ジュネーブ会合初日の進行
3月14日18時(日本時間)、生物多様性条約ジュネーブ会合が始まりました。初日午前は、第24回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA24)、第3回条約の実施に関する補助機関会合(SBI3)、第3回ポスト2020作業部会の合同開会式が開かれました。その後SBSTTA24のプレナリーが、午後は、第3回OEWGとSBI3のプレナリーが開催され、それぞれの議題や議事進行などの確認が行われました。なんと、SBI議長のシャルロッタさんも陽性反応がでて(中継を見る限り、お元気そうで安心)5日の隔離期間をジュネーブで迎えることとなりました。
全体会議(Plenary)の議長は、COP15ファーストフェーズでエジプトからバトンを引き継いだ中国政府代表者が、執り行います。開会は、関係各所の挨拶と会議に期待する成果を声明として行う場面ですが、ロシアによるウクライナ侵攻のさなかの国際会議ということもあり、平和と国際協調主義の重要性を誰もが口にしていました。
ホスト国のスイス政府代表は、コロナ感染予防対策にホスト国として参加者の心配がないように手配したいとしつつ、議長と参加者双方の努力が、実りある成果を出すために重要だと強調しました。
エリザベス・ムレマ事務局長は、気候変動枠組み条約COP26(イギリスグラスゴーで開催。史上最も気候変動課題解決のための「生物多様性の重要性」が注目されたとされる)や、2月28日より開かれた第5回国連環境総会(UNEA)の成功、そして、環境に関する初めての国連会議である1972年ストックホルム会議から50年の記念すべき年であることを引き合いに出しながら、国際協調主義の重要性が今最も注目されている事を強調。COP15の成果につながる今回の会議の実りある成果の到達に向けて事務局一同全力を挙げることを誓いました。
各地域代表からの発言としては、意欲的な目標・多様な主体の参画や民間資金の誘導を主張するEUやJUSCANZと、意欲的な目標のためにも実施手段(資源動員、DSI含む遺伝資源から得られる利益の公正な配分の推進、能力養成、技術移転)に重点をおくアフリカやラテンアメリカグループ、遺伝子組み換え生物のリスク管理・合成生物学・生物多様性と健康に優先度を置くアジアグループなど、重心の違いなどは少し見えてきました。
メジャーグループの発言機会も確保されていました。先住民地域共同体・女性・ユース・自治体・企業・NGOなどが発言していました。企業グループなどはかなり具体的に、生物多様性に悪影響を及ぼす補助金の目標金額(6000憶ドル)を、1.8兆ドルに変えるべきなど強いメッセージを出していました。
声明では、やはり、現在起きているロシアのウクライナ侵攻について避けることはできません。明確に国連憲章その他数多くの国際条約違反として糾弾する地域(EU/JUSCANZなど)、国際協調・平和あらゆる戦争や紛争への反対、戦争・紛争被害者への連帯の意を示すなどもう少し一般的なトーンで語る地域もあります。地域からの声明の後には、ウクライナ・ロシア双方が発言を求めました。ウクライナは、ラムサール条約登録湿地、自然保護区、ユネスコエコパーク登録地への具体的な被害状況(推計)を紹介しつつ、その自然の回復にはかなりの時間がかかることを伝え、ロシアを非難し、その非難声明を会議記録に残すことを求めました。ロシアは、国連憲章で認められる自衛措置の一環であり、この議論を生物多様性条約会議で議論することは条約の範囲外であると主張し、ウクライナの声明も報告に乗せるべきでないと主張しました。同時に、ポスト2020枠組みへの貢献については、寄与していくことも宣言されたので、交渉プロセスそのものが止まるという事にはならなさそうです。
本会議・SBSTTA24・OEWG3・SBI3では、コロナ感染対策含め、様々な会議運営に関係する議題も確認されました。
ポイントをご紹介します。
SBSTTA24は、L文書(Limited Circulationという合意がなされ、文法・法律上のチェックを待つもの)のものは、各国の合意された文案のみ反映する形で文書を扱うこと、コンタクトグループを、ポスト2020枠組み、土壌と生物多様性、海洋、農業、生物多様性と健康のテーマで設置することを確認しました。
OEWG3では、既に、ポスト2020枠組みの前文(CG1)・目標1-8(CG2)、目標9-13(CG3)、目標14-21(CG4)と、電子化された遺伝資源情報の扱い(DSI)についてのコンタクトグループは引き続き設置。各CGを一度開催して、Non-Paperを作成、その後交渉を行うことを確認しました。文章は、可能な限り合意を目指し、内容も出来る限り短い文章で表現したいということが話されました。
SBI3では、ジェンダー行動計画とコミュニケーション戦略という新規の検討文書と、昨年5月で精査した文書を中心にCGやプレナリーなどを開催しながら出来る限りの合意を目指すことが確認されました。
SBI3では全体進行の後、資源動員・資金メカニズムに関する新しい文書への地域や国からの声明を確認しました。資源動員は、交渉の中心議題の一つですので多くの国が発言しました。
全体進行は、常にhttps://www.cbd.int/conferences/#cctvが更新される予定です。
国際自然保護連合日本委員会 道家哲平