愛知ターゲット中間評価を受けて、次のステップの議論始まる
COP12初日と二日目にかけて、第1作業部会では、第4版地球規模生物多様性概況(GB04)による発表を受けて、GBO4の成果をどう活かすか(議題11)?、愛知ターゲットの中間評価と次にどのようなアクションとるべきか(議題12)?、愛知ターゲット達成に向けて締約国等を支援するツールは何か(議題13)?、という3つの議題が話されました。
最初は議題11だけだったのですが、これら3つの議題は相互に関係があり、いつの間にか3つの議題それぞれに意見を出すという動きになりましたので、メモがやや混乱しています(締約国の発言が混乱しているので致し方ない)。
いずれの議題もWGRIという準備会合で一度は議論したのですが、議題13のうち、UNDBとCEPAは事務局長が用意した新しいテキストです。
そして、やや文脈が唐突でしたが、トルコがCOP14(2018年予定)の誘致の意向を表明しました。エジプト・トルコの二カ国が表明していることになります。
国の発言を羅列するだけではちょっと分かりにくいので、発言のポイントを下記にまとめます。
・ すべての国がGBO4の成果を歓迎(=真剣に受け止めるという意味)。
・ 一方で、社会経済的視点、先住民や市民の取組みからの評価をもっとした方がよいという意見もみられた
・ GBO4で提起されている主要な行動リスト(Key Potential Action)は非常に参考になるという意見と、決議での取り扱いについて意見を出したいという国が存在。目をひく意見として、ターゲットに優先度を付けるべきではない(等しく重要で、各国がその実情に応じた優先度の設定を行うべき)という意見もありました。
・ アフリカ諸国は、GBO4の成果を踏まえ、限りある時間の中で愛知ターゲットの達成を図るには、資源動員、科学協力、技術移転、能力開発(キャパシティデベロップメント)が必要という論を展開していました。
・ 日本が力を入れている普及啓発については、フィジー、コロンビア、ブルンディ、カナダなどこれといった発言国の傾向はないのですが、いろんな地域からその重要性の指摘や取組みの紹介が行われました。
参考までに、GBO4の結論を再掲します。
「愛知ターゲットは進捗はあるけれど、不十分、そして、この努力を2倍にしていかなければならない。多くの取組みがしかし、現状の流れを変えるものになっていないことを認識しなければならない。しかし、2050年ビジョンは「まだ達成可能」である」 http://bd20.jp/?p=4141
韓国政府:GBO4の成果を歓迎。韓国政府として色々な事例を提供し、貢献できたことを嬉しく思う。この成果はピョンチャンロードマップにも関わってくるものである。韓国はこれを韓国語に翻訳した。
カナダ・EU:報告書を歓迎。報告書のキーメッセージは各国言語に翻訳して広めていきたい。
日本:GBO4は愛知ターゲットの中間評価として重要なマテリアルであり、お金の面でも実質的な中身の面でも貢献し、日本語の翻訳版の出版を卿に合わせて日本でも行った。
トルコ:地球規模での生物多様性の課題は、愛知ターゲットだけでなく持続可能な開発目標にもつながる。生物多様性の損失が持つ社会的、経済的悪影響についてもっとハイライトされるべきだと思います。COP14の開催について誘致を宣言したい。
南アフリカ:GBO4により目標達成に更なる取組みが重要であることが明らかになった。愛知ターゲットを達成するためには実質的な資源の増加が重要だろう。
フィジー:フィジーでも取組みの2倍、資源の2倍に取り組んでいきたい。
コロンビア:GBO4の成果を歓迎。生物多様性と生態系の関係だけでなく、現実の中でどう行動するかというところも記載していることに注目すべきだろう。コミュニケーションの強化が、国際国内あらゆるところで重要だろう。
サウジアラビア:ホスト国に感謝。国際社会の一員として生物多様性の保全に重要な貢献をしていきたい。
コスタリカ:この愛知目標達成には、科学的な視点だけではなく、社会経済的な視点、先住民の取組みなども歓迎していきたい。
