SBSTTA17レポート⑨-決議紹介 新規の緊急課題とIPBES
決議解説
<新規の緊急課題>
今回は、オタワ河川研究所が提起した、ネオニコチノイド(浸透性農薬、日本の農業で利用される農薬の主流をなしている成分といわれている)の生物多様性への影響(特に、花粉媒介を行う生物(ポリネーター、ハチなど)への影響)について、SBSTTAの新規の緊急課題として扱うかどうかということが焦点となりました。
SBSTTA決議では、新規の緊急課題の基準に合致することを留意しつつ、COPに対しては、SBSTTAの新規の緊急課題に組み入れ無いことを提案し、むしろ、農業生物多様性のプログラムやポリネーネータの保全と持続可能な利用に関する国際イニシアティブで取り組みうることを指摘することとしました。
また、ネオニコチノイドの影響に関しては、IPBESで検討中の作業計画内にある「ポリネーターと食料生産に関するテーマ別緊急アセスメント」に深く関わるということから、この課題への注意をIPBESに促し、その後の対応(作業計画は、12月の第2回IPBES総会で採択される)をCOP12に報告することを事務局長とSBSTTA議長(IPBES他分野専門パネルの一員であるため)に要請する決議をまとめました。
SBSTTAの新規の緊急課題の基準は、生物多様性に影響を与えているか、可能性がある課題ということなので、ネオニコチノイドは、「生物多様性には全く関係ない」という言説については、CBDの科学技術助言補助機関は認めないという立場を取ったことになります。
<IPBES>
(Intergovernmental Science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)
IPBESについては、現在第2回IPBES総会(2013年12月トルコで開催)にて中期作業計画(2014-2018)を採択するべく内容の精査をしているところです。
SBSTTA決議では、COP11でIPBESに要請した内容に十分答える作業計画が検討されていることを確認し、今後も生物多様性条約事務局とSBSTTA議長(IPBESの多分野専門家パネルの一員)に連携を求めました。
また、IPBESでは「生物多様性と生態系サービスに関する全地球評価(グローバルアセスメント)」を2018年に発行する計画案となっており、その報告書と生物多様性条約で作ってきた「地球規模生物多様性概況」(最新版は、COP10で発行された第3版。現在、COP12での愛知ターゲット中間レビューに向けて第4版を準備中)との関係性をどう整理するかが話題になりました。
結論としては、GBO4の作業終了後、次のGBOの焦点と作成プロセスをどうするか検討し、COP12後のSBSTTAで検証の上COP13に報告し、そこで、次のGBOの内容手続について検討するという案をまとめました。
SBSTTAでの発言を考えてみると、愛知ターゲットの実施(達成に向けた取り組みがどのように進んでいるか)を中心にGBOをまとめ、世界レベル各国レベルでの実施がもたらした生物多様性・生態系サービスの変化をIPBESでまとめるという役割分担をするような方向性が濃厚と思います。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平