IUCNの会計報告

会員総会初日(9月6日)午後の総会(2nd Sitting)では、IUCNの会計報告がありました。

IUCNは2015年に収入が約130億円、支出が約120億円、これに為替損や保有資産減少(合わせて2億円程度)を加味すると、8億円程度の年間収支差額のプラスを出しています。IUCNは公益団体なので、どれだけ収入を得たかよりも、どれだけの公益事業を実施したかという観点が重要なので、支出の分析が重要になります。

 

これについては、4年連続、予想した支出計画に届かないが、予算と実績の差は年々埋まっている(=事業予算が少しずつ上昇)ことが報告されました。会員数は順調に増えて、会費収入上昇傾向にありますが、会員数はおもにNGO会員の拡大なので、会費収入には大きな影響を与えるほどではないようです。(以下は、単位スイスフラン、Mは100万の略。1Mスイスフラン=約1億円)

 

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減少傾向の続くフレームワークドナー

フレームワークドナー(年間1億円以上の使途の指定のない任意供出金)からの収入は2009年20Mから14Mなどに減少。移民問題や石油価格の減少などの市場の不安定さなどのマイナス要因が影響したのではないかと分析しています。この4年の間に、オランダ政府がコアドナーから離れ、あらたにアジアから初めて韓国が加わりましたが、支出金額の差から減少幅は大きく、スイスフランの貨幣価値も影響したようです。一方事業収入は上昇傾向(2012年ー78Mから100M近く)にあり、運営資金も上昇傾向で18M近い運転資金を保持していました。

 

外部監査意見も紹介されました。運転資金の上昇、事業ポートフォリオ(収入と支出の拡大=事業規模)の成長、コアパートナー離脱の影響を上手く緩和できたこと、目的に叶うITシステムの導入、世界金融市場の不安定さに上手く対応できたこと、ガバナンスリフォームの大きな進展があったことが評価されていました。
課題として、本部と地域支部の効率的効果的な会計の統一(事務局としてERPという財政の仕組みを導入中)、今後依存度が高まる助成金毎に報告フォームが異なるので、プロジェクトマネジメントもできる報告システムが必要などの課題を指摘されました。それにあわせ既に事務局もIUCNのツール・システムの開発、スタンダードITインフラ等の構築、IUCNにあったソフト購入システム(一括購入契約によるコスト減)の導入などのインフラ整備を実施しているようです。

 

さらに、フレームワークドナーの減少、比較的小さいドナーへの依存度、事業の効率性、事業展開の中で生まれた結果のフォローアップを会員やドナーに行なうこと。世界自然保護監査委員会による、会計監査報告の確認と承認の提案。PwCを外部監査に指名する提案も採用されました。

 

会員からは、資金の配分や、効率性、会員の活動との連携、GEやグリーン気候ファンドFなどとの連携。資金の扱いについて、国際基準にのっとっていれば、様々なドナーの支援を受けやすくなるのではないか。国内委員会や地域委員会を活用して、外部資金の効果的な活動をする必要があるのではないか。会員や専門委員会の活動も支援を得られるという認識が実用ではないか。会計報告2012−2015、および外部監査にPwCを指名することを採択しました。

 

(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平