SBSTTA21に参加した成果

12月11日から14日の4日間、一部先住民族地域共同体関連の作業部会に重複していましたので、実質の交渉時間は3日間のSBSTTA21が終わりました。

IUCN-Jとして参加しどういう成果が得られたか、まとめると以下の4つになります。

1.日本のユース本会議で発言!!

IUCN-Jでは、ユースの参画を支援しています。今回は生物多様性わかものネットワークに属する2名のユースを同行し、国際会議のプロセスを体験しました。本会議、サイドイベント、グローバルユースグループとの連携、日本のユースの取り組み発信など多岐にわたって活躍しました。
今回は、グローバルユースの一員としてユースの意見を本会議で披露するシーンもありました。
グローバルユースグループ(Global Youth Biodiversity Network)とは、東アジアでの能力養成ワークショップを共催できないかという意見交換の行いました。
もし実現したら、COP10を開催した日本、COP12を開催した韓国と続いて、COP15を開催する中国が属する東アジアでのワークショップは、2020年に向けて非常に重要な会合となることでしょう。

25346299_1985565011722630_1747037746_o

サイドイベントで、日本のユースの活動事例を紹介する日本ユース

 

2.COP14の主要論点を把握

SBSTTA21で合意されたこと」でも紹介しましたが、今回は比較的少なめの7つの議題が検討されました。私が印象に残ったのは、人と自然の共生する社会を目指すという2050年ビジョンがほぼすべての国で目標としてふさわしいと発言されたことです。

主流化の議論については、各国から様々な意見が出されたものの、決定事項への反映という意味ではやや物足りない結果となりました。農林水産業・観光業における生物多様性の主流化は、その産業が生物多様性に悪影響をもたらす部分もある一方、生物多様性からもたらされる生態系サービスに深く依存することもあり、議論はわかりやすかった印象です。今回の主流化のテーマである「エネルギー、鉱工業、インフラ、製造業・加工業、健康セクター」は、生物多様性への悪影響・依存の程度もばらばらであるため、SBSTTA22ではかなりの時間を割いて意見をまとめることが予想されます。

SBSTTA22でも話題になる産業群は、日本では、例えば電機電子4団体日本建設業連合会など業界団体で生物多様性の取り組みを加速している事例、鉱工業では企業と生物多様性オフセットプログラム(Business and Biodiversity Offeset Programm:BBOP)の認定事業を住友商事が展開するなどの優良事例があり、もっと日本政府としてアピールすればよいのではと思うシーンも数々ありました。
決定には反映するものではありませんが、サイドイベントは今回、「製造業における主流化事例」「他の効果的な地域ベースの保全手法(OECM)に関するサイドイベント」「持続可能なインフラストラクチャー」「愛知ターゲット1の加速手法」「生物多様性リーダ自治体会議(GoLS)」「持続可能な都市のための自然システム」というイベントにでました。

愛知目標達成に向けた国際先進広域自治体連合のサイドイベントの様子

愛知目標達成に向けた国際先進広域自治体連合のサイドイベントの様子

3.2020年に向けた世界のNGOのアイディアを共有

 

SBSTTA21の前日に開かれましたWWF主催のワークショップへの参加経験も大きな成果です。2010年以降、国内外であるいは生物多様性条約という国際政策で活動してきた人々との率直な意見交換を通じて、ポスト愛知がどういうものか、どうあるべきか、どんな工夫を組み込むべきかということについて、見えてきました。

 

4.中国の環境NGOと交流

 

COP13にて正式にCOP15のホスト国がお隣中国の北京に決まりました。COP15の状況は、COP10の時と極めて類似しており、愛知ターゲットに代わる世界目標を採択することになります。ポスト愛知枠組みには、中国の様々な関係団体が参画することが重要だと思っています。

中国は大きい国で、環境NGOも活発に活動してると聞いていましたが、今回、市民団体の巻き込みにも関心が高いグリーンピースチャイナのLi Shouさんが初参加されていて、期間中何度も情報交換(おもに、COP10の時の情報提供)をしたり、ご一緒に条約事務局の担当官と面談し、IUCN日中韓会員会合の動きや、先月行われた韓国環境研究所(KEI)と南京環境研究所との連携のためのワークショップなどの動きを紹介しました。

日本のCBD市民ネットワークの取り組み(日本の市民団体の組織化)は、今なお生物多様性条約では関心が高いのは嬉しいことです。

グリンピース中国のリショウさん。気候変動枠組み条約会議にも精通されている

グリンピース中国のリショウさん。気候変動枠組み条約会議にも精通されている

 

最後に、2050年ビジョンについてです。「人と自然との共生する社会を目指す」は繰り返しになりますが、日本が提案し、世界共通となった言葉です。今回のSBSTTAでは、このビジョンは今なお共通のビジョンとして妥当という結論となりましたが、では、そのビジョンまでどうアプローチするかというのがこれからの議論の焦点となっていきます。

ビジョンを提案した日本は、ビジョンを実現のためのロードマップ(=愛知ターゲットの実現と、ポスト愛知枠組みと、ポスト北京枠組み?まで視野に入れて)を、世界に提案するべきなのではないかと、感じました。

 

(公財) 日本自然保護協会・IUCN日本委員会事務局 道家哲平