生物多様性戦略計画2011-2020の実施に関係する科学的技術的事項(議題3)

議題3の戦略計画の実施に関する科学技術的課題の中から、初日午前(開会式後)は、3.1のGBO4の成果の検証と、主流化に関する議論を行ないました。議論というよりは意見表明なのですが、主流化に関する考え方、GBO4の成果を受けて何が重要と考えているかなどが見えてくると良いと思います。

議題3.1に関係する資料はこちら(英語)

議題3.1GBO4の成果と主流化について各国からの発言

*以下は、個人的に理解できた範囲での発言であり、会議中の発言であるため聞き逃しとうあるかもしれない情報である点留意してください。

メキシコ:中米国(GRULAC)代表として事務局に感謝。主流化の重要性を強調したい。愛知ターゲット実施のために2倍の努力が必要。途上国への資源も2倍にする必要がある。中央政府と、地方政府と関係者が、政治的意思と能力をもって第1次産業や観光などに取り組む必要
主流化に関するワークショップを行ない、主流化のためのガイダンスを開発する予定。そしてこれはSDGSの達成にも貢献。SBSTTA20やSBIで検討されるべき文書を提出予定。主流化について第6次国別報告書に入れていくことが重要だろう。COP13の準備が順調に進めている。関連する文章修正は文書で提出します

コンゴ:アフリカ代表として発言。まず主流化についてコメント:主流化は、持続可能な開発や貧困撲滅の文脈でも重要、経済的社会的な生物多様性・生態系サービスの重要性も指摘。復元とレジリエンスについて、生態系復元のための行動計画の採択が必要。
生態系復元に関する行動計画をまとめるための提案を行ないたい。第5次国別報告書や国家戦略の改定が進み、生態系復元が進んでいることから、リオ3条約との連携も視野に、生態系復元のための行動計画を作るのが相応しいタイミングだろう。
持続可能な開発目標にも、6と14と15に生態系復元に関する目標が立てられていることも提案の理由の一つ。生態系復元の行動計画はCOP13での採択をめざしたい。
提案の趣旨は、SBSTTA20に対して、COP13での採択を視野に、生態系復元のための行動計画案の作成を事務局に要請する、というもの。作成には関係する諸機関の協力やコメントも求めたい

日本:主流化の取り組みを歓迎。2011−2020は国連生物多様性の10年に宣言されており、日本委員会を組織して、協力相互協力を進めている。あらゆる利害関係者の参加を促進している。各委員の取り組みも評価され、残り5年のロードマップも作成中
仙台防災枠組みについては、ECO-DRRのためのキャパビルのための支援を始めている。農業について、ネガティブな要素ばかり議論されていて、肯定的な面、農業が生物多様性によい影響を及ぼすことが軽視されている。ポジティブな側面も文書に反映したい。
第6次国別報告書の報告内容に、主流化やグローバルストラテジーについての実施内容を組み込みたい

ベルギー:資料作成の遅れについて懸念。クロスセクターの主流化に向けてメキシコ政府の取り組みを歓迎。愛知ターゲット達成を環境マネジメントグループを通じて組み込むことを求めたい

スイス:主流化に関する過去の議論があり、今回の議論がそれを補完することを期待。事務局にFAOとの協働や、主流化をガバナンスレベルで組み込むことを求めたい。主流化に関する取り組みを第6次国別報告書にいれること。主流化に関するガイダンスの開発の重要性

フィンランド:CEPAは実施について非常に重要。生物多様性の保全に関する倫理的な取り組み、写真や写真家も協力を求めたい。ユースや子どもの視点も大事。GBO5では、ユースや子どもなどの視点も SDGS5にも関係。ジェンダーも重要 ハワイでの世界自然保護会議が開かれるのでGBO4の重要性を伝えていきたい。NBSAPのモニタリングや、生態系サービスのモニタリング、自然資本やTEEBなどの連携が重要。GBO4の普及啓発と多国間協定との連携。ワークショップの成果は共有して欲しい。主流化に関するネットワークや主流化の事例共有が重要

