SBSTTA17レポート④-10月15日午後-
<戦略目標Cについてのレビュー> 15:00~18:00本会議
*キーノートスピーカー
EBSA(Ecologically and Biologically significant Area)に関する作業状況の報告です。重要海域の特定に関する取り組みです。70の基礎GISを重ねつつ、締約国が選出した専門家が専門的知見を加えながら重要海域を特定するという手法でワークショップを各地で実施。OBIS(Ocean Biogeographic Information System)や海底地形などなどのいくつもの情報を重ねながら実施します。
重要海域=海洋保護区という意味ではないというのがポイント。公海についても検証を行いました。次のステップは重要海域の危機や圧力、状況などを評価し、将来的な管理の優先度を評価すること。パイロット評価は進んでいることが報告されています。また、管理オプションなどの生態系に基づく管理(ecosystem based management)を検討する基礎となるだろうとのこと。
*パネリスト:ロクサーナ氏(ペルー)
保護地域の取り組みにギャップがあり、130の優先地域の取り組みや、民間による保護地域、海洋保護地域(浅海域だけでなく、100m深度のところもカバーする)の事例がある。
ペルーでは、海洋環境管理のために他分野からなる委員会を設立している。海洋生物のレッドリストの策定も実施。
*ジェーン・スマート氏(IUCN)
目標11と目標12の既存のツールを紹介。目標11の「生態学的重要な地域」をどう特定するか、そのための手法としてKey Biodiversity Area(KBA)という手法があります。しかし、鳥・植物・チョウチョのKBAがあり、統一したものをIUCNに依頼されている。来年の第6回世界公園会議で新しい統一基準を発表する予定。目標12について絶滅危惧種の絶滅を防ぐ、と減少している種の回復。これについてはIUCNのレッドリストが貢献している。レッドリストについては、(人々が活用するものを集中的に)植物なども進んでいる。
IUCNレッドリストは単なるリストではなく、行動をするための警告になる。we do have tools for action 「ツールが不十分というのは行動を起こさない理由にはなりません」
*CGFRA.FAOの食料農業に関する遺伝資源に関する委員会
動植物の遺伝的多様性に関するレポートを作っているとのこと。
http://www.fao.org/docrep/015/i2624e/i2624e00.pdf
遺伝的多様性に関する指標を作成されており、モニターされていることも報告されました。
*コロンビア
保護地域の管理効果に関する報告。IUCNの管理効果評価枠組みに基づき、7つの国が評価を実施しており、Green Listを策定する動きがIUCNにある。CBDでは保護地域の管理効果を2015年までに50%以上のサイトで評価する目標がある。
管理効果評価については保護地域管理基準というのをIUCNが持っているがその解釈もさらに深める必要がある.参加型評価や、情報システムの改善も必要。
*国不明
IUCNレッドリストの課題について。法的拘束力は無い(掲載されたから規制が発生する訳ではない)、国内のレッドリストと世界レベルのリストのつながり。レッドリストの作成について資金的支援や地域支援、境界をこえる種の保全への支援が欲しいとのこと。
*IIFBから
目標11の達成には、ILCが決定、管理に衡平に関わる必要がある。保護地域の設定、管理に自由で事前の十分な情報に基づく同意FPIC(Free prior informed consent)が重要。目標13の達成には、農業、特に、小規模農業や農家、共同体による日々の暮らしの中の取り組みが非常に重要なことがハッキリしている。FPICの重要性を強調。
*エチオピアからIUCNへの質問・回答
エチオピア⇒保護地域管理の向上にはまだまだギャップがあるが既存のツールでどんなことができるのか。
IUCN⇒レッドリストの法的性格あるいは、レッドリストをどう国が活用するかについては、各国の判断に委ねるもの。種の評価に関するキャパシティビルディングについてはオンラインツールも存在。保護地域のガバナンスやICCAなどで重要視している。
IUCN green listについて、保護地域管理のうまくいった場合はほめていくという取り組みになる、ポジティブな取り組み。
EBSAとKBAの補完的な関係性。EBSAワークショップの成功はさらにその前にSustainable Ocean Initiative のワークショップなども実施しており、特定と管理利用に関する議論を積み重ねたことによる。
<戦略目標Cへのステートメントパート>
(CBDアライアンスのコーディネーターに依頼され、CBD-COP10に向けて日本のNGOが事前や期間中にどんな準備活動を行ったかということを説明していたので、会議を少し抜けており途中からになります)
*日本
11月にアジア公園会議を開催して将来的な取り組みを今後議論し、COP12や世界公園会議で報告したい。EBSAの基準を用いて特に重要な海域を特定した。目標12については、種の保存法を改定し違法捕獲への対処を強化、また、効果的な絶滅危惧種の保全のための戦略を構築し、優先種の設定を検討中。遺伝的多様性についても日本の研究者が2015年に報告書を出すよう作業中。
*メキシコ
17%の保護地域化はできそう。ギャップ分析を実施したが、必要なのは持続可能な保護地域管理のための資源。目標12については、絶滅危惧種の保全のための法的枠組みや種の回復計画を持っている。目標13について、100を超える植物の品種(トウモロコシ)、先住民のライフスタイルの変化、旱魃などもあって保全することの難しさがあり、生息域内域外での保全活動を展開中。
*オーストラリア
コーラルトライアングルの支援、海洋保護区管理への支援、シードバンク事業。GBIOの成果は非常に重要、GBIOの提言をSBSTTAの決議に組み込むべき。
<夜のサイドイベント> 18:15~19:30
IPBES2014−2018の活動計画に関するサイドイベントに出席。4つの目標枠組みのもと15の成果を出すことをめざすとのこと。
http://www.ipbes.net/images/K1353240%20-%20IPBES-2-2%20-%20Advance.pdf
<Friends of chair会合> 19:30~
夜からは、Friends of chairの会合に参加しました。Friends of chairは、合意文書などが全体で議論するほど塾度が無い場合や、議事の進行そのものがまだ確としていない場合に開かれる会合という性格があるようです。正確な定義は不明。直訳で「議長の友」会合という名前の通り、進行訳の議長が今後どう進めれば良いかアドバイスをするという名目で立ち上げられるものです。
さて、7:30をすぎて、会合直前にサーバーにアップロードされたファイルをみんなでチェックしました。
Conclusionと名付けられた文書は、全般的評価、提言、戦略目標AとBの目標毎の評価の10ページからなる文書。提言は事務局長に対する内容だけで、COP12に提出する内容は入っていない状態です。
共同議長からは、全般的事項と提言部分を検証したら、戦略目標毎に分けて検証しようという提案。ところが、読み込むのに30分必要とか、文字にして提出する時間を作ってほしいとか意見が参加国から出ています。そもそもconclusionとはどういう性格のものかと言う質問もでて、なかなか実質的な議論にはいりません。
“SBSTTAのconclusion”というタイトルの文書の性質を巡って議論が集中してしまい、実質の話に進まず、1時間以上経過。共同議長がしびれきらして、早く中身を議論しようというのですが質問が集中。とりあえず10分休憩となり、そこでオブザーブを終了しました。
10月15日のレポートはここまでです。
※本レポートは、国際会議の報告者のノートを元に、ポイントをまとめたもので、国の発言内容などをすべて網羅したものではありません。
公財)日本自然保護協会 道家哲平 生物多様性わかものネットワーク 村西真梨子