SBSTTA前日の戦略会合

日曜日の午前中は貴重な休み。ロワイヤル山を散歩

明日から、第18回SBSTTA(科学技術助言補助機関会合)が始まります。

前日の日曜日には、NGOの戦略会合が開かれました。

先週のWGRIとは違ってNGOが大勢来ています。戦略会合では、主要な議題のポイントを共有したり、ECOなどのニュースレターの計画などを議論します。

まずは、WGRIの議論の振り返りです。資源動員戦略について、COP11で決まった2倍にする目標について、ほとんど議論、進展がなく、互いを批判する動きのような議論であった。目標についてはほとんど議論がまとまらず、ブラケットがついた。

COP13では、COPとMOPの同時開催を決めたことについて、交渉者がいくつも会議に出れない国はどうするか?どうマネジメントするかというところが疑問で、逆に問題が起きないだろうかという懸念の声が報告されました。

多様な主体の参画についてや、right holderとstake holderの取り扱いの違いについての議論があったことなども共有されました。

ピョンチャンロードマップやメキシコがCOP13のホスト国の意向を表明したことなども共有しました。持続可能な開発目標(SDGs)について、社会経済的要素が現在の議論に弱いのと、メキシコが愛知ターゲットの一部だけをピックアップしようとして、全体として達成するものであることを主張するロビーを行ったことなど、WGRIと同時期にニューヨークで開かれていた会合の報告など、多彩な情報源の中で、市民としての目線を作り上げようとしています。

SBSTTA注目議題の情報交換

SBSTTAで、最も注目される議論が、構成生物学(Synthetic Biology)です。

構成生物学をCOPの議題とすることについては、当初市民社会から提案され、条約の新規の緊急課題として扱うよう提案し、実現させたものです。COP11で構成生物学のインパクトや管理のギャップを調べるよう事務局長に要請され、その決議をもとに様々なペーパーが出され今回の会合の議論を進めるための文書になっています。

どうやら、アメリカとEU、UKなどが事務局が用意したこれらの文書を批判的に見ているという話がありました。(文書の中に出てきますし)。それらの国は、新規の緊急課題の基準に合わないという論調をしているという見方で、環境下への放出と、経済的利用について、モラトリアム(暫定禁止)やそれにつながるような主張をNGOとしてするべきというアイディアがありました。

構成生物学は、どのフォーラムで取り上げるのか、どういう国際協定の枠組みでコントロールされていくか分かっていません。Commission on Foods securityや、カルタヘナ議定書(遺伝子組み換え規制)、名古屋議定書にも関係します。

どのように、ロビー活動を行うかの作戦などを議論しました。

なお、条約ウェブサイトに、どんな目的で構成生物学が進んでいるかなどが、詳しくまとめられています。

http://www.cbd.int/doc/meetings/sbstta/sbstta-18/official/sbstta-18-10-en.pdf

構成生物学の定義はまだありませんが、新たな生き物の部分やシステムを作る(design)すること、ある有用な目的のために既存の生物システムを再度作る(re-design)する学問。

肥満の仕組みを知るために、細胞を作るなどの研究とか、スゴいバクテリアを作って、砂漠化防止とか農業の効率化をすすめる(そのためには野外に放出)計画もあるらしい。なんと無茶なと思いますが、NGOとして警戒しなければならない問題のようです。

2010年に11億ドルの市場があるとされ、2016年には108億ドルの市場になると見込まれている巨大産業と見られていそうです。

休憩後は、ECOについて議論をした後、海洋関連の議題について、意見交換を行いました。

CBDと国連海洋法条約との関係が難しいが、生物多様性上重要な海域(EBSAエブサと発音)、海底掘削などのによる海中騒音(北極海などの油田開発)、海上の漂流物、海洋酸性化などが議題になる予定です。

海水温上昇に耐える生物を放流して、自然再生(!?)という取り組みにつながるので、構成生物学にも関係するという指摘がありました。

こういうふうに、構成生物学の議論でNGOが頑張っても、別の議論(海洋酸性化が問題なので、構成生物学の成果が重要みたいな論理)で逆のことが起きないようにするために市民側の作戦会議が重要と思います。

IPBESについて、新しいチームが作られて協議が進行、緊急アセス(fast track assessment)でポリネーターのことを議論するので、そこに、市民科学や農民の経験などlocal knowledgeをちゃんと採用して、判定できるかが成功をはかる鍵

地球工学について、地球工学について中間報告を実施。IPCCのレポートを参考にするようにCOP11からの指示。そのため、CBDのほうで地球工学を進めるような議論を生まれないだろうという見方。

生物多様性に悪影響を及ぼす補助金やインセンティブについて。多くのインセンティブが生物多様性に悪影響を及ぼしている。WGRIでの合意文書でマイルストーンが作られました。ですので、SBSTTAで何を議論するのがよくわかっていません。SBSTTAとWGRIの関係から、WGRIの議論をSBSTTAが修正することはできないのですが、何か議論があるのでしょう。

自然再生については、とにかくこの会議で何が起きるかしっかり見ていく必要があるとのことです。特に、構成生物学の成果を活用しようという動きがり、また、自然再生と外来種がオーバーラップする。生物多様性オフセットなどとも関係するかもしれません。持続可能な開発目標でも、劣化した地域の再生という目標が入りそうで、その点でも、気をつける必要がある。自然再生に関わる専門家は、ネットワークを作り、自然再生に関わる専門家の職を作ることにもなるので非常に力を入れている。自然再生の内容にはNGOとして監視の役割が必要とのことでした。

侵略的外来種:議題の一つは、生物多様性条約が今後外来種対策について何をするべきかを議論することになる。外来種については、Global Invasive Species Programという事業が1992年からあったけれど、2011年に投資する組織がなくなって、解散してしまい、うまい世界的な動きが作れていません。また、外来種は、自由貿易の障壁もあってなかなか大変ですが、食品や防疫の関係の国際ルールとの整理や、アクアリウムなどで取引されるもの、バラスト水(船の安定化のために入れられる海水、船が港に着いた時、水草や淡水貝とともに放流されてしまうなどの問題)などにも取り組んできました。今回は、生き餌としての取引についてを扱います。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平