生物多様性と健康をテーマにしたサイドイベント
生物多様性と健康をテーマにしたサイドイベント「FOSTERING SYNERGIES BETWEEN BIODIVERSITY AND HUMAN HEALTH: TOWARDS THE POST 2015 DEVELOPMENT AGENDA」にでました。
この課題は、やはり、愛知県名古屋市で開催されたCOP10で提起され、COP11でその重要性を確認し、生物多様性条約が多様な機関と協働して始まった事業Biodiversity for food and nutrition projectの内容を紹介するものでした。
DIVERSITASからの基本コンセプトの説明
− 生物多様性と健康のつながりでいうと、水や食料、病気の緩和や抑制など様々なつながりが分かっている。病気は、生物多様性にとって大きな影響。アイアイや両生類(ツボカビ)、ポリネーターの一部が絶滅危機にあるのも病気という説がある。
− 家畜も含めた疾病の拡大による被害は、年々大きくなっていく。生物多様性の損失と、疾病の拡大の原因は一緒(効率化のための、均質化)。生物多様性と健康のつながりについて、共通のアプローチで進めていく必要があることを強調しました。
− 南アジアでは、One Health Alliance(ワン・ヘルス・アライアンス)というグループが構築されつつあって、疾病の大流行の恐れを監視する取組みがあったり、生物多様性条約事務局では、健康と生物多様性に関するテクニカルレポートのレビューが進行中であることが紹介されました。
− 食料と栄養のための生物多様性プロジェクト(Biodiversity for food and nutrition projectの直訳)は、地球環境ファシリティー(GEF)がサポートする事業。生物多様性保全を食料や栄養、暮らしの文脈に組み込むという目的で2012年から2017年までの5年間の事業。ブラジルやトルコ、モルジブ、ケニア。生物多様性と健康の領域について科学的に証明することとそれを政策や、普及啓発につなげる事業です。
− 農業生物多様性と食(栄養)の質の研究。各国の食の体系を調べ、それの生物多様性(食べ物の多様性や。健全な自然への依存度)を調べる。スリランカでは、個々の食べ物になる動植物に注目するのではなく、ランドスケープがもたらす価値を明らかにする予定です。
− アフリカの伝統的なフルーツのビタミン含有量を調べたりすることで、伝統的な食や知識の有効性なども明らかにしたり、ブラジルでは、国家戦略の改定のなかで、個々の目標を達成するために、どんな政策やアクションをするかがマップ化されているがそのなかにもこの事業は入っているそうです。
− 普及啓発については、ウェブサイトだけでなく、展示やフードフェスティバルなども開催していることが紹介されました。
− 生物多様性は、病気の抑制などの生態系サービスを共有してくれるもので、欠かせません。持続可能な消費について、政府も非常に関心が高いく、栄養と人の健康と農業生産、環境の健全性と経済生産は密接に結びついている。
スカイプでのプレゼン参加という新しいやりかた、先住民とその健康や食の体系、それを支える文化や慣習の体系などについて発表されました。
− 先住民と健康について。精神や文化的な豊かさも含めて全体的な視点で健康を捉えていることや、保存食、伝統食とか、その作り方(狩猟で捕獲した動物を捌く方法が、母から子どもに伝えられる教育体系も含めて)などが全体的な(ホーリステックな形で)存在することが紹介されました。
− マーケットフードと伝統的な食とのバランスを見たり、どれだけの種類の生き物を食べているかなどの調査がはっぴょうされていました。(カナダのグウィッチ族は50種ぐらいを食料としていて、タイのカレン族は387種ぐらいを食べ物に使っている、など)
− 食べているものと家畜化されたものと野生生物のバランスなども研究し、多くの伝統的な食に関する知識があり、それらの知識が危機的状況にあり、文書化が必要なことと、先住民の文化や食や健全性を保ち改善するために、食を科学的に記述し共有すること、健康促進のためのプラットフォーム、地域主体のプログラム、などが重要とまとめられました。
プラジル政府の発表では、2006年に、食料安全保障委員会が、生物多様性の保全や持続可能な利用を扱うような法改正が行ったことが紹介。
環境省は多様な省庁が会話し、協働事業をすすめるための事務局みたいな役割を演じているらしい。ブラジルで食べ物として利用されている固有種のリストと、その経済的価値などを明らかにする事業を展開中。
食料安全保障の観点で、重要な種の基準を作る事業や、国立の学校で給食かな、で提供して勉強したり、伝統的な食べ物が大規模マーケットの食べ物に負けないよう、最低価格保証制度を導入した事例が紹介されました。アグロエコロジー(有機農業)をすすめる事業。メインストリーミング事業など他の多彩な事業を紹介してもらいました。
国家全体で、固有種・品種による有機農業を進めているそうです。
ブラウリオ事務局長は
「食料安全保障は非常に重要で、食料生産システムのレジリエンス、農業セクターへの補助金、食用植物、動物品種の減少などの多様な側面がある。UNは生物多様性を、食料生産、安全保障、食料生産環境のレジリエンスを高めるものであると認識しつつ、課題もある。そういう伝統的食品が普通のマーケットに出回るか。いくつもの小さいパイロットプロジェクトだけでは、大きく変わらないので。
ブラジルの企業では、労働者に対する責任が非常に高い。教育や余暇だけでなく、食べ物も提供。次の課題は、こういう事業にどう企業が関わっていくかを見せていくこと。合成生物学によってできた製品などをどう扱うか?
都市と生物多様性という事業では、都市はもっと緑の多い空間にならなければならないというメッセージを出しているが、環境はほとんど人を引きつけるニュースになっていない。水や、都市の犯罪の多さと緑の多さとが反比例する研究もでている。
そういうつながりをもっと注目させていく必要がある。SDGsについてNYの議論は、沢山書いてある目標を「減らそうとする」動きはでてくるだろうし、そのなかで、生物多様性への注目が落とされないようにしないといけない。
生物多様性と健康、食料、栄養、精神的文化的豊かさのつながりを、もっと目に見える形でつながっていることを示していかなければならない」とイベントをまとめました。
(公財)日本自然保護協会 道家哲平