エチオピア:GBO4を歓迎。進展があり、希望があるが、更なる取組みの拡大が必要。効果的にGBO4が明らかにした取組みを実施するには、開発支援機関に国家戦略の改定などについて引き続きの支援を要請したい
グアテマラ:ホスト国に感謝。自国のように感じますがグアテマラより寒いです。先住民や地域共同体の取り組みに敬意をもっている。グアテマラでは、ABSの取組みを実施しており、伝統的知識ともバランスをとりながら実施。分類学に関する取組みも展開中
カメルーン:GB04についてアフリカグループとして発言。GBO4の作業に感謝。実施を加速するための行動や結論を認識し、継続的な生物多様性の損失を変える取組みの必要性を指摘。生物多様性の恵みの損失がつづていることに懸念。緊急の効果的な取組みを今後も続けていく必要があり、GBO4の成果は良い戦略的なエントリーポイント。資源動員、科学技術移転、キャパビルがトッププライオリティーといえる。
キューバ:愛知ターゲットの達成には社会変革が必要で、社会の消費生産、土地利用などあらゆる面で変えなければいけない。
ジョルダン:キャパシティビルディングとそのための資源動員の重要性は切り離せないという提案
南アフリカ:GBO4は実施に直接つながらないので、決議の文章の一部を修正したい。
GBIF:愛知ターゲットの19を進めるために、データのアクセスの推進や市民科学の活用、データのデジタル化、データ共有の文化の推進などにもっと投資が必要。
日本:愛知ターゲット達成のための主要な行動のリストが非常に重要と考える。その中で漁業に関する表現について修正を希望
アフリカグループ:key potential actionについて、緊急性と効果的な実施のために必要なものだが、それをなすための資源動員やキャパビルや技術移転とセットでないと現実的でない。国家レベルで取り組むべき事項のリストについて複数の修正希望の提案。
エクアドル:Key technological needを満たすためには、技術移転が必要。国家戦略の改定にあたってステークホルダーとのワークショップなども実施。基本的には歓迎
中国:生物多様性保全に貢献してきた。参加の推進なども。DPSIRモデルをつかった行動計画なども策定。目標に沿った指標も設定している。効果的な実施のためにもっと資源が必要である。アセスメントシステムやモニタリングシステムを開発している。修正案を文書で提出
ボリビア:追加的な枠組みが愛知ターゲットの実施に必要。green economyはマーケットベースの手法で容認できないため修正を提案したい。戦略計画を達成するために、条約20条、20条4項の規定が(資源動員)重要。目標の実施状況に対して、資源がどれだけ投じられているかを把握した方が良い。先住民と地域共同体の持続可能な利用についての貢献をハイライトするべき。付属書1について意見。NYで開かれる自然との共生に関する会議の成果をインプットしたい。先住民が持つ土地への権利について訴えたい。持続可能な消費と生産パターンについて、先住民や地域社会の取組み、自然保護と暮らしと文化がホーリスティックな形でつながっているあり方を支持したい。非マーケットベースの手法の推進。指標に関する専門家会合の役割についても、多様なビジョンからくる集合的な取組みに関する視点を入れたい。
メキシコ:GBO4を歓迎。愛知ターゲットの取組みの継続と強化を、国、地方、現場レベルといったあらゆるレベルで行っていく必要がある。他の条約との連携、特に、IPBESの地域評価は重要になっていく。ピョンチャンロードマップが重要。
ジョルダン:キャパビルの推進に関心。日本の長期的な協力と貢献に感謝
スイス:スイス国家行動計画にあたって、長い議論を多くのステークホルダーと公開で実施し、もうすぐまとまるところである。スイスはターゲットに優先度を付けるようなことは危険と考える。GBO4の成果をしかしちょっと違う表現で繰り返すのは不要。指標に関する専門家会議に、愛知ターゲット3について言及するよりはもっと全般的な表現にしたい。等いくつもの修正
?:愛知ターゲットは個々にバラバラに取り組むことはできない。資源動員についていくつもの課題が提示されているが、国レベルでの取り組み推進には国際的な支援が欠かせない。なければ2010年目標と同様の結果になる。
