持続可能な海洋に向けた日本のリーダーシップ

CBD-COP10でも議論され日本もかなり関わる形で立ち上げられた、持続可能な海イニシアティブ(Sustainable Ocean Initiative 略称 SOI ソイ)を紹介するサイドイベントに参加しました。

 

SOIイニシアティブのサイドイベント会場満杯の盛況でした。

 

環境省の方から開会挨拶

・日本は最大級の漁業国であり、漁業資源の輸入国であるため保全に務めていきたい。漁業者の役割を非常に重視しており、古くから組合を作って自主的な取組みをしながら漁獲量の規制や、漁業の手法をコントロールしてきた。海だけではなく土地の利用や管理の取組みもあった。

・最近、海洋保全戦略も作り上げた。

・SOI(Sustainable Ocean Initiative)イニシアティブで、いずれ共有の作業計画やキャパシティービルディングなどの促進に取組んでいきたい

*現在、SOIイニシアティブのウェブサイトはなし

 

フランス開会挨拶

・30%を海洋保護区に、ノーテークゾーンの15%に2020年までにしていくことをめざす。保全と漁業者が一緒に活動していきたい。

 

SOIイニシアティブの紹介

・海洋に関する目標は、愛知目標6、10、11である。サンゴ礁の27%が保護地域になっているが地域差が大きい。1.6%の領海がMPA、EEZの3.5%がMPA、沿岸域の7.2%が保護区になっている。大きな課題は、海洋保護区の質向上、途上国での取組み強化などだが、それ以上にたくさんの課題が存在する。キャパシティービルディングの種類やその内容も地域によって大きく異なる。

・SOIは、長期の能力開発を目的に立ち上げられた。COP10の決議でも、エコシステムアプローチや地域性に配慮したトレーニングやキャパシティビルディングが求められた。

・SOIでやるべきこととして議論されているのは、情報共有、パートナーシップの構築、科学と政策に関する双方向のコミュニケーション、科学的手法の実施や改善、モニタリングプロセスの確立支援など。

・SOIはパートナーシッププログラム。多くの参加を期待している。

・CBDの報告書61(http://www.cbd.int/doc/publications/cbd-ts-61-en.pdf)を参考にしてほしい。サトウミという概念に注目している。文化的アプローチ利用を賢明にしていく、自然のファンクションを戻す活動などをいれた石川での会合の大事な成果。

 

セーシェル大使の挨拶

・島嶼国にとって重要な目標。サンゴは海面レベルの上昇に際して、最初の防壁にもなる大事な生態系。持続可能な利用や保全を、持続可能な開発の中心/コアに、組み込みたい。

 

OSPARの事例

・「科学に基づいたモニタリング」、「漁業がもたらすプレッシャーの測定」、「情報共有」などに取組んでいる。

 

キューバからの報告

・集落レベルのキャパシティビルディングの事例で、GEFの小規模支援を受けた事業。

・676人、218世帯の小さな村、都市計画や良くない方法で底引き網漁などがなされ、衛生施設が不十分(陸域からの過剰栄養の流入)。生物多様性が豊かでカリビアフラミンゴ、マナティー、bottle neck dolphinなどの生息地。

・そこで、衛生施設の改善や雇用の創出、陸と海両方を意識した普及啓発、学校を巻き込んだ教育、農法の改善などに取組んでいる事例が報告された。

 

ノルウェーの専門家によるエコシステムアプローチの紹介

・生態学的知見に基づいて、人間が作り出したシステムを持続可能なやり方に管理すること

ステップとしては、生態系の定義→生態系の記述→生態学的目標の設定(sustainability の定義)→生態系の査定(Assess)→評価(Value)→管理(Management)をすることである

 

日本の事例紹介

・right based fisheriesという表現で日本の漁業を紹介。

・漁業に関する法体系や、沿岸と沖合で管理方法が異なることも紹介しつつ。漁協による管理の取組み(community collective)。漁業権が設定された海域は、生物多様性条約で議論している海洋保護区のイメージにかなり近いのではないかと紹介。

 

カリブ地域の事例

・300の海洋保護区(海洋環境の10%をカバー)があるが、6%しか効果的なものがない。ネットワークもまだできておらず、38の国が入り交じるため非常に複雑。

・カルタヘナ条約というもので保全手法を実施。Caribian MPA Management Network(CaMPAM)というのを作って、海洋保護区の評価やトレーニングワークショップの実施、人々をつなぐ活動、専門家化合、普及啓発などを実施している。

・優先的な活動案としては、漁業者とMPAの教訓(地域漁業者に排他的漁業権が与えられる)や事例の共有、メンターシッププログラム、小規模助成金(管理計画策定のための)などがある。

あわせて、IUCN生態系管理委員会 Fisheries Expert Groupの活動紹介されました。

 報告者 (財)日本自然保護協会 IUCN-J担当 道家哲平