COP14を振り返って
11月17日から始まったCOP14が終了しました。登録ベースで3800名以上の参加がありました。
SBSTTAやSBIで十分に交渉してない議題(例えば、生態学上または生物多様性上重要地域EBSA)や、意見の乖離が激しい議題(遺伝資源の電子情報DSI)、決定案のあちこちに散らばる生物多様性と生物多様性条約と持続可能な開発目標の未来を決める「ポスト2020の立案プロセス」が影響して、予定の時間よりも遅くの閉会となりました。特に、DSIをめぐる交渉は、COP10の時の、愛知目標・名古屋議定書・資源動員戦略のパッケージディール(全部をセットで合意)を彷彿とさせるものでした。DSIは専門家の見立てだと、COP15でも再び激しい議論となる予定です。
IUCNの関係者にもたくさんの情報と何より刺激を受けました。
数多くの成果
COP14については、将来に向けた様々な成果を得られました。
1. UNDB-DAYの成功-COP12から始まったUNDB-DAYは、機会を追うごとに、様々な国を巻き込み、日本のイベントから、世界のイベントに進化しています。そして、他の団体/期間もUNDB-DAYに刺激を受けて、1日がけのイベントを実施するようになりました。非常に競争力が高いCOP15@北京でも、1日がけのイベントを確保できる可能性が高まったように感じます。
UNDB-DAYを一つの成果発表の機会として、COP15に向けて準備できるのは良いことと思います。
UNDB-DAYは、公式報告(IISD-ENB)に掲載されました
2. OECM・民間保護地域・主流化―OECM(暮らしと自然の共生地域)や、民間保護区、企業を対象とした主流化の議論など、民間の力・影響力がCOPの議論に反映されてきたと実感します。生物多様性コミットメントなどは、にじゅうまるプロジェクトで実施してきたことに近いことが、国際社会で動き始めたようにも感じます。同時に、にじゅうまるプロジェクトで可能性があったのに、リソースなどの関係でできてこなかったこともたくさん感じる会合でした。
ポスト2020をチャンスと思う。
ポスト2020のプロセスは、生物多様性コミットメントというアイディアと、素晴らしい諸原則と、プロセスそのものを普及するハイレベルパネルの設置と、専門的に議論する作業部会の設置、国連総会でのハイレベル会合の提案など、充実したプロセスが作られました。2020年に向けて、愛知ターゲットのとりまとめと、次期枠組みの検討と、相当大きな仕事が生物多様性条約関係者に求められます。IUCNもこの動きに呼応する形で、IUCN世界自然保護会議2020(フランス)を準備することになるでしょう。
本当にこんな凄いプロセスに日本が(私自身も)ついていけるのか、オリンピックで浮かれて国際社会に取り残されてしまうのではないかという疑問も覚えつつ、交渉の様子を聞いていました。
一方で、最高の機会とも思います。
ポスト2020年が実質始まる2021年は、環境庁から数えてですが、環境省設立半世紀・50周年を迎えます(IUCN-Jの事務局を務めている日本自然保護協会は70周年です)。これは、経済発展とともに起こった環境問題は、経済の成熟化、人口減少社会というターニングポイントとも思えます。生物多様性保全の在り方、アプローチなどについても、大局的な視点のなかで次の時代の役割と手法とを考える時期のように思います。
2010年に、生物多様性条約COP10をホストし、国連生物多様性の10年を実現し、愛知ターゲットをまとめ上げ、日本基金という大規模な資金提供で途上国の能力養成を行ってきました。そんな日本が、これから生物多様性に関する国際社会の流れで、どんなポジションに向かっていくべきか、再設定(リポジショニング)の機会と思います。
ポスト2020に向けた世界中の情報と意見とアイディアが飛び交い、持続可能な開発目標を支える生物多様性の世界が再設定されるタイミングです。COP10以上の貢献を国際社会で担うことも、国内課題に集中するという選択も、全く異なるあり方も、様々なオプションを選択できる贅沢なタイミングともいえます。
大事なことは、国連生物多様性の10年をまとめることも、次の10年の目標を設定することも、現場の視点と、現場での実施を伴わなければなりません。
道家哲平(日本自然保護協会/IUCN-J事務局長)
*今回の情報収集は、環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて実施します。