民間参画(最終文章)の紹介

 日本の民間参画パートナーシップのような動き(英語では、business and biodiversity initiative)が、先進国(カナダ、EU、ノルウェー)中心ですが起きていることが報告されました。他方途上国の比較的NGOと共同してくれるフィリピン、ガーナ、エチオピアは企業が生物多様性に悪影響を与えている(与えてきた)ことを認識して、特に先住民や地域共同体などが、抑圧されないような配慮が必要であるとともに、戦略計画だけではなく、名古屋議定書についても企業の果たす役割を指摘しようという修正が相次いだ議題でした。

 以下の文章は、L文書をもとにまとめています

<決議案の紹介>

WGRIの合意として(WGRI終了後から効力を発揮)

国、広域、世界レベルで企業と生物多様性イニシアティブが現状どのような展開を見せているのか把握し、COP11までにまとめることを条約事務局に指示しました。

COPへの決議案として(COP11決議後に効力を発揮)

 前文(preamble)という議論の前提となる基礎認識を示すパラグラフが、15段落もあります。「経団連自然保護協議会がおこなった、経団連生物多様性宣言と行動指針の改定に注目し」という文書も入っています。ここで注目は、最初のパラグラフで、企業の参画は、生物多様性条約の3つの目的を「考慮する」という表現と「責任を持つ」という表現とで折り合いがつかずにカギカッコが付きました。企業の役割をどう記述するかは、非常に重要な問題となっているようです。

 本文(Operating Paragraph)では、締約国に対して、企業活動の中に、生物多様性や生態系サービスの価値を組み込むように促進することや、政府調達政策(procurement policy)において生物多様性を配慮することを奨励する文章をまとめました。

 企業に対しては、
 ①愛知目標達成のための行動を継続して取ること
 ②個々の企業分野がもつ生物多様性への影響や依存度、保全に貢献できる機会、
  生物多様性にまつわる企業リスクを分析すること
 ③持続可能な消費や生産のための手法、生物多様性の効果的な保障を組み込んだ自主基準や
  認証制度の活用といった条約の目的を尊重した企業方針の採用
 ④生物多様性の保全や持続可能な利用に沿った投資
 ⑤政府や他の関係者との企業活動に関する対話
  を行うよう要請する文章をまとめました。

 生物多様性条約事務局に対しては、企業と政府や他の関係者との対話の促進や、企業の優良事例をグローバルパートナーシップに関するウェブサイトや、ニュースレター、専門ワークショップなどを通じてまとめること、企業が生物多様性や持続可能な開発の課題に対応するよう生物多様性の損失に関する要因などの普及啓発を支えることを指示する文章をまとめました。

報告者 (財)日本自然保護協会 道家哲平