科学技術的知見に関する会合が終了。次はその結果をどのように実施していくのかを話し合う会合が始まります。

SBSTTA20も無事に終わりを迎え、束の間の安息日を過ごしました。夜遅くまで続く会合の中、時には「議長、何かが燃えています!臭います!」という発言に会場がざわついた際はどうなることかと思いましたが、SBSTTA20の最後は、議長により“Go home and implimentation!(おうちに帰って実行しましょう!)”という言葉で締めくくられ、文書を作っただけでは何も変わらないことが強調されました。

日本人的な感覚で、外来種に餌を与えるなと書いてあるのかと思ったら、「病気を媒介するので触らないで・餌を与えないで」という旨の看板でした。アライグマは北米原産なのです。

会場近くにある看板。日本人的な感覚で、外来種に餌を与えないでと書いてあるのかと思ったら、「病気を媒介するので触らないで・餌を与えないで」という旨の看板でした。アライグマは北米原産でした…。

 

看板を見た直後に本物に出会いました。確かに餌付けしたくなる可愛さはわかります。

看板を見た直後に本物に出会いました。確かに餌付けしたくなる可愛さはわかります。

 

明日から一週間は、SBI1※1が行われる予定です。平たく言ってしまえば、SBSTTA※2が、科学技術的知見に関する内容を扱うのに対し、SBIは条約の「実施」に関する内容を扱います。固い言い方をすれば、SBSTTAは、科学技術的な見地から締約国会議(COP)及び他の補助機関に対して、条約の実施状況に関する助言を行うことを任務としているのに対し、SBIは、実施に関する事を、科学技術的な見地「以外」の観点からCOP及び補助機関に対して助言を行うことを任務としています。
SBIは、COPを開催するたびに開くかどうか議論していたWIGRI※3の代わりとして、COP12の際に新しく設立された常設機関です。SBI“1”の名前からもわかる通り、SBIの会合は今回はじめて実施されます。そのため、今回SBSTTA20の実施期間中にも、「この議論はSBSTTAではなくSBIで取り扱われるべきだ」と言われる場面も何度かあり(例:資源動員や主流化に関する議論)、今後のSBSTTA,SBI,IPBES間での役割分担にも注目が集まっています。

※1 Subsidiary Body on Implementation:条約実施補助機関
※2 Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice:科学技術助言補助機関
※3 Ad Hoc Open-ended Working Group on Review of Implementation of the Convention:特別な公開の作業部会

 

SBI1の議題一覧

Ⅰ.組織的事項
1.   開会

2.  アジェンダの採択
3. 運営事項

Ⅱ.実施の進捗レビュー
4. 条約と生物多様性戦略計画2011-2020の進捗レビュー
5. 愛知ターゲット16、名古屋議定書の進捗レビュー
6. カルタヘナ議定書の有効性に関するアセスメントとレビュー、議定書の戦略計画に対する中間評価

Ⅲ.実施のための戦略的アクション
7. セクター内外における生物多様性の主流化実施のための戦略的アクション

Ⅳ.実施のためのサポート強化
8. 能力養成(キャパシティビルディング)、科学技術協力と技術移転
9. 資源動員
10. 資金メカニズム
11. その他の条約・国際組織やイニシアチブとの協力:生物多様性関連条約間での相乗効果増加

Ⅴ.条約と議定書のオペレーション:構造とプロセスの効率性改善
12. SBIの運営方法と、実施のレビューを支える仕組み
13. 国別報告方法
14. 条約と議定書での統合の強化と会合の計画
15. 事務局からの機能的なレビューを含む、条約の管理

Ⅵ.最終的な内容
16. その他の内容
17. レポートの受理
18. 会合の終了

 (公財)日本自然保護協会・IUCN日本委員会 佐藤真耶