COP13でにじゅうまるメンバーの活動紹介
UNDB-dayのハイレベルスピーチにも出てもらったCEE:Center for Environment Educationの方に依頼されて、学校における生物多様性教育について、日本の事例を発表してほしいと急遽依頼され、登壇するこになりましたので、にじゅうまるメンバーである川塾、富士通、奈良県御所実業高校の事例を発表しました。
イベント概要は下記の通りです。
Title : Biodiversity Education in Schools
Organizer : Centre for Environment Education (CEE)
Date : Friday 9 December 2016
Time : 15.00 and 18.00 hours (3.00 and 6.00 pm)
スピーカーには、UNESCOのESD(持続可能な開発のための教育)推進事業に携わるベルナルド・コンブス専門官や、メキシコ持続可能な開発のための教育地域拠点(RCE Mexico)のカロリーナ・ロペス先生、ECO BAHIAのカティア代表などが並び、事例発表をされました。
ベルナルド専門官からは、生物圏保存地域を中心に、カンボジアやインド、チリ、エチオピアなどの事例が紹介され、エチオピアでは、学校そのものを生物多様性豊かな場所にしようと活躍する学生の取り組みなどが披露されました。ベルナルド専門官は、フランス・パリからスカイプ中継での発表です。
カロリーナ先生からは、複数のステップを経ながらエコスクール(環境教育のカリキュラムを作る方法)などが紹介されました。そのステップとは、下記のようなものです。
1.エコスクール委員会(事業を進めるチーム)を作る。
2.教育に関する分析や関係者把握、良好な関係づくり。
3.地域の環境に関する分析。ゴミ、廃棄物、エネルギー、水、トランスポート、健康といったテーマから、地域の状況に合わせて教材の内容を作る。
4.行動計画を作る。
5.行動計画のモニタリングや進捗評価を実施する
6.カリキュラム間の連携づくり。
7.地域社会への情報提供や巻き込み。
8.エココードの開発。子供自身の手で、環境に関する規律やルールを作らせる。
ホテルが支援して作ったNGOECO BAHIA財団代表のカティアさんの発表では、ウミガメやサンゴ礁の保全、沿岸林の保護、リサイクルの推進などを推進しており、生物種だけでなく、生態系サービスの重要性を伝えることに力を入れている事例が伝えられました。
子供たちにウミガメについて学んでもらったあと、その生物がすむ生態系を教え、その生態系に子供の行動がどう影響するかを一緒に考えるといった、生物→生態系→自分達の暮らしのが基本アプローチだそうです。例えば、植物を植えたり、清掃活動を教えたり。変わったところでは、植物やウミガメに成り切る体験(ゲーム)を通じて、ウミガメへの関心や愛情を持ってもらうことで、その生物を守る思いが生まれることを期待して取り組んでいることが報告されました。
CBD事務局からは、教育マテリアルとしてYouth guide Biodiversity, Youth change,が紹介され、Green waveの取り組みなども紹介されました。
私は、にじゅうまるプロジェクトを紹介しつつ、環境教育に関するプログラムとして、川塾:第十堰水辺の教室、富士通:環境出前授業「地球1個分で暮らすために」プロジェクト、奈良県立御所実業高等学校環境緑地科:生物多様性ならプロジェクトなどを紹介しました。日本では教育の段階に合わせて、NGOや企業そして学校のプログラムとして生物多様性教育が展開されたり、学生が自らの学びを社会に活用する形で、生物多様性保全に寄与していることなど、カリキュラムを補完する形で教育機関・教師やNGO、企業が学習機会を展開している様子を紹介しました。
大きな課題として、経済成長の過程で、自然と触れ合う慣習や文化が失われた世代があり、今その世代が親や教師となっていること、教育への過度な期待や業務量が多く、先生方の多くがなかなか生物多様性について教える機会や能力養成をする機会がない問題を指摘しました。
質疑応答では、教育ツールやマテリアルの翻訳の課題、教師へのトレーニング、先住民の伝統的知識といった経験を通じて伝えられる学びをどう既存の教育体系に入れていくかといった議論が出ました。特に教育や普及啓発に関する課題を、正しく政策の場に提起し、対話をして影響を与えあっていく仕組みが今後必要ではないかといった話し合いが行われました。
(公財)日本自然保護協会経営企画部副部長
国際自然保護連合日本委員会副会長・事務局長
道家哲平