SBSTTA17レポート①-10月14日午前-

※本レポートは、国際会議の報告者のノートを元に、ポイントをまとめたもので、国の発言内容などをすべて網羅したものではありません。

SBSTTA17が開催されています。

 

開会式では、議長による進行についての説明・SBSTTAの機能についての紹介。準備に関わった人々へ謝意やホスト国カナダへの謝辞なども読み上げられていました。

ブラウリオ事務局長は開会の挨拶で、SBSTTAの前からGEO-BONの会合やGB04の準備会合、地域会合などが開かれ多くの準備作業がなされていることや、日本・デンマーク・フィンランド・ノルウェーなどへの旅費支援への感謝などが述べられました。

これまでと大きく異なるSBSTTAのプロセスの変更について紹介されました。変更の意図は、COPの決議にも基づき、また、COP10決議、愛知ターゲット達成のための様々な経験の共有をしていくため、決議を用意する会議体ではなく、25条の精神に基づいてアドバイスをし、検証することを目指すためです。

21か国がCOP10後に国家戦略を改定したそうで、これはCOP10で狙ったときよりもずっと低い改定状況だし、92の署名に対して25の国が名古屋議定書を批准している現状で発行をめざすためにも、加速が必要ということでした。

IPBESや資源動員戦略などについても大きな課題が残っており、その課題の中で大きいものに対応するため事務局組織の改編やメインストリーミングに関するユニットの新設が行われたこと、また、科学局を「科学評価、モニタリング局」にするなど役割に会わせた組織再編を実施したとの報告がありました。週末までに、科学的技術的情報やツール、手法、評価などのリストをまとめ、今後の課題などをまとめていくことがSBSTTAの任務であるとまとめられました。

愛知目標実施というのは世界レベルのみならず、広域や国レベルの実施も含む。成果はCOP12の参考になり、2020年までのロードマップを作る材料を作り上げたいという事務局長の発言がありました。

 

<会議の進行・議題の確認など>

開会式のあとはSBSTTAの運営委員(新しいメンバーの選出)や議題の確認などを扱います。JASCANZからニュージーランドのビクネル(元IUCNの地域理事です)さんの推薦がありました。中南米(GRULAC)からも交代要員の紹介。アジア、アフリカ地域、中央東欧は協議中だそうです。SBSTTAは地域から代表を出し合って構成することになっています。今回の会議の記録係はギニーのバーさんが指名。

 

議題については複数の国から意見が出ました。

ノルウェーから、SBSTTAのフォーマットについて変更が大きすぎて、COPで決めたSBSTTAのmodus operandi(運営規則)にのっとっていないのではないかとの意見。この会合における勧告案の作成プロセスが不透明ということについても懸念を表明しています。国内での検討準備もままならないという意見でした。
カナダ、ベルギーは、CBDやSBSTTAに協力する立場を堅持しつつも、ノルウェーの懸念に合意するという意見。SBSTTAの運営規則には「3ヶ月前に書類を用意し、それには科学的評価とともに、”勧告案をつけること”」が明記されているのに違反しているのではとのこと。
欧州の国や、アフリカもGRULACも、とにかく今回のプロセスを試してみてから検討しようという雰囲気で、一応議題や進行は採択されました。

時間を有効にするため、議長や事務局チーム、運営委員(Bureau)への謝辞、その他諸々はラポーター(記録)のバーさんに参加者全員を代表してお願いするということで、文章が読み上げられました。

その後、実質的な議題であるitem3と4についての全般的な評価について行われました。

政策支援ツール存在、モニタリングデータの有無や適切さ、新規の緊急課題などについての全般的内見について各国に意見を求めます。文書は、SBSTTAのページからとれます。(http://www.cbd.int/doc/?meeting=SBSTTA-17)

また、先週の8(J)会合の成果から、指標や慣習的利用、伝統的知識とIPBESとの関わりについてなどの文書があることも紹介されました。
次に事務局長からの議題説明がありました。SBSTTAを通じて、グローバルレベルでどのように協働の機会をつくるか、どんな種類の手法が有効で、それをどのように各国にフィードバックするか、アイディアを寄せ合おうとのこと。

 

*キーノートスピーカー ザクリ博士*

愛知ターゲットの達成には、社会の変革や個人の振る舞いの変更などが必要となり、いわゆる自然科学だけでなく、社会科学のような分野との連携が欠かせない。IPBESは、活動の基本となる考え方をまとめているが、その核に社会科学を据えたいと思っている。

セクター(分野)を超える必要があり、新しい知識システムへの挑戦もある。IPBESの第2総会に向けて、IPBESが行うべき作業、優先度を高く取り組むものなどをまとめているところ。明日の夕方にIPBESの5カ年計画案について議論するサイドイベントを行う。

補足)12月の9日から14日にかけてIPBESの第2回総会がトルコのアンタリオで開かれるそう。

 

