【準備号3】WGRI-4の議題解説
1. 国別目標の設置と生物多様性国家戦略及び行動計画の更新を含む条約実施における進捗のレビュー
決議X/2のパラ3では、締約国会議は、締約国及びその他の政府に対して生物多様性戦略計画2011-2020の実施を求めました。その中でも下記のことが強調されています。
(a) 可能な全てのレベルにおける参加を確保すること
(b) 世界目標を達成するために世界的な取組みに貢献する視点を持ちながら、国内及び地域(regional)ターゲットを立案すること
(c) 生物多様性国家戦略及び行動計画を評価し、適宜更新及び改定すること
(d) 計画過程及び国内の開発政策及び戦略に生物多様性の目標を組み込むための効果的な文書として改定及び更新された国内生物多様性戦略計画及び行動計画を利用すること。
本作業部会は、事務局長によるとりまとめをベースにし、実施や検討過程の評価を求めており、適宜、締約国会議に向けて提案書(recommendations)を作ることになっています。それに加えて、締約国会議は、条約と生物多様性戦略計画2011-2020の実施の下で、各国の関与を高めるための仕組みの開発の可能性や必要性も検討することになっています。
2. 締約国への能力開発支援の提供、CEPAの促進、クリアリングハウスメカニズムと科学技術協力の強化に関する進捗のレビュー
決議X/2のパラ6において、締約国会議は、生物多様性戦略計画2011-2020の実施における国と先住民族及び地域共同体を支援するために、能力開発活動と効果的な知識の共有の必要性を強調しました。そして、締約国会議は、多年度作業計画(決議X/9)において、条約と資源動員、能力開発、ステイクホルダーの関与、CEPA及びクリアリングハウスメカニズムの強化を含む戦略計画の実施における締約国を手助けするための支援を提供などを検討することを決めました。
本作業部会は、生物多様性戦略計画2011-2020の実施における国と先住民族及び地域共同体の支援や、その進捗を評価することが期待されています。そして、締約国会議に事務局長によるノート(UNEP/CBD/WG-RI/4/3 and Add. 1-2)を含む提案書(案)をベースとして、強化と支援に関する提案を作成します。
3. Rio+20へのメッセージ
COP10の決議X/9において、Rio+20に対し、持続可能な開発のための生物多様性の役割に関するメッセージを、WGRI-4で作成することを決めています。本作業部会では、メッセージの作成と共に、RIO+20へ送る過程を検討します。
4. 生物多様性と貧困削減及び開発の統合
決議X/6において、締約国会議は持続可能な開発と人類の福祉に貢献し、生物多様性条約と生物多様性戦略計画2011-2020の実施を強調するための手段として貧困撲滅戦略計画と開発過程に条約の3つの目的を主流化させるための能力改善の緊急的な必要性を認識しました。そこで締約国会議は、貧困削減と開発のための生物多様性に関する専門家会合を設置しました。締約国会議において、設置された専門家会合からWGRI-4に対して、技術的なインプットを提供することをもとめました。インドで開催されたその専門家会合の報告書(UNEP/CBD/WG-RI/4/5)を、作業部会にて検討することになります。
5. 資源動員戦略の実施と経済的ニーズとギャップの評価に関する進捗
決議IX/11 Bにおいて、締約国を支援するために、生物多様性のための国際的な資金の流れと国内資金に則り、資源動員戦略を採択しました。決議X/3 Bのパラ3では、WGRI-4にその戦略の実施状況の評価を検討することをリクエストしました。その戦略に従って、締約国会議は第11回締約国会議でその戦略の以下の目標に焦点をあてることを期待されています。
目標2: 資源利用のための国内能力を強化し、国内経済的資源を条約の3つの目的のために、動員すること
目標5: 生物多様性とその関連する生態系サービスを条約の作業プログラムとミレニアム開発目標の関係性を含む優先順位と開発協力計画において、主流化すること
目標7. 資源動員に支援において、遺伝資源へのアクセスと利益配分イニシアチブと仕組みの実施を強調すること。
目標6: 資源動員及び利用のために能力を高め、必要な南北協力の補完として、南々協力を促進すること
目標8: 条約の3つの目的の達成を支援において、資源動員のための世界的な関与を強調すること
締約国会議は、作業部会による検討のために、締約国と関連する機関に資源動員戦略の実施に関する視点、情報及び経験を提出するように求めました。決議X/3 Aのパラ8 (i)では、締約国会議は第11回締約国会議で目標を採択することを決めました。
また、COP10において、堅固なベースラインが特定され、承認されたということ、及び効果的な報告枠組みが採択されたということを確認しました。そして、これは愛知ターゲット第20目標「少なくとも2020年までに、2011年から2020年までの戦略計画の効果的実施のための、全ての資金源からの、また資金動員戦略における統合、合意されたプロセスに基づく資金資源動員が、現在のレベルから顕著に増加させる。この目標は、締約国により策定、報告される資源のニーズアセスメントによって変更される必要がある」へ向けた進展に必要です。
同決議のパラ7では、資源動員戦略の実施をモニタリングするための指標を設定し、その決議のパラ8において、これらの指標を使いながら、第11回締約国会議の前に実行に移されるためのプロセス・手順を決めました。これに伴い、事務局長は締約国が活用する報告枠組み(暫定)と指標に関する方法論的なガイダンスを準備し、締約国に関連する情報を求めました。
事務局長は、資源動員戦略の実施を評価する文書(UNEP/CBD/WG-RI/4/6)を準備し、決議X/3のパラ7、8に従って、資金の必要性のギャップ評価の進捗状況をまとめました。また、報告枠組み(暫定)は、補足文書((UNEP/CBD/WG-RI/4/6/Add.1))にて提供しています。さらに、目標2、5、7、6、8も実施に関する情報は参考資料(Information Document)において、提供されています。
それに加え、コロンビア / カリで開催された非公式対話セミナー”生物多様性のための資金を拡大しよう!(Scaling Up Finance for Biodiversity)”と英国とインド政府によって、愛知ターゲットを満たす暫定的な費用を評価するために設置されたパネルの2つの報告書が参考資料(Information Document)として提供される予定です。
6. 資金メカニズム:GEF-5の評価とGEF-6の必要性
省略
7. 他の条約、国際機関、イニシアチブとの協力と利害関係者の関与
(ア) 他の条約との協力
生物多様性連絡(リエゾン)グループの作業と、条約間の相乗効果、その他の条約、国際機関及びイニシアチブとの協力に関して、事務局が文書をとりまとめました。作業部会は、その事務局長による文書を検討し、COP11への提案書を作成します。
(イ) ビジネスとの協働
今回の作業部会は第11回締約国会議(COP11)に、2012年以降どうやって進めていくのかということに対する提案書を作成します。生物多様性の配慮に関する基準や認証、それらが生物多様性の保全や持続可能な利用の推進にふさわしいといえるための基本的な要件、既存の認証等の制度におけるギャップやその対処方法を検討します。
8. 生物多様性と開発に関する南々協力のための多数年行動計画
決議X/23において、締約国会議は生物多様性技術イニシアチブ(Biodiversity Technology Initiative)と貧困削減と開発に生物多様性を統合するための能力開発(Capacity-building)のための枠組みとのシナジーに考慮しながら、COP11で検討をするための計画の検証を本作業部会に求めています。本作業部会では、専門家会合で更新され、事務局が準備したが計画の更新版(UNEP/CBD/WG RI/4/10)を元に検討を行います。
(文責 (公財)日本自然保護協会 IUCN-J事務局担当 道家哲平)