WGRI 1日目午後 資源動員戦略についての意見表明
資源動員戦略に関するハイレベルパネルの議長であるカルロス・マニュアル・ロドリゲス(CIの副会長であり、コスタリカの元環境大臣)さんによる議論経過の報告が行われていました。
「パネルディスカッションでは、愛知ターゲット達成は多くの恵みをもたらし、経済的な視点から見ても雇用創出などの効果があり、気候変動の緩和やレジリエンスの確保にも貢献するというメッセージ。また、
食料安全保障などの保険としての価値があることを指摘。発表の元になったのはこちらの資料(英語)
愛知ターゲットの20の目標の実施には、1500億ドルから4400億ドル必要だけど、それは世界のGDPの1%にも満たない。そしてこの投資によって守られる生物多様性や生態系サービスの金銭的、非金銭的価値は、投資を大きく上回る。
ハイレベルパネルには、政府、国際機関、NGO、ILCなどが参加し、資源動員の手法(生態系支払い、構造改革、民間資金活用、生物多様性オフセット)などや、革新的資金メカニズムと呼ばれるものの内容の検証を行ったほか、その際の留意点(safeguards)などを議論したとのこと。
HLPの議論では、ABSについても議論したが、これも生物多様性保全のための資金増の一種だが、実行まで時間がかかる。民間資金活用、構造改革(生物多様性悪影響を及ぼす補助金の修正)なども。漁業に関する補助金の80%(=350億ドル)が過剰漁獲につながっているという指摘もある。
上記、ハイレベルパネルについての報告がなされた後各国からの意見表明が行われました。
午後の議題には、ターゲットを含む資源動員戦略、補助金改善のための手法や手続、革新的資金メカニズムの課題等といった複数の視点が盛りだくさんにもられています。
タイ
生物多様性に悪影響を及ぼす補助金の改善や撤廃に関するキャパビルやマイルストーンを実施するための支援が必要
ブラジル
資源動員に関するレポートを提出したのは20数カ国で、多くが先進国。途上国が機能的に動くための能力等のギャップが存在。実態を十分に把握していないという意味で、COP11でまとまったターゲットは不十分であると考える。資金目標のターゲットは野心的なレベルで行うべきで、20の目標達成のために1500億ドル-4400億ドルというハイレベルパネルの数字が重要な数字。多くの国が資源動員に関する現状レポートを提出することが重要で、そこからギャップ分析を行うべき。
スイス
資源動員についての情報が集まって来たことに感謝。COPでとるべきステップについてしぼることができるが、手法の明確化や方法などの検討が必要で、まだ目標設定には早いと感じる。ピョンチャンロードマップに組み込むことは重要。
日本
事務局の文書を読み、提案について内容の明確化や、中身をより精査する機会が必要と考える
エクアドル
資源動員に取り組むための国内能力(ナショナルキャパシティー)の強化が重要。
ノルウェー
革新的資金メカニズムを、biodiversity financing mechanismと呼びたい。気候変動適用資金も生物多様性に活用できる。現状の資源動員2倍という目標は、ベースとして重要。ODAはすべてが生物多様性のためのといえないが、愛知ターゲットに貢献しうる
* 用語解説 地球環境ファリティー
地球環境基金のようなもので、国連気候変動枠組条約、生物多様性条約等の実行支援のために主に先進国が費用を出すものでおよそ4年間で、40億ドル規模のお金が動く。COP決議によって、「こういうことにお金を使ってほしい」というメッセージを出せる貴重な資金メカニズムです。
EU:実質的な、資金・人材・技術の側面で、ハイデラバードの約束が守られるようにEUとして取り組んでいく。国際協力資金の改善に関するパリ宣言なども参考に、多様な財源による向上を目指す。15%程度しか、資源動員に関するレポートを出していない理由を精査する必要。民間資金の把握が難しいため、企業の協力呼びかけについて明確化するべき。革新的資金メカニズムの有効活用もしていくべき(safeguardなどをしっかり検討する形で)。
議論の背景にあるCOP11での決定内容については、COP11の報告を参照。COP11の目標設定は、仮決定に近いもので、最終目標決定に向けた議論が求められている。
南アフリカ
ブラジルの意欲的目標を設定すべきという意見を支持。
カナダ
資源動員戦略に関する議論がどうピョンチャンロードマップに反映されるのか知りたい。議論にもっと市民社会や先住民の参加を入れるべき
ペルー
革新的資金メカニズムについて、用語を明確化したいという国もありました。スペイン語では、offsetとcompensateが同じ言葉らしいです。
以上、いくつもの国が意見を述べました。その他地球環境ファシリティーに関する意見(資金メカニズム)出しも終わり、レセプションに移り本日の会合は終了となりました。
((公財)日本自然保護協会 道家哲平)