*ジョージ・カリー氏(フォレストピープルプログラム):8(J)の成果報告*

伝統的知識システム(ジェンダーも含む)と科学の関係についての詳細な対話を先週実施した。女性や先住民の持つ知識体系の重要性が、新しい知識ネットワークであるIPBESでどう扱うかを議論した。

伝統的知識がもつセンシティビティーや、科学との文脈の違い、実践に結びついた知識という既存の知識との違いなどがある。男性が狩猟や採集の知識をもっていれば、女性は保管と知識を若い世代に伝える技術を持ち、祭礼などが社会的紐帯を作るなどの、伝統的あり方への敬意を払っていきたい。

IPBESに関して日本でもワークショップが開催され、伝統的知識体系(traditional knowledge system)に関する、キャパビルディング、普及啓発、科学者への理解向上、人種の多様性の注目などが、東京ワークショップで議論され、成果文書がまとめられた。

伝統的知識に関する現状を把握するためCommunity based monitoringのためのパイロットプロジェクトが立ち上がり、IIFBがいろんな機関の支援と参加を受けて動いている。IPBESヘのフィードバックがされる予定。”知識は人々を変化に対応できるようにしてくれる”

 

*Bob Schol氏:GEO-BONのレポート*

GEO-BONとは、地球管理(planetary management))に必要な情報を収集することを促進するグループで89カ国が参加している巨大ネットワーク。インタラクティブなイベントを実施している。

先週日曜日に行われたワークショップの成果として、なぜ生物多様性の観測ネットワークができないのかという理由として、継続的な情報獲得が難しい、情報のレベルが異なる、大面積をカバーするのができない(情報がまばらにしかない)、資金調達の難しさ(理解不足)などがあげられる。

市民参加型調査の進展に目を見張るものがある・技術的進展やコミュニティー形成なども進んでいる。

生物多様性観測(BON)のスタートアップキット作りの重要性などが指摘されたことが報告されました。

 

*ヨーロッパ宇宙局(space agency)から*

ヨーロッパやブラジル、USAなどで衛星データを自由に、費用なしで使えるようにする取り組みが少しずつ広がっており、土地の現状把握や現状評価などにつながるだろう。衛星技術に関して、生物多様性関係者がどのような観測を必要としているかという需要が把握されていない現状がある。Essential Biodiversity Varuables(生態系把握に欠かせない生物多様性変数)をまとめられれば、宇宙関連当局が生物多様性に活用できる衛星調査などへの道が広がるので、GEO-BONの取り組みを歓迎したい

Global Biodiversity Informatics Outlook(GBIO 世界生物多様性情報学概況):市民科学や衛星技術活用の情報、ローカルでの観測などの様々なレベルの情報がある。それぞれの情報をどのように管理し、扱うべきかというロードマップとアクションプランをまとめた。

観測やモニタリング、古い時代に先進国が途上国から持ち帰った情報の返還についてもまとめている。生物多様性のデータの共有などを促進する。

コミュニティーモニタリング:コミュニティーの知識を生態系評価などに活用する手法。ILCが生態系管理に果たす役割の認識が高まるなか、ローカルレベルを超えて管理への期待が高まっている。
※コミュニティーベースドモニタリング(CBM)について

CBMは、愛知ターゲット達成のためのモニタリングや指標作成、コミュニティー構築・知識体系への理解などをめざす。知識体系の協働創出、多様な確証にもとづく評価。全体が進行中であり、対話で進めていく取り組みである。モニタリングは、公平性とILCへの敬意と持続可能性への支援が重要

 

*コメントや質問*

メキシコ:

海洋生態系のモニタリング、森林火災の早期発見システム、マングローブのモニタリング、珊瑚礁のモニタリングを多様な市民参加や関係者の協力に基づいて実施。カメラ調査などを実施していることを紹介。課題は、種ごとに手法を変えなければならないこと、また、遺伝的レベル調査についてはほとんどできていない。

カナダ:

質問Different knowledge systemがあるなかで、どのようにして、情報をまとめるのだろうか。(異なる知識体系の中に統一したまとめ上げるルールがあるのか?)

イエメン:

30年近いモニタリングを実施。衛星技術の活用は非常に高いコストがかかる。マングローブが沢山あるけれど、現代的な技術がない、簡単で(easy)、容易に入手可能で(available)、合理的な(rational)値段で使えるツールが必要。地域協働も重要。

ウルグアイ:

モニタリングは、プロセスやツールや基準を必要とするもので大きな事業。気をつけることとして、モニタリングを継続することが目的になってしまい、なんのためにもにタイリングするかというゴールを忘れてしまうことがある。保護地域データや自然情報が、劣化や開発を止められるような愛知ターゲットの枠組みに沿っていくことが重要。

ニュージーランド:

生態系サービスに関するモニタリング体制を構築。
質問として、生態学的データをどう「経済的決定」に活用してもらうか?という質問が出された。

(公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子