される予定です。SDGsの達成についても、生物多様性条約が扱う内容が不可欠です。

 ポスト2020枠組みは、誰の目標?

現在、議論の基になっているポスト2020年枠組みのゼロドラフトでは、気候変動やSDGsを含む構成になっています。社会的に関心が高い気候変動と持続可能な開発について生物多様性が果たす役割を明らかにすることで、生物多様性の重要性の認識を広め、取り組みを推進しよう(「生物多様性の主流化」と呼ばれます)とする考えと、他が主導しているプロセスに口出しをすべきでないという考えが交錯しています。後者は、他のプロセスを邪魔してしまう可能性を避けるべきというのが理由ですが、他のプロセスがうまくいかなくなったときに共倒れする危険性を避けるということもあると思います。

 トレードオフの最小化と、シナジーの最大化が必須

もっともな懸念とも言えますが、次の問いを考えてみましょう。生物多様性の保全・利用、気候変動の緩和・適応、持続可能な開発のどれか一つが失敗したにもかかわらず、他の目標が、実現するなどということはあり得るでしょうか?この三者の相互関係は深く結びついているので、三者間のトレードオフ(例えば、気候変動対策は進むが、持続可能な開発目標からは遠ざかる)を最小化、シナジーを最大化する知恵を出していかないといけませんね。

名取洋司(CIジャパン/国際教養大学)