SBSTTA17レポート⑥ -10月16日午後-

 

<昼のサイドイベント>

 

普及啓発の指標についてのサイドイベント。まずはBiodiversity indicator partnershipからのレポート。2007年に設立、愛知ターゲットの指標作成の責任を担う組織です

40団体が入っている調整機関でもあります。2014年までに愛知ターゲットそれぞれ、少なくとも一つの指標を用意するというのがCOPからの決議で設定されています

2010年目標の指標をベースに新しい指標を発見、今は新しい指標を組み込むための基準(世界レベルで把握、シンプルなものなどの基準)も作っている。目標2,3,15,19が指標がない。

普及啓発についてはBiodiversity Barometerという指標があります。ポケットサイズの資料(Aichi target passport)も月曜日に発表(iPhone アプリでもある)

Biodiversity BarometerはUEBT(Union ethical biodiversity trade)が設定。11カ国31,000人を対象にオンラインインタビューを実施したもの。フランス、イギリス、ドイツ、アメリカは国際生物多様性年を通じて大きく普及度合いが増加したらしい。

 

<新規の緊急課題の議題>

systemic pesticide(浸透性農薬)をSBSTTAの議題とするべきかが焦点となりました。

 

*メキシコ

IPBESとの連携などをかんがえると、ネオニコチノイド農薬については、農業作業計画とポリネーターに関する国際計画とに入れていくのが良いと考える。事務局長ノートをIPBESに提出する。MEPでも検討することが重要。

 

*カナダ

新規の緊急課題の基準に明確に合致する。しかし、ネオニコチノイド系農薬については、IUCNのタスクフォースも動いている。ポリネーションサービスに関するIPBESの検討作業に入れるというメキシコ案に合意。

 

*ベルギー

メキシコと同様、SBSTTAの課題に入れるのは賛成しない。化学物質に関する他の機関での検討がふさわしいのではないか。また、IPBESの作業計画に入れるよう提案するのがふさわしい。

 

*EU

メキシコ・カナダをサポート。IPBESでの作業部会で議論することを提案。次回のSBSTTAの新規緊急課題とすることは反対。

 

*アフリカ

EUと同様のポジション。

 

浸透性農薬については、SBSTTAの新規の緊急課題とはしないこと、IPBESのテーマ別アセスとして予定されているポリネーションサービス評価の中で扱うようIPBESに提案するという方向で、ほぼ合意。

 

<パネルディスカッション>

 

*パネリスト:GBO4

GBO4はBIPの指標や将来シナリオとともにもっと「何をしなければならないか」という行動に焦点を当てたものをめざす。楽観的シナリオ、悲観的シナリオ、中間シナリオで2020年に保護地域の目標達成をみたり、ケーススタディーなども豊富に組み込んでいく。

GBO3ではサンゴ礁生態系の劇的な劣化が予想されているが、2030年までに良好な状態に持っていくためのアクション(低炭素排出)なども記載していく予定

バックキャスティング:将来〇〇の状態をめざすと目標を設定した上で、それを実現するために1年前に何をすればいいか、さらに1年前に何をすれば良いかというように発想する手法。。なぜなら、今は生物多様性損失の歴史であるから、現状に良いインプットを足していてもうまくいかないのが明白。

 

*パネリスト:GBO4のアドバイザーグループ

将来予測は困難であるが、シナリオ分析はコミュニケーション戦略としても活用が見込めるものとして議論している。報告書の作成には、カナダ、ドイツ、日本、オランダ、EU、韓国などの資金提供に大変感謝している。

IPBESの最新動向報告:第2回総会の議題は大きく、概念枠組み、2014−2018の作業計画と予算案と、運営に関する事項など多くの実質的な議論を求められている。

IPBESの2014−2018の事業目標や、組織体制、外部パートナーとの協力関係構築、どんな支援を求めているかなどを紹介しました。

 

*パネリスト:DIVERSITASとFutureEarthの紹介

FutureEarthが包括的で新しい生物多様性科学の枠組みになるようです。3つの1000を超える科学プログラムが融合する形で出来上がる模様。CBDとIPBESに新しい知識を提供する科学パートナーとなる予定

Biodiversity Mapping Tool: UNEPの環境管理グループ(17の国連機関が関わる) http://ieg.informea.org  がホスト。国連システムの中で環境関連の機関がどんな活動を展開しているかをマップ化するという取り組み.

