SBSTTAの3日目 外来種

コンタクトグループの様子

SBSTTA3日目の午前中は、外来種の話です。すぐに意見表明に入るのではなく、二つのプレゼンテーションが行われました。

CABI 制作の“The Green Invasion – Destroying Livelihoods in Africa”というビデオの後、CABIの国際開発局長のDr. Dennis Rangi氏によるアフリカの外来種の事例を紹介です。

アフリカでは、外来種問題は、生態学的な影響というだけではなく、社会経済学的な悪影響が大きいようです。繁殖力のつよい草本によって、
農地での雑草駆除の手間が非常に増えて生産性が落ちたり、子どもや女性の農作業の手間が数倍に跳ね上がったり。サボテンの繁殖により、誤ってそれを食べた家畜が胃を傷つけて死亡したり、家畜の食べる牧草がサボテンによって追いやられてしまったり、とげによる事故も頻出。それらの外来種の導入は、アグロフォレストリーとか自然再生活動によってもたらされたことが報告されました。手っ取り早く育つ植物を植えようという、ショートタームの利益・関心によって、長期的被害が起きている。 結論として、生物学的コントロールが、長期的に見て、非常に効果的であるというメッセージでした。

次のプレゼンは、IUCNの外来種専門家ワーキンググループのDr. Piero Genovesi委員長。

どのように外来種の侵入をコントロールするかを考えると、侵入経路(Pathway)の特定と管理が重要。外来種についての研究が非常に進み、科学者が政策決定を支援できるようになってきたことを報告。

− 侵入経路は、人間活動によるものや、商業利用によるものなのかなど幅広いが、侵入経路についてもかなり研究が進み、分類群毎の傾向もみ得てきたが、一方、侵入経路の傾向もかわる(欧州のほ乳類は、かつて運輸によるものから、ペットのリリースによる事例が増えてきた)。

− ISSG(Invasive Alien Species Specialist Group)では、2段階での侵入経路リストを作って統一のデータベースを作っている。侵入経路について、「共通の言葉」を作ることによって理解と、よりはやい対応につなげていく。

− また、それによって、世界レベルの侵入経路と、国毎の侵入経路の違いなどを比較でき、より、素早い理解と、予想される侵入パターンから予防的処置をとるなどができる。もう少しで検討作業が終わり、外来種に対する「優先度のハッキリした」活動を提起できるようになる。

− 侵入経路の分類方法、COPでの外来種管理のための主要な侵入経路の発表などができる。多くのサポートをしてくれた研究者や国に感謝。

会議の資料一つ目はこちら。

 もう一つの資料 

資料の中には、日本が2005年に外来種法を策定したことで、は虫類の輸入やそのための生き餌の国際取引の減少のデータが入っています。生物多様性条約事務局にいる志村さん活躍中ですね。

ざっくりいうと、ペット、観賞用水生生物、庭園用生物(terrarium species)などの導入の際のるリスク管理についてと、外来種について今後対策を進めていくべき課題(=将来計画)はなにかという議論です。

 

 各国の意見

ネットの調子が悪くメモをほとんどとれていません。

タイ:ガイダンスの採択を歓迎。ガイダンスについては、野生生物や木材の輸入と輸出に関して、違法取引、未報告取引のカバーについて不十分。この件で条約事務局にガイダンスがより包括的になるように作業する提案。

タイ:保護地域や生物多様性上重要地域における外来種対策や外来種根絶の取組みの重要性を強調。愛知目標の9と11に貢献

日本:すでに、国レベルでコントロールを実施。2005年の外来種ほうや1995年の植物防疫法とも協調。昨年、外来種法を改定し、外来種の対象を拡大。生物多様性のホットスポットである沖縄でのマングースの対策で大きな成果を上げている。SPSガイドラインを採用する決議案を基本的に支持。国家戦略として、外来種の行動計画について、ガイドラインも作った。その中では普及啓発の重要性も指摘している。緊急に対処するべき外来種リストを作成。

マレーシア:野生生物を改定し、外来種対策も組み込んだ。外来種の国家政策のなかで、研究能力開発、根絶、特定、普及啓発等の4つの基本方針を設定。GTI(分類学イニシアティブ)のキャパビルの成果も期待。

マレーシア:侵入経路について、バラストや観光についてこれから懸念が高まるだろう。

ノルウェー:ガイダンスを歓迎するが、取組みの強化が必要。非侵略的外来種の生き餌(ミミズ)について、ノルウェーでは、規制の対象となっているので、修正を提案するか、意見表明をしたい。ノルウェーの生物多様性法では、外来種を扱っており、外来種リスクとともに対策のための法的行動もセットで指定している。その他の観点で意見を提出。

スイス:ペットによる、病気やその拡大について、非常に大きな懸念があり、ガイドラインの修正を考えている。将来行動計画に関して、ベストマネジメントだけでなく、どうして失敗したのか(バッドマネジメント)という学習もしたい。侵入経路にインフラ(道路など)などを入れたい。

