開会式 一つの地球の、一つの島に、一つのカヌーで向かう
IUCN世界自然保護会議2016の開会式は、オアフ島Neal S. Blaisdell Centerにて、会場を埋め尽くす人々の注目の中、始まりました。ハワイの民族音楽、舞踊が披露された後、数々のスピーカーが発表を行ないました。
IUCN世界自然保護会議の開催にあわせて、先日オバマ大統領は「パパハナウモクアケア海洋保護区」の拡大を宣言。そのサイズは151万平方キロメートルにも及ぶ世界最大面積のものとなります。
世界自然保護会議は、自然保護の取り組みをアピールし、それを互いに賞賛しあう場所となっています。開会式でも開会挨拶を飾るスピーカーからアピールが行なわれました。その度に会場から割れんばかりの拍手が起こり、エキサイティングなイベントの始まりを実感させる開会式でした。こういう雰囲気は生物多様性条約の会合には無い雰囲気です。
スピーカーのトップバッターであるDaivid Ige(ディビット・イゲ)州知事からは、今回ハワイには、190カ国から9000人が集い、世界自然保護会議の歴史上最も多い人数と参加国数であることが報告され、そして、ハワイの豊かさとその危機、自然資源の重要性、生態系と文化のつながりの重要性を強調していました。
記事のタイトルは、Daivid Ige(ディビット・イゲ)知事の言葉です。意味を補足すると、
「私たちは、一つしかないの地球の、一つしかない島(共通の目標、持続可能な開発の比喩)に、一つのカヌー(目的地に到達するために必要な船。その乗組員は、パドルを息を合わせて漕がなければならない)で向かうのだ」
となります。
Daivid Ige(ディビット・イゲ)知事は、ここから多くの公約を掲げました。
アロハチャレンジという取り組みのもと、2030年までに30%以上の流域を保護すること、2020年までに食料自給率を二倍にすること、バイオセキュリティセンターを設立し外来種問題に取り組むこと、2045年までに100%自然エネルギーで自給できるようにすること。グローバル島嶼パートナーシップに参加すること、WCCをホストし、IUCNと活動と戦略を共有すること。一つ一つを発表するたびに大きな拍手がわき上がりました。
Sally Jewell内務省次官は、冒頭、国立公園制度100周年や渡り鳥条約100周年等を紹介。そしてオバマ大統領による世界最大の海洋保護区への拡張宣言などを紹介し、島嶼レベルでの取り組みの共有の重要性や、国立公園など自然保護は新しい概念ではないが、保護地域という手法は自然保護上の重要なツールだけでなく、私達の文化や人間性や精神を守る場所としても重要であることを強調されました。今後さらに、野生生物犯罪への対応や、気候変動やパリ協定の強い実施にアメリカとして貢献していくことを約束し、最後に、ユースの支援、巻き込みの重要性を呼びかけました。
Tommy Remengesauパラオ大統領からは、グローバル島嶼パートナーシップへの参加を歓迎する発言があり、続いて、アメリカがパパハマ海洋保護区の拡大を宣言したことを賞賛しつつ、昨年、カリフォルニアサイズのサンクチュアリーを設定し、パラオの排他的経済水域のの80%をノーテイクゾーンに設定したことを紹介。海洋保護の思い出は負けないぞという意気込みからか、今年任期を終えるオバマ大統領の海洋のリーダーとしてのスタートを歓迎するといって会場を湧かせました。
パラオの経済は環境であり、環境は経済であるという強い意思のもと、海洋の世紀をつくることも約束。その他にも、違法で、報告の無い、規制のなされていない漁業(英語の頭文字をとってIUU)対策の強化も約束。パリ協定への取り組みから、再生可能エネルギー推進も約束されました。「スピードと決意を持って、岐路に立つ地球で良い方向に戻していかなければならない」海は2%しか守られていない、30%まで持っていかなければならいという決議をIUCN本部に提案しています。
Erik Solheim(ソルハイム)UNEP事務局長は、北極圏では石油開発について大企業が諦めたり、ブラジルのアマゾンの森林破壊が止まった事例を紹介し、「他の地域でもきっとできる。これらの素晴らしい取り組みを世界に広げる。私たちは一つ、というコンセプトを考えていかなければいけない」と強調されました。IUCNの60年以上の取り組みに感謝と敬意を表明されました。
Norbert Kurilla(ノベン・クゥエラ)EU代表からは、EUではナチユーラ2000という仕組みを使って貢献してきたこと。EUとしてIUCNは重要な存在として認識していることなどを話し、この世界自然保護会議の後に、CITES第17回締約国会議、気候変動条約第22回締約国会議、生物多様性条約第13回締約国会合が続くこの機会をうまく使って行こうと呼びかけました。
最後は、Zhang Xinsheng(ジャン・シンシェン)会長のスピーチです。冒頭、全ての会員を代表し、参加者に歓迎の意を表明し、参加者を代表して、ホスト国への感謝を述べました。また、2015年の持続可能な開発目標を行動に移す時であること。地球が提供してくれるものは限りがあり、その地球を見つめる必要があることを指摘しました。
そして、「ティッピングポイントをターニングポイントに。」「世界が必要とする持続可能な開発に向けた行動を今こそとる」などの力強いメッセージの数々を発信しました。
岐路に立つ地球の上で、二つの道が目の前にある。
今こそ正しい道を選ぶための行動の時。カヌーのように、協力とユニゾンが必要である
そして最後に高らかに開会を宣言されました。
ここから10日間に及ぶ長いイベントが行なわれます。
(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平