 

<パネルへの質疑応答>

 

*スイス

GBO4の資源動員戦略に関するハイレベルパネルの成果を入れるとのことだが、ほかの情報源情報を入れたりするか?

⇒(回答)ハイレベルパネルの成果が判明してから、決めていく。今のところ資源動員に関するハイレベルパネルの情報を入れる場所をキープしておくという意図である。どういう内容になるか全く分かっていないというのが正直なところ

 

*EU

GBO4を生物多様性コミュニティーを超えたところに情報が届くようにしたいという意見は賛成。GBO4をCBD-COP12以外でもSDGSの会合や、UNFCCCの会合等で紹介するの良いのではないか、アイディアはあるか?

 

⇒(回答)ぜひ活用していきたい。そのためにも国別報告で様々なケース事例を入れていきたい。

 

<GBO、IPBESなどについて各国からの意見表明>

*メキシコ

先ほどの議論に乗っ取って、IPBESにネオニコチノイドの課題も視野に取り組むことを要請すること

 

*ドイツ

GBOの作成プロセスとIPBESとの連携をさらに図っていくことを提案

 

*日本

IPBESのドラフトプログラムを歓迎。作業の重複と互いの取り組みの効果最大化をめざすのがよい。アセスメントの期限が非常にタイトで大変であるが、2020年の前に、愛知ターゲットの影響が分かった方が良い。GBOは国別報告書の実施状況に特化した方が良いのではないかと思う。

 

※IPBESは2018年にグローバルアセスメントをまとめることになっており、GBO5もタイミングとして2018年と重なります。そこで、GBO5を作らずにIPBESのレポートで愛知ターゲットのレビューに代えるか、愛知ターゲットに特化したGBO5を作るかという二つのオプション

多くの国がGBO5は別途作ることとし、IPBESとの重複を避けるための取り組みを主張しています

 

<夜のサイドイベント> 18:15~19:45

 

ICCAやバイオ燃料に関するサイドイベントに出席しました。

Biofuel watchの報告。

100万ワットの発電に13,000本の木材が必要。EUは再生エネルギーの半分をバイオ燃料で確保しようという政策目標をたてたり、イギリスは、年間8000万トンのバイオマス燃料発電を政策目標でめざしているが、これはイギリスの国内年間木材生産量の8倍にあたる。当然、海外からの輸入に頼らなければならない。ブラジル・マランハオでは、欧州の需要があるためユーカリの仲間を植林して欧州への輸出を進めている。この動きに合わせて木材生産量を高めるための第2世代の遺伝子組み換え樹木(何が第2世代かは不明)の利用も増えているのではという会場からの指摘もありました。

Natural Justiceからの発表では、ICCA(Indigenous Peoples and Local Community Conserved Area)についての紹介があります。遊牧民のルートなども対象となるらしい。ブラジル、ボリビア、コロンビア、オーストラリアでは国内で正式に認める動きが生まれている

*Natural Justiceは、南アフリカに本部を置く団体で、インドやUSなど各地に研究員がいるようです。

タフィ・ファーバーさん(イラン)の事例:イランには700の遊牧民族がいる。人口の2%、12,000年の歴史を持つ。100km−1000kmもの移動を行う。

移動するのは、厳しい環境の自然とうまくつきあうため、ヤギなどの家畜による過放牧をさけるため、気候のリスクを避けるため。近年気候変動の影響、万年雪の減少、漂流水の減少、ダムや農業による水利用、砂嵐に起因する牧草の劣化や損失などの危機に直面。

 

10月16日のレポートはここまでです。
その後、ルーム6という少し狭い部屋で、愛知ターゲット達成のための科学的、技術的ニーズについて議論を行いましたが、サイドイベントに出てしまったこともあり、日本から来たほかのNGOの方にお任せしました。

 

※本レポートは、国際会議の報告者のノートを元に、ポイントをまとめたもので、国の発言内容などをすべて網羅したものではありません。

 

公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子