マレーシア:残り5年で目標全部に貢献できないということを懸念。キャパシティーと資源にアクセスできないと不可能。キャパビルと資源動員が重要。指標に関する専門家グループを支援。
フィジー:key potential actionについて少し修正。メインストリーミングの重要性はもっと強調されるべき。コミュニケーションの強化。戦略目標。海洋保護区の推進をコミュニティーのニーズを考えながら進めるべき。陸域だけでなく海洋も強化すべき。
フィジー:種の行動計画だけでなく、種の回復計画という言葉が必要
コスタリカ:NBSAPを作成中。その経験から、資源動員の重要性を痛感。また、NBSAPのフォローアップも重要である。
イェメン:実施のプロセスを、資源動員とともに進めなければならない。脆弱で、自然環境上重要な地域はいくつもあるが、資源の不足で保護地域のような形でできていない、資金、人的、技術的キャパシティビルディングや技術移転が必要
カナダ:指標に関する専門家会合は重要だけれど、その専門会議の使命は確実な成果を得るため絞り込んだほうがよい。社会・経済的視点の指標はCBDの領域を超えるので修正したい。
モルジブ:持続可能な生産や、気候変動に脆弱なサンゴ礁などの生態系保護はほとんどで実施されていない。指標専門家会合について修正を提案
シリア:GEFの資源が得られない。同じような条件の他の国は貰っているのに。。資源やキャパシティビルディングが必須。細かい修正を送ります
ノルウェー:GBO4について、詳細を議論する必要はなく、全文として採択する必要がある。他のセクターの関与が重要。GBO4は普及啓発にも使えるツール。
ブラジル:アマゾン地域での森林伐採速度を抑えたことがGBO4に記載。課題としては、予算がある。そこで、生物多様性を計算したレポートをまとめて、生物多様性の利益と投資のギャップを明らかに使用としている。国家戦略は2015年6月前に更新する予定。アマゾン地域での保護地域設定と管理向上事業が成果を上げている。決議案は基本的に同意だが、GEO-BON(地球規模生物多様性モニタリングネットワーク)に関する文に修正提案
ブルンディ:生物多様性国家戦略の普及啓発・コミュニケーション戦略が大事。生物多様性の効果的な実施という段階にあり、資源のうち、人的なあるいは組織的な能力の向上が重要。また、キープレイヤー間の理解が非常に大事。そのためにも資源動員が必要
タイ:GBO4のサマリーを翻訳し国民に伝えたいと思います。レポートの翻訳だけでなく、様々な仕方で成果を広く知ってもらう行動を決議に位置づけたい。効果的なモニタリングの重要性を強調したい
EU:クリアリングハウスメカニズムがこの文脈でも重要。付属書の2のタイトルだけ変えたい。
カンボジア:NBSAPとナショナルターゲットを打ち立てた。いくつかの優先度の高い事業・成果などをまとめた。保護地域システムの重要性や野生生物資源の重要性などを伝える取組みを実施。資源動員戦略を打ち立て、国家戦略実施のための資源を確保したい。
カンボジア:国家戦略の改定や質の向上にGEFやその実施機関に、GBO4で進展の遅いという目標への強いサポートを要請したい。
コロンビア:愛知ターゲット3やレジリエンスの指標などが非常に重要。議題13について、NBSAPの改定と国別レポートを作った。技術協力を水平にも世界−地域といった縦にも作り上げていきたい。自然や生き物の情報管理などについても知識が必要。
インド:NBSAPの改定がどのように愛知ターゲットの達成に関係するかをもっと明らかにした方が良い。NBSAPでは、インド独自の愛知ターゲットアイコンを作ったり、委員会を設けたりして行動を開始している。IPBESとも協働することが重要。CEPAについても小さなコメント。GBO4ではCEPAについての記述が少ない。COP11の生物多様性のバスや電車を走らせてます。
ベラルーシー:2014年に国家戦略を採択。多くのセミナーなどをCBD事務局の協力を得て実施したこともあって意識が高まっていった。パイロット国で、NBSAPの実施に伴う障害やその対策などを深く調べる調査をしてはどうか?
