5th WCC 参加報告9月11日

フォーラム最終日は、前回の2008年WCCからIUCNが取り組みを進めている「生態系のレッドリスト」の話を追いかけました。世界の絶滅のおそれのある動物をリストアップしたIUCNの「種のレッドリスト」に対して、様々な生物種と環境とが関わりあう生態系をリストアップするものです。

生態系の状態を知ることで、全体の生物多様性の様子がより早く分かり、水・食料・燃料などの損失がより明らかになります。また、1種ずつよりも生態系の方が短時間で評価できるので、2つのレッドリストと合わせることで生物多様性の状態をより強力に評価して、保全に役立てようという取組です。専門委員会では、保全の優先順位を決定するにはは、「絶滅リスク、分布要因、生物学的要因、社会的価値、物流による要因、経済的要因、その他の要因を考え、重みづけをした総合的な判断」が必要と考え、2つのレッドリストは絶滅リスクを判断するためのツールとして考えています。

今回、草案第2版として発表された生態系の評価基準は基本的に6段階。崩壊(Colapse; CO)、崩壊危惧IA類(CR)、崩壊危惧IB類(EN)、崩壊危惧Ⅱ類(VU)、準崩壊危惧(NT)、軽度懸念(LC)。加えて、情報不足(DD) と未評価(NE) があります。絶滅 (EX)と野生絶滅(EW)を区別している種より1段階少ないこと、未評価のカテゴリーがあること以外は同じ分類が使われています。

評価は、<A>地理的分布の縮小、<B>地理的分布が限定的、その生態系に特徴的な<C>生物的・<D>非生物的環境の減退(たとえば降水量、蒸発量、地下水、えさや天敵との関係)の4つについては、[1]過去50年間、[2]今後50年間、[3]1750年以降の変化をそれぞれ評価し、<E>様々な要因を統合した定量的リスク分析と合わせて、13個の評価の中で最も厳しいものが全体の評価となります。

来年にはIUCN公式のカテゴリーと基準が発表され、事務局及び専門調査団が創立され、2015年には標準化された規約とオンラインツールが利用可能となる予定です。また、専門家委員会では、2025年までに陸域、淡水域、海域、地下のすべての生態系の状態を評価することを目標としています。

「生態系レッドリスト」を、「種のレッドリスト」と合わせてどう保全計画に役立てるか、地域の生態系レッドリストづくりも含めて、市民、政府・自治体、ビジネスなど、みんなでアイデアを出して、盛り上げていきたい取組です。

IUCN-J にじゅうまるプロジェクトスタッフ 種田あずさ