生物多様性は守るものではなく尊重するもの:それぞれの立場とNGOのお仕事
ようやく(あっという間に)火曜日を迎え、SBIの議題も徐々に消化されつつあります。延々と続く各国の発言に、集中力を失わないように必死です。今日の午前中は、CBDアライアンスの活動の一環として、オンライン会議でSBSTTAの簡単な報告をしました。その話をするにあたり、前提として、そもそも、NGOは国際会議でどのような役割があるのかを考えてみたいと思います。
みなさんもおそらくご存知の通り、NGOとは、Non-Governmental Organizationの略称で、日本語だと非政府組織と訳されます。政府ではない組織とはいかに…という気分になりますが、よく「市民団体」という表現も使われます。
そんなこと言ったって、今回のSBIで条文交渉している政府の方々(政府代表団)も、普通の市民じゃない、と思う方もいるかもしれません。その通りではあるのですが、いざ交渉となると、政府代表団は政府を代表した発言をしなければなりません。一国の国益と政府の描く未来像を背負って、国としての立場から発言をしなければならないのです。そんな会場の中でのNGOの役割は、大きな力を持つ国のためだけではなく、「将来の世代(ユース)」や、国によってはあまり強い権利を持たない「女性」、自然保護の分野ではかつて軽んじられていた「先住民族や地域コミュニティ」など、多様な人が、多様な生物と一緒に住む地球のために、意欲的な条文が出来るように、様々な形で後押しをすることだと思います。
CBDアライアンスは、そのような活動をするNGOをゆるやかにつなげる世界規模のネットワークです。生物多様性条約への市民団体の参加を促進するためにCOP7(2006年、ブラジル・クリチバ)の時に設立されました。とはいえ、CBDアライアンスの会員がいる訳でもなく、参加費用が必要である訳でもないので、NGOによる「CBDへのNGOの参加促進のための共同プロジェクト」という表現のほうがしっくり来るかもしれません。しかし、NGOの参加の促進という意味では、とても重要な役割を果たしています。例えば、COPや今回のSBIの際に、NGOが利用できる部屋を確保したり、多くのNGOが意見表明できるニュースレター(ECO)の取りまとめを行ったりしています。
今回のウェブ会議もその一環として行われ、「会場に来られない人の存在を尊重しよう」という考えの下、SBSTTAで何があったのか報告をする場となっていました。カナダへの旅費は決して安いものではなく、政府代表団ですら1国から1人という場合もあります(議論が同時並行で進められたら、どちらかには参加することが出来ません)。NGOの立場としては、会場の中にいる人が、会場の外にいる人に情報を発信することはある種義務なのだろうと思います。
ウェブ会議では、どのようにしてSBSTTAの必要資料をダウンロードできるか、SBSTTAで論点となったことは何だったのかなどが報告されました。SBIの開催後にも報告会が行われることが決まっています。
今日一日を過ごし、昼のサイドイベントでは、先住民族と地域コミュニティによる生物多様性保全についての取り組みの紹介を聞く中で、「生物多様性は守るものではなく尊重するもの」という言葉が浮かびました。多様な生き物や生態系があって、その上に成り立っている人の生き方も沢山あって、そんな小さなコミュニティがたくさん集まって国になって、いろいろな人がいろいろな立場で物事を考えながら日々過ごしています。その多様さを尊重しながら生活をすることが、結局は生物多様性を保全する事なのだろう思います。
(参考:For Youth, Outreach and Union CDBアライアンスとは http://goo.gl/8kfRCV)
(公財)日本自然保護協会・IUCN日本委員会 佐藤真耶