ベルギー:SPSガイドを歓迎、だけれど、GBO4をみるとステップアップが必要。国毎に対策をとるようしているが、これは、国際企業や市民団体などにも考慮してもらいたい。外来種対策についてIPBESの活動との調整をした方が良い。

ベラルーシー:外来種対策についての制度を既に構築。外来種対策への取り組みや研究への投資なども実施。農地に繁殖したもので根絶させようとしているものに行動計画を立てた。これについて、研究の能力開発などにつながる地域ワークショップの開催を提案したい。

モルジブ:SPSガイドを歓迎。違法取引。 外来種対策への資金が不十分。

セントキッツネービス?(カリブ海の国):ライオンフィッシュの問題(観賞用の魚)など数種の外来種問題に懸念。国家戦略で対応。外来種対策への外来種対策計画や実施への資金提供を呼びかけたい

エジプト:スエズ運河が地中海に影響を及ぼすという記述に反対。各国と協同して外来種対策は進めたい。

イタリア:この課題への取組みへのレベルを挙げるのが大事。EUの外来種のレギュレーションにも影響を与えるもの。これからまとまるEUのレギュレーションにもふれておきたい。GSPC(世界植物保全戦略)とも協働。保護地域における外来種対策も重要。

ギリシャ:外来種の拡大は生物多様性への大きな影響。EUの外来種の規制が、2014年にまとまり,2015年に発効する見込み。経路特定のなかなか難しい。既存の外来種だけではなく、外来種が及ぼしうる悪影響もリストが必要ではないか。普及啓発の重要性GIISPだけでなく、地域レベルの外来種ネットワークの活動が重要。

カナダ:侵入経路の特定が重要。連邦法で、コントロールをしようとしているが、商業利用やその際のコンテナへの付着などが経路ではないか。外来種に関する小冊子があり非常に参考になり。SPSガイドについて、基本歓迎であるが、例えば、コンテナが植物防疫だけを強調しているので修正が必要

カナダ:外来種の管理が課題。カナダ食料庁?も食料安全保障の関係から取り組んでいる。international bracode lifeの活動を支持。外来種のパートナーシップに先住民を入れることも推奨したい。

スーダン:外来種対策や、生物学的根絶のためキャンペーンなども実施。国家戦略でも、外来種の国内計画を立てて実践とキャパビルを実施。普及の足りない部分もある。

カンボディア:生物多様性上大きな問題。森林の劣化や森林の生産性にも悪影響。地域協働体に悪影響。国際的な支援がこの問題の対処には全然足りない。アメニティのために、観賞用水生生物や陸生生物の輸入が多く、ガイダンスを支持。強いメッセージが出されるよう期待。

アンティグアバーブーダ:外来種の管理を多様な主体と協働中であるが、小島嶼国では、リスクが高いのに、侵入経路の特定や管理が非常に困難。持続可能か外来種の管理について支援が欲しい。リスクアセスメントの手法について。外来種の導入についてSPSPガイドラインしか無いのは、困難。植物保全(防疫)の国際基準。OIEのガイドは健康という視点で作られてガイドなので、不十分と考える。

チリ:リスク管理。植物保全についてリスク分析が大事。愛知ターゲット9についてセーフガード設定を。

UK:IUCNの分類方法を既に使っており、有効性を強調。各国の国家戦略では、まだ外来種への対応が不十分であるように思い、いま更新している国にもっと外来種に取り組むよう提案したい。有用なガイドラインについてもう少し指摘したい。ホワイトリスティング(安全なものだけ輸入を許可するという、許可が必要な悪いやつをリストするのの逆)方式は、必ずしも、すべての国に採用できるのではないので、記述を消した方が良い。普及啓発が外来種にとって効果的であった

インドネシア:外来種は大きな問題。SPSガイドを歓迎。ガイドは外来種対策にとって重要なツールとなる。国家戦略をつくっており、その中で外来種の規制に関する取組みに優先度を与えている。292の種が、林業や農業で使われている。国及び地域レベルで外来種の普及が必要。外来種にかんするキャパビルを要請

ブラジル:リスクアセスメントについて関連のあるガイダンスを紹介したい。情報共有のための文書をしたい。GBO4をみると、多くの外来種の侵入が増えている。外来種の戦略的コントロールが重要。優先的に対処する種の設定が重要。外来種がもたらす経済被害などの、経済的情報があるとよい。IPBESの成果を活用することが、他のセクターを説得するのに、有用。外来種に関して、その侵入と拡大の経路などを包括的なレポートとして作り、示すことが有効だった。

ニュージーランド:ガイダンスを柔軟な枠組みとして歓迎。多くのガイダンスができているので、それらのツールや使い方を案内するツールがあるとよい。外来種のもたらす悪影響について、金銭的、非金銭的な評価があるとよい。

中国:ガイドラインを歓迎、実施にあたって、キャパビルが重要。外来種に関する戦略について賛成。外来種のコントロールに力を入れている。WTOやFAOなどとの協働を深め、二国間、多国間の協働を推進。