ノルウェー:生物多様性の保全を進めるためには、主流化をフォーカスエリアにすることを歓迎。他のUN団体と連携して生物多様性の議論をすることが非常に重要。UNハイレベルポリティカルフォーラムがSDGSのフォローアップすることになっている。生物多様性がそのフォーラムのテーマの一つとなることを希望している。
FAOの5原則を歓迎。主流化については、コモンノレッジが重要でIPBESや自然資本会計も重要なツールになる。セクターエンゲージについてはもう少しパッケージ化した情報が必要だろう。

南アフリカ:コンゴを支持。第6次国別報告書には充実した情報を。GBO4の行動リストは重要であるが、どのようにそれを実現するかという遵守能力の問題。それがないと実施することができない。生物多様性条約と環境関連条約との連携は進展しているという認識。ITPGRの関与も食料安全保障の観点では重要だろう。第6次国別報告書のためのキークエスチョンは十分な整理が必要。

フランス:GBO4の成果をNBSAPに反映させていくべき。主流化は、戦略目標にも関わる。FAOや世界観光機関やユネスコなどとの連携。主流化に関するガイドラインや優良事例やネットワークなどの重要性。SDGSの達成との関係でも重要。

ドイツ:農業については生物多様性の損失を示しているが、ビルディングや土地利用計画も入れたい。主流化に関してのキーパートナーとの連携をSDGSとの関連も含めて進めたい

セルビア:CEE地域。地域での戦略とともに各国でのNBSAP作成が進んでいる。そのなかで主流化が進められている。科学技術的能力のキャパビルについて強調したい。

インド:NBSAPと生物多様性目標の設定が、重要な主流化の手法の一つとなる。実施のための適切な支援が必要。BIOFINに参加し、NBSAPの実施のためのコスト評価なども実施し、ギャップ分析なども行なった。こういう取り組みを通じて、学ぶものが多い。第6次国別報告書もこの主流化の議論に反映させた方が良い。保全と持続可能な利用を超えて議論をする必要がある。

グアテマラ:like-minded mega bdiodiversityを代表して。今の取り組みでは不十分であるというGBO4の結論。生産の現場で生物多様性の取り組みを行なうことを賛成。社会経済学的支援を生物多様性保全に組み込むことは重要。メキシコでの生物多様性主流化のワークショップに期待。その成果をSBSTTA20やSBIに提出して検討させてほしい

フィリピン:資源動員についての取り組みが適切に実施されるべき。生態系支払いが非常に重要なツールで、それを仕組みとして作り上げることの重要性を指摘したい。

UK:メキシコの取り組み歓迎。SDGSが主流化の動力となる。主流化の10トップTIPsが役立つ。主流化のためのツールが各種あり、それを活用することが重要。主流化は、生物多様性の情報へのアクセスが重要。既存のツールやオープンデータアクセスを奨励する文章を入れたい

セネガル:コンゴをサポート。生態系の劣化が加速しているので生態系復元に関する行動計画が緊急な行動として重要。同時に、そのためのキャパビルワークショップを実施して欲しい。

スウェーデン:生態系サービスの考慮。主流化は重要。nature based solution to climate changeなどを進めるべき。ベルギーの支持。SDGSが主流化の動力になることを支持 他の条約との連携についても同意

コロンビア:エネルギーやマイニング分野でも行動が必要。より具体的なセクターエンゲージメントの方法について考える必要がある。ハーモナイゼーションについては、水資源管理や空間管理計画で良い事例がある。NBSAPは全体的な視点で生物多様性の保全を進めるツールとなるべき。将来のレポート 保護地域と地域共同体の生産地域との関係性の作り方。水資源に関する生態系支払いの仕組み。

中国:GBO4は愛知ターゲット達成まで遠い距離にいることを教えてくれている。そのため主流化の取り組みは重要。SDGSは多くの指標を持っている。中国のNBSAPは、様々な計画に生物多様性を組み込む取り組みがなされており、生物多様性保全のための国内委員会を持っている。生物多様性を貧困撲滅や農業の取り組みなども実施。TEEBイニシアティブにも参加。これらの取り組みのために途上国への資金提供が重要。

