COP12主要決議の紹介ー愛知ターゲットの中間評価
COP12の主要成果であるピョンチャンロードマップは、愛知ターゲット中間評価と実施・支援メカニズム、資源動員、持続可能な開発と生物多様性、多国間条約連携からなるとされています。
その中でも、ある意味最も重要な決議といえる、「愛知ターゲットの中間評価」は、GBO4(4th edition of Global Biodiversity Outlook)の成果と活用、戦略計画の実施加速、戦略計画の実施を支える各種ツールからなります。
GBO4の成果と活用
GBO4を歓迎、ほとんどの愛知ターゲットである一定の成果が得られたものの多くの場合、緊急の効果的な行動がない限り、目標達成には不十分であるという結論を認識、GBO4の結論を確認、また愛知ターゲット10が2015年までに達成しないことについて強い懸念を共有しました。その上で、事務局に対しては、GBO4の成果を活かした第6次国別報告書の指針の開発、GBO4を国連総会を含む関係機関に送付すること、GBO4の成果のコミュニケーション戦略の実施、を要請。締約国や関係機関にGBO4の成果を、各国言語への翻訳や広報ツールの制作を通じて普及することを奨励しました。
実施強化
GBO4の成果を踏まえ、各国に愛知ターゲットの完全な達成に必要な包括的で、緊急の行動をとるように求めました。また、GBO4で提案された実施を加速するための鍵となる行動を柔軟に活用することも奨励しています。COP12に先駆けて開催された科学技術助言補助機関会合にて特定された、実施のための科学技術上の需要に対応する行動を求めるとともに、国・先住民地域共同体及び他の関係者に対してGEO-BONと協働して、生物多様性の観測とモニタリングに取り組むことなどを求めています。
SBSTTAに対しては、COP13に向けて、GBO4の成果を検証するとともに、GBO5をIPBESのグローバルアセスメントとの重複を避ける形で、どのように作るかを評価するよう求めました。事務局に対しては、指標に関する専門家会議(AHTEG)の開催、戦略計画達成のための制作枠組みの効果を評価するためのツールの活用に関する各国の経験を検討して、COP13の前のSBSTTAに報告することなどをまとめました。
愛知ターゲット達成のための支援メカニズムの検討と、能力開発、技術的科学的協力およびその他の支援事業
各国の生物多様性国家戦略については、愛知ターゲットに基づいて国家戦略を改定した国を賞賛するとともに、まだの国に対しては更新、または、改定を2015年10月までに求め、国家戦略の実施の継続と加速を求めました。
実施のサポートに関していうと、能力開発に関する取組みの共有とともに、必要とする能力についての需要を明らかにして共有すること、将来の改定にあたって効果的なモニタリングのメカニズムを強化すること、パートナーに対して国家戦略の実施の支援を奨励しました。
事務局に対しては、実施強化に関する活動の継続と推進、能力開発の事業の支援と促進を要請するとともに、能力開発の事業の効果の評価等を通じて、脳玉開発支援のための短期行動計画の開発を行ない、COP13の前に開かれる会合に提出すること、能力開発に関する情報の共有の確保、技術のニーズと機会をマッチングの促進を要請しました。
技術的科学的協力と技術移転
技術的、科学的協力のコミュニケーションの促進、情報のアクセスの改善、技術的科学的協力に向けたニーズと技術提供機関との連携強化、技術的科学的協力に関するパイロット事業の推進、技術的科学的協力に関する優良事例等の情報共有、技術的科学的支援の提供、協働パートナーシップの推進などを締約国等に求めました。この件に関して、韓国から提案されたバイオブリッジ事業への歓迎の意も表されました。
クリアリングハウスメカニズム
各国に対してクリアリングハウスメカニズムへの情報提供を求めるとともに、各国のメカニズムの強化をもとめ、さらに、優良事例に対して表彰する仕組みを事務局に要請しました。また、全体のクリアリングハウスメカニズムの改善に関する提案をまとめました。
コミュケーション、教育、普及啓発と国連生物多様性の10年
GBO4の成果も踏まえ、締約国に対し、(a)愛知目標1に関する指標の設定、(b)市民の普及度に関する調査の実施、(c)国内委員会などのメカニズムを通じて、すべての関係者と協同し、国連生物多様性の10年に関するコミュニケーション戦略の開発と活用の促進、(d)国際生物多様性の日(5月22日)や国際マザーアースの日(4月22日)といった関係するイベントを活用すること、(e)地方自治体との協働、(f)態度変容(behaviroural change)に関する研究と指針の開発を推進することを求めました。事務局に対し普及啓発の推進を要請し、特に、(a)世界レベルのコミュニケーション戦略の開発の推進、(b)CEPAツールキットの開発、改良、更新、(c)特定のターゲットグループ向けのメッセージアプローチを開発し活用するためのワークショップの実施、(d)ESDに生物多様性の保全や持続可能な利用を組み込むためにユネスコと協力することを求め、関係するグループの完全で効果的な参加を推進すること、この観点から愛知ターゲット1に関して作られたパートナーシップ(IUCN-CECや世界動物園水族館協会など)との活動継続を事務局に求めました。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平