SBSTTA17レポート②-10月14日午後-
引き続いて午後のレポート(15:00~18:00:本会議)
午後の部最初は今後の会議プロセスについての説明。
(午後の部と午前の部との間で開催されるサイドイベントでは、生物多様性条約のクリアリングハスメカニズムやEUの国家戦略などに関するレポートシステムについてのものに出席しました。)
<戦略目標Aについてのレビュー>
*ノルウェー:トロンハイム会合のレポート
モノの本当の価格(true costとともに環境の外部性を誰が変えるのか)への注目や、GDPを超える指標の必要性などが議論され、またGBO4(地球規模生物多様性概況第4版)にシナリオ分析を行ったものを載せて多くの人に語れるようにしようとか、知識に基づいた報告書をめざそうなどいろいろな提案がされました。会議の成果は今回のSBSTTAだけではなく、2014年2月に開催されるSDGに関するオープンワーキンググループにも提出されるそうです。
私もCOP10の前に参加したことがありますが、社会科学にかなり焦点を当てた会議でした。第7回の会合では愛知ターゲット1−4に焦点を絞って開催されました。
経済・生態学・社会学など。レポートはこちら
http://www.cbd.int/doc/meetings/sbstta/sbstta-17/information/sbstta-17-inf-05-en.pdf
*スタンレー・アシ(ワシントン大学)
“People is problem so people is solution.”
生物多様性は自然の話ではなく、私たちの話である。態度の変化と、振る舞いの変化を起こすためには?という話。人々の振る舞いを変えるには、人々の「動機・価値・信念」に働きかける必要がある。行動の変化に必要なのは、第1に経済、第2に経済、第3に経済。
* ヴァレリー氏(世銀)
SDG対話の中で生物多様性がコアに据えるべきではないか。
UN統計局が中心となり、UNのエコシステムアカウントが合意された。世銀のWAVEという自然資本を図ろうという動きがあり、インド、ペルー、ノルウェー、オランダ、ベニーなどで調査を実施する予定。自然資本と経済資本と社会資本への投資総額の評価を行うほか、レジリエンスの指標の模索もしている。
*グローバルフォレストコアリション
メインストリーミングと政策との一貫性をとることの難しさを指摘。生物多様性を2015アジェンダに入れることは重要。環境省が非常に良い取り組みをしていても、他の省庁が全く逆の政策を展開していることがある。政府間の一貫性のある取り組みを推進することの重要性を戦略目標Aの重要な取り組みとして指摘したい。
<各国からの目標群Aに関する取り組みの紹介・意見など>
*メキシコ
人類の活動の多くが自然環境の影響を組み込んで取り組めていないということをトロンハイム会合が明らかにした。behavior modified organismという指摘であるが、どうすれば変えられるのかをもっと知りたいという質問でした。
*ボリビア
RIO+20のグリーンエコノミーなどについて大きな懸念を持っている。企業に対する疑念。先住民地域共同体の営みへの配慮。一つのモデルで進むのではなく、多様なモデルを許容することが重要ではないか。普及啓発、行動変化のキャンペーンは容易ではない。途上国では、地域の暮らしや開発などの支援メカニズムが無いとうまくいかない。普及啓発への疑問。コミュニケーションプロジェクトの戦略性が必要。生態学的、経済的に持続可能な社会は同意。生態系サービスと生物多様性を一体で議論すべき。
*ヴァレリー氏(世界銀行)
value(価値)とprice(お金で買える)の違いを理解する必要がある。
*日本
SBSTTAが科学的、技術的に集中すべきということに賛成。科学的ツールやモニタリングデータの改善に貢献。生物多様性モニタリングと予測についてアジアを支援を継続している。AP-BON構築への貢献。生物多様性日本ファンドなどを通じての支援、EBSAやCHMのワークショップ。情報やツールの不足を実施の遅い理由にしてはいけない。(その通り!)SATOYAMAイニシアティブは、伝統的知識と科学的知識の融合に取り組んでおり、各国の参考になるだろう。
戦略Aは最も重要な課題である。他の目標の達成に影響を及ぼす。生物多様性への普及を行動に変えることの重要性を指摘したい。国連生物多様性日本委員会が2011年9月に設立されて、日本政府やNGOがパートナーシップを組んで実施している。UNDB-J優良事例を認定する仕組みや5アクションの取り組みは各国も参考になる。
ターゲット4について、グローバルガイダンスを国内に置き換えていくことが大きな課題。企業によるボランタリーな取り組みが進んでいる。民間参画推進のガイドラインも作っている。
*フィンランド
ステートメントなので詳細は不明ですがNBSAPフォーラムというものがあって実施の状況を多様なセクターと議論しながら進めているらしい。(日本にも欲しい仕組みですね)補助金の改善については、生物多様性国家戦略で行動が決定され、財務省が音頭をとって進めているらしい。フィンランドの事例は結構日本の参考になるかもしれないですね。
*マーシャルアイランド(太平洋島嶼国)
先住民地域共同体の参加の重要性、資源の不足という課題と支援の必要性、実施に使える適切でタイミングのよい支援が必要であることを指摘。太平洋でもGEO-BONに同様のコーディネーションを期待したい。
* IIFB
普及啓発について更なるコーディネーションが必要。特に、先住民とのCEPAの関係が必要。ターゲット1の指標としてコミュニティーと政府とのコラボレーションを図るものができると良い。
*メキシコ
national education strategy for environmentというのをたてて大学、自治体、国、NGO、植物園などが協力して展示やレクチャーやいろんな取り組みをしている。生態系支払いもしているけれど、不十分と評価。生態系サービスを他のセクターに組み込むことができていない。IPBESとCBDの相乗効果をもっと図っていきたい。目標3の指標が無いことが残念。組織内のコーディネーションがもっと必要だろう。
*カナダ
ツールやガイダンス、手法は価値のあるものと理解。最も重要なのは愛知ターゲットそれ自身である。2020年カナダ目標を検討して、地域NGOや自治体の関心も高まっている。BIPやGEO-BONとも協働して欠けている指標を埋めていくべき。パイロットスタディーモデルを作っては。また、パイロットスタディーモデルを確率するべき。inspiring new generation by Nature を世界公園会議でプロモートしたい。 目標2に関して言うと、自治体の取り組みが重要。この目標も、国内目標を設定している。
*スイス
生物多様性国家戦略、グリーンエコノミー戦略、TEEBの枠組みによる国内生態系サービス評価事業などを展開中。インセンティブの改善に方法などについて各国と意見交換をしたい。消費と生産については多くの作業が必要(民間参画、OECDレポートなど)
(公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子