ガンビア:アフリカのポジションを踏襲。愛知ターゲット採択から4年経つのに、政策・社会等を変える取組みがないと達成しない。WWFと自然資源管理の事業を実施。結論としてそういうことを支援して欲しい。
マラウィ:愛知ターゲットの達成に貢献しているが、大きな課題は資源の不足。国家戦略の立案に多くの支援がなされたがその実施にもサポートが必要。
セネガル:資源は、愛知ターゲット達成のための資本となるもの。
ナイジェリア:キャパビル、革新的な資金、これまでとは違うオルタナティブな暮らし、の重要性。生物多様性は豊かだけれど、資源の限られた国の共通の課題。
カメルーン:国家レベルでの生物多様性関連条約との協働については、技術的な支援が欠かせない。UNDBのセレブレーションをして、メッセージを広める機会として実施してる。国レベルでの展開へのキャパビルの仕組みについてコメント。
トンガ太平洋地域として:この地域で多くのワークショップが開かれ事務局感謝、更なるキャパシティ向上のための仕組みが欲しい。地域政策や持続可能な開発などに生物多様性の取組みがもっと組み込まれていくことを強調。モニタリングと報告のシステムの重要性。
トンガ:太平洋地域で保護地域に関する地域制度が愛知ターゲットにのっとって生まれた。次の6年はエキサイティングな年になると思う。国家戦略や地域枠組みの活性にむけて協働を呼びかけていきたい。サイドイベントも紹介(道)
フィジー:NBSAPが、政府横断で、高い政策の位置づけで策定したこと、地域や先住民、企業、NGOなども巻き込んでできたことを紹介。国家戦略の実施、データの収集や解析の効果的な手法の追求が必要
ボリビア:CEPAについて。母なる地球(Mother Earth)の日などの承認されたことを想起してほしい。決議にこれを言及したい(前文と本文両方に)。生物多様性の日と母なる地球の日のコラボの日?というアイディア。
ギニー:エボラ出血熱などのパンデミックの問題について、ここで良いのか分からないけれど問題提起をしたい。SBSTTAで技術的な支援が欲しい。議長:持続可能な開発と生物多様性の議題の方がふさわしいかも、でも発言ありがとう。
韓国:科学技術協力・移転の強化について行動を。バイオブリッジという、技術提供国、技術を求める国とのマッチングを促進する仕組み。各国の科学機関などにも協力してもらって進めたい。
アフリカグループ:「必要な場合に」実施を加速するという表現の必要な場合には削除したい。技術移転は多様な手法でなされるべき。ベルギーのクリアリングハウスメカニズムへの支援の実績。クリアリングハウスメカニズムへの表彰のようなものが必要では?
日本:キャパビルに日本基金を通じて協力をしていきたい。CHMについてはもう少し行動を絞り込んだほうがよい。UNDBの提案国として、UNDB国内委員会を設立し、パートナーとの協働で多くの活動を展開し、MY行動宣言なども強調したい。
ニュージーランド:指標に関する専門委員会にIIFBの代表者が重要。GBIFの活用も。CHMを一つの決議にまとめたい。CEPAについて。国内委員会について、小さい国は グローバルコミュニケーションについては各国の事情に応じて適用可能なものにする必要がある
カナダ:2014年5月に新しい自然保護方針を作って、愛知ターゲット達成に貢献していく。キャパビルや科学協力、技術移転などでも貢献していきたい。持続可能な環境の推進のための世界大学ネットワークなども推進。CEPA 普及啓発をUNDBを通じて実施。国家戦略にて愛知ターゲット1の国内目標を設定。生物多様性を学校のカリキュラムにいれるといった目標。環境に関する普及啓発の状況についてカナダのCHMで共有。ボリビアの文章については詳細を見たい。
ウガンダ:キャパビルに関する記述、資源を多様なソースに求める言葉を入れ込んでいきたい
トーゴー:アフリカグループを支援。途上国は、資源動員や組織的な弱さもあって愛知ターゲットの達成につながっていかない。
FAO;FAOでは2013年に新しい戦略枠組みをつくり、愛知ターゲットの5、6、7、14について貢献することをめざしていく。森林資源に関する世界の状況に関する報告書なども作成。
ILC:この議題に先住民や女性のことが十分に書かれていない、また、ICCAなどのよい事例が十分に認識されていない。また完全な情報公開に基づく同意についても書き込むべき。ILCなどの参加も重要。保護地域のガバナンスでも先住民の権利がが認識されるべき。
WWF:GBO4とLiving planet reportの結論に大きな懸念。愛知ターゲットを組み込んだ国家戦略の改定が重要だけれど、改定のペースが遅いことに懸念を持っている。資源動員を国家戦略に入れていくことの重要性。WWFとしても協力していきたい
(公財)日本自然保護協会 道家哲平