SBSTTA17レポート⑧-決議紹介 愛知ターゲット
決議「愛知ターゲットの達成に必要な科学的技術的に必要なこと」は、
本体決議部分と、付属資料として横断的な課題や成果を付属1、それぞれ愛知目標の課題等をまとめた付属2で構成されます。
本体決議部分は、社会科学、データと情報、評価とアセス、計画と主流化、維持・保全・復元、経済的手法、伝統的知識、科学的技術的協力、その他の手法という項目毎に主要な科学的技術的ニーズをまとめました。市民科学というキーワードも入っています。裏読みをすれば、今後、科学者でいえば、研究成果が条約の意思決定に反映させやすいテーマが、NGOや政策関係者がサイドイベント等で情報発信が期待されることの一覧といえると思います。
決議では、まとめられたニーズおよび付属署1、2について各国に重要性を訴えるとともに事務局に対して、①2014年までに少なくとも各愛知目標に対して1つ以上の指標設定を視野に、IUCN、生物多様性指標パートナーシップ、GEO-BON、GBIF、FAO、生物多様性先住民地域共同体フォーラム指標作業部会と時宜にかなったコラボレーションをすること、②BIPやGBIFやGEO-BONなどとも協同して、クリアリングハウスメカニズムの強化も含む、地域レベルの能力開発を実施すること、③第5次国別報告書や第4次国別報告書の成果も考慮しつつ、生物多様性指標に関する専門家技術グループ会合の内容案をまとめ、COP12での決定のために提出すること、④第4次、第5軸に別報告書とその自己評価手法等についての分析をまとめ、WGRIとCOP12に提出すること、⑤今回のSBSTTAの進行方法の評価を行うことを要請しました(これはすぐに効力を発揮する決議)。また、愛知ターゲットが今国連で検討されている持続可能な開発目標(SDGs)に統合されうるものであることを確認しました。
COP12に向けての勧告案(COP12での決議を待って効力を発揮)としては、生物多様性の観測システムやモニタリングの構築に関するGEO-BONへの奨励、事務局に対して、①今回特定されたニーズに取り組むための手段や手法に関するレポートの準備、②クリアリングハウスメカニズムの強化、③愛知ターゲットに関する指標についての専門家技術グループ会合の開催、④愛知ターゲット達成に向けた政策ツールの有効性評価のためのツールの利用に関する各国の経験を検証し、COP13の前のSBSTTAに向けて報告することを求めました。
付属書1(締約国によって特定された横断的課題)は、愛知ターゲットの実施に関する科学的技術的ニーズに関する「横断的課題」について、193カ国の総意ではないですが、どんな意見が挙げられたかをまとめた文章です。
政策ツールや指針、データ・モニタリング・観測システム・指標、課題、成功事例、条約の元で実施されている手法の有効性評価などの横断的なテーマについて、現状や評価が行われています。今回何度も話題に出ていたのが「市民科学やコミュニティーの協力によるモニタリング」などのボトムアップ手法によるもので、成功事例のところでは、このようなボトムアップ手法と政策によるトップダウン手法のコンビネーションの重要性が指摘されています。生物多様性評価に欠かせない環境変数(Essential Biodiversity Variables)がGEO-BONによってまとめられ、これら変数の観測が愛知ターゲットの実施状況評価に有効であることが主張されています(一番費用対効果が高そうな観測すべき情報がまとめられたということ)。社会科学の部分のキーワードは、behavior change(人々の日々の振る舞いを変える)だと思います。
総論のところに書かれている「ツールやガイドラインの不足、それらツールの提供の難しさを抱える国もあるが、それによって、多くの国が戦略目標の実施に対する効果的な行動をとることを妨げてはならないThe lack of tools or guidance, for some Targets, or the difficulties of applying them in some countries, should not prevent most countries from taking effective action to implement the Strategic Plan. 」というのは、日本政府の発言が元になった文章で、日本政府の実施に向けた海外への強い意気込みが反映されたのは喜ばしいことです。
付属書2は各目標毎に締約国その他参加者から提起された意見がまとめられていますが、こちらは別途まとめたいと思います。