ベラルース:経済セクターの主流化は重要で、国家戦略を通じて実施したい。メキシコのワークショップは効果的な手法を打ち立てるのに有用であることを期待

パキスタン:地球工学や構成生物学、遺伝仕組み変えなどもCBDとは離れたところで議論されているのではないか。GSPCについての言及が消えた

ボリビア:市民社会化のための様々な取り組みを実施。重要な追加的取り組み、先住民や地域共同体の貢献の認識が重要。先住民地域共同体の参加に関する事項をガイダンス等に組み込むことの重要性。

オランダ:クロスセクターへの主流化が重要。ワークショップを歓迎。成果をSBIに反映。ベルギーを支持。

スーダン:実施のための資源の重要性。

東ティモール:主流化のためのドライバー。生物多様性の損失のドライバーなどについて言及すべき

IIFB:先住民地域共同体の参加について言及されていることを歓迎。主流化の推進に参加する意向。NGOが参加型戦略計画に関わっているが、先住民の参加をNBSAPや地域での取り組みにしっかり確保することが重要。先住民の参加枠を拡大して欲しい。生物多様性だけでなく、社会経済学的側面を組み込むこと、伝統的知識や自然資源の管理に対する全体的な視点も組み込んで欲しい。先住民や自然資源管理への貢献が十分に反映されていないので、先住民に関する新しいパラグラフを組み込みたい。コミュニケーションプロダクツについて、IIFBによる先住民地域の活動についても考慮して欲しい。

先住民に関する国連常設フォーラム:様々なガバナンスへの先住民の参加が国連先住民の権利宣言でもうたわれている。伝統的知識に関する指標の考慮。国連機関に対して環境の危機や生物多様性の損失に取り組むことを呼びかける。

FAO:5原則が持続可能な農業が生物多様性にどのように関わるかをまとめているので参照して欲しい。農業が生物多様性に影響を及ぼしていることも認識し、生物多様性に依存していることも認識しており、CBDや関連機関との連携を進めていきたい。農業、水産業、林業の分野で協力を高めていきたい。

IUCN:戦略計画と持続可能な開発目標とのシナジーが重要であることを強調したい。メキシコに向けてWCCは重要な役割を果たす。GBO5は何が不足していたかをしっかり理解するべき。生物多様性の損失要因に取り組むことの重要性。SBSTTA期間中に主流化に関するツールを開発し、紹介する予定。

グローバルフォレストコアリション:小規模農業など重要性。ジェンダーメインストリーミングの重要性。補助金の愛知ターゲット3について議論が少ないことに懸念を表明。transforming worldに向けた義務が締約国にある。補助金やインセンティブの議論に踏み込むことが重要。

GYBN:補助金についての取り組みを無視してはいけない。愛知ターゲットをSDGSと関係づける。フィンランドを同意するけれど、さらに進んで、ユースとしてグラスルーツの取り組みに積極的に参加し、情報の拡散に務め、各国の実施のパートナーとなっていきたい。韓国政府とCBD事務局とも協働でユースボイスという事業で広げていきたい。

 

残りの議題についての意見

3.2 科学的技術的ニーズ

国際的な団体との連携を歓迎する意見がありつつ、IPBESやFUTURE EARTHなどですすめている取り組みとの重複を回避すべきという意見も。生態学的補償(オフセット?)の仕組みや種の保存に関する条約としての作業プログラムがないことを問題視する意見。IUCNの保護地域管理効果評価の仕組みへの好意的な意見などがでました。社会科学やその一つのターゲットである態度変容(behavior change)については期待が非常に高いように感じます。

3.3 政策評価ツールについて

新しいものを作るというよりは既存のものを活用する。そのための情報共有と提供の役割を事務局に期待する声が大きいように感じました。

3.4 生物多様性戦略計画の指標

他の条約やSDGSの指標作成(2016年3月に合意予定)の動きとの連携。途上国からは能力要請の機会提供について大きな需要があることが表明された。NBSAPを作る際の国内指標を作るときの難しさや、モニタリング体制の構築、データ収集と公開に関する課題共有、追加的指標よりも指標の効果的活用や、各国での対応能力の拡充への需要。

指標について追加的な検証が必要という意見と、主要なものが出そろっているので新しい指標作りに予算をさくと既存の指標につながっているモニタリングが滞るという懸念がありました。

(公財)日本自然保護協会国際担当・IUCN-J事務局長 道家哲平