IUCN第6回世界公園会議が始まりました
IUCN第6回世界公園会議がオーストラリア、シドニーオリンピック公園をを舞台に始まりました。この会議は、IUCNがおよそ10年に1度開催する保護地域(生物多様性や生態系サービスの保全や持続可能な利用を目的として設定される場(国立公園、鳥獣保護区、サンクチュアリなど)の総称)について話し合う場になっています。
このブログでよく報告する生物多様性条約締約国会議が主に政府が交渉し何らかのことを決める場であるのに対し、この世界公園会議は、保護地域に関して活動する人々、最先端を行こうとする人々が集う場となっています。そのため、生物多様性条約で見知った人々がいる一方、この会議にしか来ない人も大勢います、今回の参加登録者は5500人と聞きました。政府よりも「実践」に携わる人が多いというのも特徴の一つです。COPの決議文書のような目に見えやすい(でも中身は、曖昧)な決定がある訳ではないのですが、保護地域の各国のオピニオンリーダーの「今後こうあるべき」というアイディアが作られる場となります。この世界公園会議に参加した人が各国に戻った時「保護地域の世界はこう動くよ」と語る、そういう影響力をもっています。
過去には、1982年に開かれた第3回のバリ(インドネシア)の会合で、生物多様性条約の基本アイディアが作られ、1992年のカラカス(ベネズエラ)の会合では、陸上の保護地域を10%にするという宣言から、保護地域の急速な拡大が進み、2003年のダーバン(南アフリカ)の会合では、生物多様性条約の保護地域に関する行動計画のほぼすべてを作り上げ、かつ、かつてのイエローストーン告り公園のような先住民排除の保護地域拡充に決別し、先住民地域共同体による保全地域(ICCA)の認識と拡大に切り替えるというパラダイムシフトを行ないました。今回の会合で生まれるものは、まだ私自身も全容を理解していないですが、このブログでも随時発信していきたいと思います。
開会式は、オーストラリア先住民アボリジニーによる歌と、楽器演奏と舞の奉納、歓迎の言葉から始まりました。さらに、オーストラリアの美しい地形と動植物とそれを楽しみ、守る人々の映像が流されました。
ジャンIUCN会長発表要旨
「IUCN第6回世界公園会議へご参加の皆さんに歓迎の意。10年前、ダーバンに集合し、ネルソンマンデラ大統領会議のパトロンに迎え、多くの約束を行なった。人口は70億人に増加し、ますます我々は「自然」について語らなければならない。なぜシドニーか?なぜ、保護地域という”ここから離れた場所を守らなければならないのか”、自然は多くの恵みをもたらしてくれるから。食べ物、空気、自然の仕組みのために、われわれは自然に投資する必要がある。先住民や地域共同体との連携が重要で、個々オーストラリアでは200万haの先住民共同体地域を宣言した実績がある。海洋保護区はダーバン以降から進んだが、海洋生態系は貧しい人々も含め多くの人々の生計と暮らしを支えている。ダーバンから、保護地域の数は2倍になった。15%の陸地と、3%の海上を保護地域とした。しかし、質はまだこれから高めていきたい。続けてより多くの地域の拡充と、高い質を求めていかなければならない。キーワードは、integration, creativity, resilienceの3つである。
保護地域は、文化の生存地域でもある。IPCCのレポートが明確に教えているのが、我々の社会全体後非常に大きな危機を迎えていること。保護地域は、気候変動に対する大事な解決策の一つ。G20がブリスベンで開かれている?が、温暖化防止への取組みを強化することを求めたいし、この世界公園会議が、解決に向けた多くの刺激(inspiring solution)を与えることを期待する。保護地域は、eco civilizationの入り口になることを望む
オーストラリア環境大臣
160カ国から5000人の参加者に対し、オーストラリア政府代表としての歓迎の意を表したい。10年前、マンデラ大統領が未来を作ろうとした。彼はもう私たちとともにいないが、彼が残そうとした約束・行動は、個々の保護地域、保護地域に関わる人々、その自然に行き渡っていると思う。オーストラリアは、先住民保護地域とともに、17%という愛知目標の達成を行なったことを宣言します。グリーンアーミーというユースの活動を紹介。
オーストラリア政府等の保護地域に関する活動宣言を行ない、その度に拍手がわき起こりました。
ニューサウスウェールズ州知事からも挨拶が行なわれました。ニューサウスウェールズの保護地域だけで、ベルギーとオランダの陸地を超す面積をカバーしているそうです。
UNESCO事務局長による、UN事務総長メッセージの代読
保護地域は、最も重要な生物種の保護や生息地の保全に使われ、食料や水の提供、貧困の緩和にも貢献するものである。保護地域は、炭素貯留にも、絶滅危惧種の保全にも、持続可能な開発の目標にも貢献するものである。前回の会合から、29万の保護地域が15%の陸上を保護している。この会議は、過去の10年の成果の上にさらに、10年間の取組みを積み重ねていく大事な会合である。この1週間、政府も自治体もNGOも先住民も協同し、シドニーの約束を作り上げ、その後はこの約束を間おるための取組みをしなければならない。
南アフリカ環境副大臣と、マンデラ大統領の息子ルフェーブロ・マンデラ氏の挨拶
11年前、アフリカ大陸で初の世界公園会議が開かれ、多くの遺産を生み出し、アフリカがその遺産に応え、先住民地域共同体とのパートナーシップと、保護地域からの利益を共有する形で、協働がすすんでいる。保護地域の拡大も進んでおり、国境横断型の保護地域なども生まれた。生物多様性豊かな地域での生物多様性保全の取組みは非常に大きな課題があるが、この会議は、その課題を互いに学び合い、次世代に向けて、生命あふれる地球を残していく解決策を考えだす場である。
IUCNが生物多様性の取組みの中に、文化を入れてくれたことを嬉しく思う。
マンデラ大統領は、ユースの参加の重要性を訴えていたことから、10年前の開会式にメッセージを述べた高校生だった若者が登壇し、その取組みを紹介して大きな拍手を受けました。続いて、オーストラリアの高校生が発表し、ユースにバトンが引き継がれていることが紹介されました。
世界公園会議のパトロンも紹介されました。ガボン大統領からは、ネルソンマンデラ大統領の貢献をたたえるとともに、前回の会議後、新たな保護地域の設立や、保護地域関連法の国会通過とともに、6つのラムサールサイトの登録も行なわれ、20%の陸上の保護地域の設立が紹介されました。その成果をもとに、海洋保護地域のネットワーク23%の海域保護区の設立に向けた宣言がなされました。保護地域官庁の強化(人材増や予算増)なども成功したことも紹介。
これから19日まで行なわれる会議の幕開けにふさわしい壮大なオープニングイベントでした。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平