SBSTTA17レポート③-10月15日午前-

CBD-SBSTTA17の二日目本会議。

朝はミーティングやIUCN関係者の会合とNGO会合をはしご。それぞれ新しい進行についてどう思うかを共有しました。これまでのSBSTTAがあまりに政治的な議論によりすぎていたので歓迎という声もある一方、良いことばかり政府団は話してしまうので、うまくいっていないことに視点がそそがれないのではないか、キースピーカーの選考に事務局の意向が入り過ぎはしないかなどの懸念も。

 

<戦略目標Bについてのレビュー>

*キーノートスピーカー カルロス氏(ブラジル)
ブラジルの森林減少の削減が成功した事例がキーノートスピーチで行われました。

2004年に土地利用計画その他の法律を作成。25万平方キロメートルの保護地域拡大などをめざされました。リモートセンシングセンターを作ってモニタリング(PRODESシステムという衛星に加えて、初期発見システム(DETEXという毎日更新のシステム)を構築。

高解像度写真をリモセンセンターが2日以内に分析して、法執行部局に2日以内に通知。3000人の警察官とヘリコプターが、違法伐採や持ち出しを止めるために、道路を閉鎖できる権限も持っている(多分森林地域が相当広いから)。

衛星写真による解析は、森林の有無だけではなく、さらに土地利用の変化状況を把握する仕組みを構築した。さらに州ごとの森林伐採を食い止める計画策定を支援している。森林伐採を止めてもGDPの上昇は続いている

 

*パネリスト①:ジェイク・ライス氏(カナダ)

愛知ターゲット6についてスピーチ。海洋については、漁業対象種と非漁業対象種(by catchの魚)生息地、漁業コミュニティーなど多岐にわたる要素を含む。

 

*パネリスト②:リンダ・コレット氏(FAO)

目標7(第1次産業)と目標8(科学汚染)に焦点をあてたプレゼン。

食料安全保障と窒素流入が大きな課題になっていく。気候変動への効果的な対応、食料需要の増加などの課題も大きい。土地劣化、ポリネーターなどの課題に取り組む必要がある

FAOも持続可能なアグリカルチャーを進めるための取り組みを実施中

FAOの方が紹介した新しい報告書は、http://www.fao.org/ag/save-and-grow/ … これのことだと思います

 

*パネリスト③:ガン・ブリット氏(サーミ族)

IIFBの代表的な方が、8(j)の報告をしました。慣習的な生物多様性の利用に関する行動計画案(採択はCOP12)についてスピーチです。ILCのあらゆる参加が重要。8(J) コミュニティーベースドイニシアティブの推進も柱の一つ。IIFBもそのことには深く関わりパートーナーシップを作っていきたい。行動計画案のタスク3は、保護地域管理におけるILCの参加に関する優良事例を集まることになっている。直接的な影響の低下、持続可能な利用の推進の両面で.この議論はSDGsの動きにもつながっていく。ターゲット18が横断的な取り組みとして扱われるべきである。

 

<質疑応答など>

 

*コスタリカ

コスタリカでも森林再生しているが、生態系の質としてはあまり良くないので、ブラジルの事例はどうなっているか教えてほしい。

 

*タジキスタン

森林破壊を止める取り組みと、再森林化の困難。再森林化のマネジメントが大変である。植林した木の定着率が低い(ということらしい)。

 

*マダガスカル

森林の劣化を止めることと、デベロップメントとの両立について。林業用の地域と農業地域などの土地空間利用計画を国や自治体レベルで設定しているほか、政策決定・省庁間・地域住民の普及啓発などに取り組む。マダガスカルでは、土地利用に関するいくつもの委員会が立ち上がって、ちゃんとしたマネジメントができていないらしい。現在、統一的な委員会としての生物多様性委員会を立ち上げる方向で検討がされているとのこと

 

*メキシコ

ブラジルの事例への質問。どのように法執行強化するか、地域共同体との合意をどのように作り上げたのか?こういう手法への合意をどうやってできたのか?漁業・・・魚種の個体やトレンドを追うことが非常に難しい。どうすれば良いのか

 

*ニュージーランドへの回答

low carbon agricultureという政策を実施している。放牧地の拡大が森林劣化・伐採の原因の一つでもあるので、放牧地における草地の生産性の拡大のための事業を実施。

海洋に関する議論。15年でイルカが誤って捕獲されるという率を75%減らすことができた。混獲の減少については、政府が適切な支援を出せば可能である。貧困撲滅や食料安全保障と、漁業の適正化海洋環境の保全とはこれからますますリンクしてくる。

海の議論。まだなんとなする時間は残されており、適切な環境管理・漁業管理のための政策の推進が必要。

 

<戦略目標Bに関して各国の取り組み・意見>

 

*グンブリット

生物多様性の計画への実施が重要。先住民の持続可能な利用、土地利用、保全管理、そのための知識などは戦略目標Bにちゃんと貢献することを強調したい。

 

*フィンランド

効果的な取り組み、優先度をつけて取り組むべき。障害は何かなどをハッキリさせる必要がある。NBSAPで数百に及ぶ行動計画を採択。ヘルシンキ大学による土地利用計画に関する仕事が興味深い(なんのことだろう?)。

COP11での事務局長への指示がとても大事な一歩なのに進んでいない。ターゲット10は、スピードを上げる必要がある。 SBSTTAとして勧告をまとめることを期待。新しいものを作るのではなく、実施を支えることに注力。

 

*EU

目標10。達成まで残り15ヶ月。CO2の大気中の集中が予想よりも大きく、第5次IPCCレポートは海洋気温上昇が第4次報告書よりもさらに高くなることが予見されている。GBO4のシナリオに注目。サンゴ白化に関する取り組み強化のための議論をSBSTTA18で行うべき。

 

*日本

二次的自然(里やまなど)も重要であり、自然生息地の定義がまだ不十分ではないか。また、湿地の復元に関する指標を設定しているが、tの国で、劣化や損失に関するベースラインをどのように設定したか事例を聞きたい。

ターゲット9(外来種)。外来種の潜在的危険性の評価の難しさに同意。パスウェーに関する評価については、被害防止のための計画を起案中。

 

*メキシコ

漁業について。ガバナンスは、法規制(執行)強化とモニタリング強化の両方が必要である。ハンマーヘッドシャークのCITES2類の掲載について言及。農業や森林に関して、非常に多くの認証制度があるらしい

 

*カナダ

degradation、 natural habitat、 fragmentationの定義が必要。ecological limitの定義が必要。

 

*ノルウェー

リモセンや継続的な調査の重要性。政府、自治体、企業、ILCそしてNGOそれぞれによる長期的なモニタリングへの投資が重要。実施に関する情報のオープンアクセスの推進が重要。生態系に関しては、各生態系ごとに専門家パネルを立ち上げてベースラインの設定などを行っている。

GBIOの報告を重要資料として認識するべき。ターゲットの6、7、8はセクター毎のアプローチが必要で関係者の巻き込みが重要である。市民科学を通じて、情報の収集と分析と同時に普及啓発につながる。coordinated citizenサイエンスの重要性。

 

公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子