ハワイの約束 / ハワイが生んだ決意

世界自然保護会議の成果文書の一つが、ハワイコミットメント(正式名称 Navigating Island Earth THE HAWAI’I COMMITMENT: アイランドアースの舵取りをする ハワイの約束。原文はこちら(英語。PDF link https://portals.iucn.org/congress/sites/congress/files/EN_Navigating%20Island%20Earth%20-%20Hawaii%20Commitments_FINAL.PDF))です。

国際自然保護連合

 

これは、4日間のフォーラム・4日間の総会の成果の集約として、まとめられました。フォーラムイベントのハイレベル会合からのインプットや、会員総会の戦略的コミュニケーションの成果などが骨子となっており、総会期間中2回にわたって参加者からのコメントを集約する機会がありました。

 

アイランドアースというキーワードは、世界自然保護会議2016あるいはホストであるハワイの思いがこめられた言葉です。地球を、宇宙に漂う孤島(人はその中でしか生きられない)とみなす世界観、土地も水も限られた場所なのだという世界観を訴えるとともに、世界中の数多くの島と同様、その生きもの・自然は「独自性と多様性に満ちている」のだということ、そして、人の影響に傷つき易い環境なのだという世界観を凝縮した言葉です。

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世界の現状や、ハワイが抱える課題などを述べた後に、世界自然保護会議によって特定された下記のような課題をまとめています。

 

・「自然保護の文化を育てる」という方向性に向けて
精神性、宗教、文化と保全をつなげること、ユースを巻き込み力を与えることの重要性とそのための解決策をまとめました。

 

・「岐路に立つ地球の課題に取り組む」という方向性に向けて
①地球の食料供給能力と自然の保全の維持と②世界の海の健全性の保護、③野生生物の違法取引を終了させる、④民間部門の巻き込み、⑤気候変動、の5つの課題の重要性と解決策をまとめました。

 

・帆を立てる(Setting Sail)という最終章にて
状況は危機的であり、私達の確固たる決意と力強い努力と、大きな投資をもった“変革が必要”であると宣言し、我々の地球に対する責任と連帯観を持って行動するということを、世界の重大な環境課題に自然保護実践者が解決策を提示するのだということを宣言する内容となっています。

 

全体を通して、自然を活かした解決策(Nature-Based Solution)、持続可能性、そして、集約的な行動(Collective Action:個々独立した行動ではなく、それぞれの行動が全体としてスケールの大きな変化を生み出すといった文脈で用いられています)というキーワードがちりばめられています。

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また、精神性・文化・宗教という観点もこれまで以上に強調されているように感じます。日本では、このようなキーワードは非科学的とか怪しい印象を持たれるかもしれないのですが、自然保護の取り組みの上で重要な要素としてとらえられたというのは、IUCNとしても大きな転換なのかもしれません。

(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平