8月23日 第3回ポスト2020作業部会の開会

生物多様性条約第3回ポスト2020作業部会が、8月23日から、9月3日にかけて開催されます。国際自然保護連合日本委員会では、地球環境基金、経団連自然保護基金の支援を受けて、この国際交渉について報告をしていきたいと思います。

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<進行>

今回の会合は、愛知目標の後継となる目標、ある意味ではSDGs14,15の更新とも言える国際社会全体の目標となる「ポスト2020生物多様性世界枠組み」(Post 2020 Global Biodiversity Framework。以降、GBFと略します)の最終準備交渉となります。会合は、シナリオノートによると下記の通りの進行となります。

・L文書の採択はおそらくなし。採択を行う対面会合は2021年1月に計画中
・プレナリーで、DSI(23日)、ポスト2020(24日)で意見を諮ったのち、コンタクトグループを設定。
・プレナリーは国連公用語(6ヶ国語)で同時通訳が提供。Youtube中継や、録画を通じ後から見られるが、コンタクトグループは、英語のみで実施し、登録者のみが閲覧。
・コンタクトグループについては同時開催はなし。1日、2種類。同じコンタクトを同日に2回開催することもなし。
・ポスト2020枠組みは、4つのコンタクトグループが作られる。第1週目は、枠組みそのものを検討。決議パートの意見出しは、8月31日に、コンタクトグループの経過報告と共にプレナリーで実施。
・CG1:ゴール・マイルストーン・全体構造・セクションA-E
・CG2:ターゲット1-8
・CG3:ターゲット9-13
・CG4:ターゲット14-21とセクションH-K
・DSIは、コンタクトグループ(CG5)を3回実施し、一端の結論まで至る(25.26.27日)
・8月30日にコロンビア政府主催によるハイレベルプレCOPの企画
・サイドイベントはなし

<開会式・プレナリー>

開会は、23日(月)の日本時間8時間から始まりました。進行は、ポスト2020枠組み作業部会共同議長のオグワル氏とバーゼル氏が行います。*早速、ITシステムのトラブルで中断などが45分あり、45分延長されることになりました。

開会挨拶として、ホスト国コロンビはの環境副大臣、COP15ホスト国の中国環境大臣、エリザベス・ムレマ事務局長の挨拶が行われました。その後、報告者(Rappoteur)として、クウェートのリーナ・ハルワニさんが指名された後、議題の確認がされました。

<議題3 第2回会合からの進捗報告>

関連文書には、第2回OEWG以降になされた公式、非公式の会議や、GBFへのインプットについてまとめられました。特に、この議題へのコメントはでませんでした。

<議題4 DSI>

DSI:Degital Sequenced Informationは、電子化された遺伝子情報について、生物多様性条約が定める遺伝資源の取得と利益配分の対象とするべきという主張から端を発する議論で、本格的には、COP13以降、議論が深まりました。COP14にて、専門家会合(AHTEG)が開かれ、また、非公式の勉強会等も開催されてきました。

プレナリーでは、AHTEGがまとめた用語、主要な論点、生じうる検討課題などについて報告がされました。また、これまでの検討の経緯などもまとめて報告されました。

ポイントをまとめると、5つの選択肢(1つの選択肢の中に複数のサブオプションもある)の整理と、選択肢を検討するための考え方(基準)が、ここまでにまとめられました。

その後、地域代表(アフリカと欧州)の発言、各国の発言が行われました。

この課題は、想像しやすい課題の一つは環境DNA調査です。環境DNA調査とは、河川や湖の水をすくって、その中の全部または一部となった目に見えぬ生き物何がしかの断片からDNA配列と、生物のDNAデータベースを照合して、一致する部分から、目視の調査がなくとも、生物の存在を予想する、という手法です。生物調査を格段に容易にする手法と言えます。

もう一つ想像しやすいのは、新型コロナのような、未知のウイルスが広がった場合を想像したとき、各国のウイルスのDNA情報を調べ、ウイルスの起源や類似性などを世界中の研究やDBと照合などの分析をすることで、由来や、ワクチンや治療薬の基礎データとすることができます。

上記のようなケースなどを考えたときに生物多様性条約がめざす、遺伝子資源へのアクセス推進や遺伝子資源の利用から得られる利益の公正衡平な配分(基本は、当事国間の協定)の対象となるのか、すべきかどうかといった課題です。

各国の意見や論点は多岐にわたりました。

・そもそも電子化された遺伝子配列情報は、生物多様性条約の規制やルールの対象外とする意見(生物多様性条約の対象だとする真逆の立場もあります)。

・DSIのオープンアクセスとオープンサイエンス(オープンに共有された情報を基に構築された科学的知見)、法的明確さを損なうことない制度の構築が優先課題とする意見。

・DSIについては、非資金的利益(論文共著など)配分のみにすれば検討課題が少なくできるという意見(資金的利益も利益配分の対象とする真逆の立場もあります)。

・途上国の遺伝子研究能力向上のための支援が大事とする意見。

・DSIの検討や対応が生み出す利益とコストを考え、利益が上回るような議論が大事(手続きも含めてコストがかかったり、新型コロナのような緊急なときに研究に過剰な手続きを貸すような制度は不利益が多い。制度を構築するとその制度が機能しているかのフォローやチェックポイントの設定等、遵守のコストがかかる)。

・DSIという用語の多義性から、別の用語で議論したほうが良いといった意見。

・その他に、意欲的なGBFの設定と実施には、DSIのアクセスと利益配分が重要だとする意見と、パッケージにするべきではないという意見。

・DSIを共有するデータベースを構築し、そのアクセスに会費のようなものを支払うことにし、その収益をDSIの情報拡大とデータベース拡大にあてる、多国間のメカニズムに高い可能性を期待する意見もありました。

・また、選択肢から決定するための基本原則(データのオープンアクセス、法的明確さ、国際協調主義、関係者の参加)を確認する事(プロセスの合意)がまずは大事とする意見。

・合成生物学の議論とDSIの連動をから、遺伝子組み換え生物規制の議論とも連動するという意見もありました。

延長した11時45分(日本時間)までに、締約国の発言を終え、非加盟国やオブザーバーの発言から24日の会合を始めることとなりました。

道家哲平(IUCN-J事務局長/日本自然保護協会)