【メイン】アジア地域フォーラム最終日

ジャン会長閉会の辞

ジャン会長閉会の辞

アジア地域フォーラム最終日の報告です。

アジア地域フォーラム三日目(最終日)は世界自然保護会議で会員が提起するモーションについて、現在どのような案があるかというアイディア共有や、IUCNの組織改革、地域理事の立候補についての関心表明などが行われたほか、第5回世界自然保護会議後の成果についての発表が行われ、閉会を迎えました。

第6回世界自然保護会議のモーションについては、韓国から国境横断型の協力、ネパールからはBlue economyの推進、理事会からは生物多様性オフセットに関するIUCNの政策、インドからは気候変動への対策としてのヒマラヤ地域の保全と協力推進などについてアイディア共有がありました。モーションは、IUCN会員がIUCNの政策立案や政策提言活動のプロセスに加わる大事な仕組みで、2015年11月から2月12日までにドラフト提出、5-6月にインターネット上で討議、地域限定の決議案で諸条件を満たしたものは8月の事前投票、それ以外のものは世界自然保護会議の後半部分の会員総会(Membership Assembly)にて採決されます。

堀江理事による決意表明

堀江理事による決意表明

地域理事選挙に関しては、5名の枠組みのところに、インド・バングラデシュから2名、マレーシア、ブータン、パキスタン、日本、韓国の7名が関心表明を行いました。日本からは現職の堀江正彦理事による2期目に向けた決意表明がありました。

堀江理事のIUCNの活動PRの一環として、IUCN親善大使イルカさんによるIUCNの歌”We love you planet”の映像紹介もありました。IUCN(アイ・ユー・シー・エヌ)という発音が難しいことら、I You See Nature(私とあなたとで、自然を見つめ、守っていく)というフレーズを考案し、それを歌にしてもらったという紹介です。動画はこちら(Youtube)

世界自然保護会議の成果とそのフォローアップでは、ヤンベスーアジア地域委員長(韓国国内委員長)から、済州島宣言の紹介やそこで公約されていたworld leaders dialogueを7月に実施したこと、world environment hub構想として、環境に関する都市の取組を評価し認証する制度の検討がはじまったり、保護地域の統合管理システムの開発(ラムサール、世界遺産、MAB-BR、ジオパーク)という決議の履行として国際トレーニングセンターが設立されたこと、済州島ハノンマー・クレーターの生態学的復元事業のマスタープランがIUCNとともに作成されたことなど非常に多くの進展があったことが報告されました。

また、韓国がIUCNの歴史上初めて(?)アジアからのフレームワークパートナーシップに参加したことが報告され、アジアの自然保護における国際的なリーダーシップを果たそうという様子が伺えました。

閉会挨拶は、3名から行われました。

マケピン(馬克平)次期IUCNアジア地域委員会委員長 発表要旨
「アジア地域フォーラムの成功を共に祝いたい。IUCNはターニングポイントにある。ヤンベスー前委員長からも多くを学び、良い運営に努め、アジアの発展に尽くしたい。ターニングポイントということは、新しいIUCNに向けての出発点であること。IUCNのプログラムやマンデートや取組をアジア地域においてもっと多くの人・関係機関に知ってもらいその実施を推進していきたい。
そのためには、メンバー間のコミュニケーションの推進が必要だろう。
メンバーには、世界的な課題であるSDGsや愛知ターゲットなどに注目することを求めたい。IUCN世界自然保護会議にアジアからの積極的なインプットを提供して欲しい。また、会員や専門家の協力を得て、レッドリストやグリーンリストの取組を進めて欲しい。事務局や理事とも協同し、アジアにおけるIUCNのプレゼンスを確立しましょう。」

アバンカブラジIUCNアジア事務所所長 挨拶要旨
「IUCNの多様な意見を聞けて大変嬉しい。サイドイベントも全部見られなかったが大変有意義な議論ができたと聞いている。この3日は会員ものであり、会員の運営によるもので、会員が利益を得るものと捉えてほしい。
今回のフォーラムには、440名の参加があった。第1回から参加しているが、その規模や重要性はどんどん高まっており、最初のラオで行なったものは20人だけだった。どんどん会場が大きくなる。ダイナミックで変化する社会に対して、IUCNも変わらなければならない
IUCNの特徴づけるものとして、convening power(*)を唯一持つ組織だろう。そのためにもホスト国であるタイに感謝を申し上げたい。本日は、国家的祝日(シリキット女王陛下生誕記念日)でタイ政府高官からの参加者が難しかったが、心からの感謝を感じているだろう。アジア事務所スタッフ、中心であるTP・シン、ラシュ・クマールの労をねぎらいたい。」

*会議を開ける力。開催地域で運営に携わる人々の協力を得、相応しい人々(場合によっては意見の対立のある当事者同士ですら)を呼ぶことが出来、中立的科学的な立場から、衡平・透明な議論の場を展開し、必要な成果を議論の末に生み出すことが出来る力。

ジャン・シンシェンIUCN会長
「大変建設的な意見が数多くだされた。私自身最初の地域フォーラムであり、たくさんの意見がありすぎて少々精神的に消化不良気味です(といって笑いを誘う)。
大事な認識として、世界は、ティッピングポイント(がっけっぷち)からターニングポイント(転換点)にあるということ、その中で、相互の信頼、相互の尊厳を確認し、理事会・会員・スタッフ・専門委員の4つの柱の調和を感じられた三日間であった。
IUCNは複雑(で分かりにくい、complicated)ではなく、4つの機械がうまく機能し合う複合的(complex)組織であるといいたい。だからこそ、持続可能な開発のリーダーとなるべきだろう。そのような可能性を考えさせるメンバーセッションを牽引した、ヤンベース委員長に感謝を申し上げたい。国際会議にでると、「私はIUCNの関係者でした」という人たちにあってきました。かつて専門委員会であったり、会員団体であったり、事務局で働いていたり、そういう人のつながりこそがIUCNの財産であり、自然保護のよきリーダーとして認められていることだろう。
そして、よきリーダーは、よくものを聞く人である。そして、このアジア地域フォーラムは良いディベートと良いネットワーキングの貴重な機会となったと思う。アジアに活動や注目の重心がくるということは、それだけ多くの責任がアジアにやってくるということである。このターニングポイントを成功させるために、私も2倍の努力をするつもりであり、共に、2倍の努力をもってこの難局にあたりましょう」

(公財)日本自然保護協会/IUCN-J事務局長 道家哲平