海洋3議題 (最終文書)の紹介

 SBSTTA16では海洋についてかなり白熱した議論が行なわれました。一部合意できなかった部分もありますが、海洋沿岸生態系の保全や持続可能な利用について、生物多様性条約がどう前にステップを刻んでいくかがまとめられました。COP11にて大きく変更される可能性もありえますが、ご紹介します。どうしても専門的な報告になっていまいますがお許しください。

重要海域(EBSA)について

UNEP/CBD/SBSTTA/16/L.13 より適宜抜粋しました。

 

<COP11の決議案として>(COP11で協議し、採択後に効力を発揮)

 4カ所で行なわれたワークショップの報告書をSBSTTA報告書として付属書にまとめつつ、その報告書の取り扱いについてはCOPの決議であることを確認。SBSTTA案として「承認するendorse」にカギカッコ(合意されていないことを意味する)をつけてまとめました。また、この報告書を国連総会に提出するように事務局に要請する文章をまとめました。
 報告書およびこのような重要海域(EBSA)の記述に関する作業は今後も改善する必要があるという意見がありつつ、そのような重要な場所の「特定」「保全や持続可能な利用の方法など」を議論するのはCBDではなく、国連総会特別作業部会や国連海洋法条約(UNCLOS)の役割であることを再三強調する文章になっています。
 重要海域のリスト・範囲(単なる名前のリストではなく、地域情報なども分かるものをrepositoryというようです)・情報共有システムとして、ウェブサイト(http://ebsa.cbd.int/)もできていますが、こういう事情もあって何もデータが乗っかっていない状態です。
 こういうところに情報を載せていくための科学者のトレーニングなどを含めたキャパシティービルディングも事務局に要請することになりました。
 EBSA記述に関する社会・文化的基準については、EBSA特定の際に、伝統的知識を含めて検証することが重要ということが確認されましたが、これについては具体的な事例についてCOP12に向け進捗レポートをまとめようという案となっています。

<SBSTTAの結論>(SBSTTA後から効力を発揮)

 今後の手続き的なものとして、EBSA記述のワークショップ(COP10決議では全海域で実施することになっている)を開いた場合、SBSTTAで検討した上で、COPにSBSTTAのレポートとして提出すること(つまり、これからCOP11までに行なわれるワークショップの結論は、1年後?のSBSTTAで検討するまで、その取り扱いが待たれることになり、かつ、承認enorseはCOP12まで待つ)、EBSA記述ワークショップが行なわれていない海域を優先的に実施し各国の参加を呼びかけること、大西洋東北海域のワークショップの結果に関しては(EUなどがGIS情報の違いなどで懸念を示してた)修正の上、COP11への報告書に組込むことを了承しました。

海洋沿岸への人為的な悪影響への対処

UNEP/CBD/SBSTTA/16/L.16より適宜抜粋しました

<持続可能な漁業>

 漁業管理団体(漁業組合も入ります)が、生物多様性への影響に対処する役割を持つべき(最初はcould持ちうるという表現。一歩強い表現)とし、キャパシティビルディングなどを通じて、エコシステムアプローチの実施が必要としました。その上で、生物多様性関連団体と漁業団体の建設的な協力を奨励し、生物多様性が漁業管理団体の仕事の一つであることを確保するよう奨励(invite)するという案となっています。

<サンゴ礁の白化>

 サンゴ礁生態系の管理者が認識すべきこととして、サンゴ礁生態系が多様なストレスで脆弱であることや、気候変動や、直接的な影響だけではなく二次的な影響も含めてそのリスクに、前もった(proactive)対処を計画すること、社会ー生態学的システムとしてサンゴ礁を管理すること、適応戦略を作ることとし、事務局長に対して、サンゴ礁に対する気候変動の影響への懸念などを地域、準地域のキャパシティービルディングに入れることを指示する文書をまとめました。
あわせて、条約事務局に対して、サンゴ礁白化に関する活動計画の改訂版の案を作成し、COP12の前のSBSTTAで検証することを指示する文書をまとめました

<海中騒音について(Underwater noise)>

 海中騒音が、短期且つ長期で負の影響を持つ可能性があり、かつ、重大な影響を持ちうることに留意し、締約国や他の機関に対し、海中騒音の研究を促進すること、この課題を関係者に普及すること、海中騒音の重大な負の影響を最小化するための手段をとること、指標の開発や、海中騒音のモニタリング枠組みを模索し、進展をCOP12の前のSBSTTAに報告することとしました。あわせて、条約事務局に専門家ワークショップを実施することを指示する文書をまとめました。

<海洋酸化の影響のモニターや評価のための専門家レビュー>

 条約事務局に対して、UNESCO機関等と協力し、古海洋学も情報も含めた統合分析報告書を作り、COP12の前のSBSTTAのまえに手に入るようにすること、UNFCCC事務局に送付することを指示する文書を作りました。

<洋上漂流物(marine debris)の影響への対処について>

 条約事務局に対し、各国、関係機関への洋上漂流物の影響に関する情報要請、それらの情報の編集統合と専門家ワークショップへの反映、洋上漂流物の重大な影響の防止や緩和に関する実践的なガイダンスを準備するためのワークショップの開催、上記活動のレポートをCOP12前のSBSTTAに提出することなどを要請する文書を作りました。

海洋空間計画と自発的環境影響評価ガイドラインに関して

UNEP/CBD/SBSTTA/16/L.16 より適宜抜粋しました。

<自発的環境影響評価ガイドライン>

 自発的ガイドラインに関する文章全体にブラケット(合意されていない)がかかっていますが、ボランタリーガイドラインの留意(元は採択)と、活用、今後の改善のための情報提供、活用のためのキャパシティービルディングが含まれています。

<海洋空間計画>

 事務局に対して、a)ウェブベースの情報共有システム、b)海洋空間計画に関する情報や経験の編集の継続、c)海洋空間計画の適用や実践的ガイダンスの提供するための専門家ワークショップの開催を指示、また、そのワークショップで、既存のガイダンスやツールキットの検討、ギャップの特定、ギャップを埋めるための提案の作成、必要に応じて、実践的ガイドラインの準備を行なうこと。d)ガイダンスやツールキットの作成、e)海洋空間計画に関する普及啓発の素材の配布、f)トレーニングワークショップの実施を指示する文書をまとめました。
報告 (財)日本自然保護協会 道家哲平