生物多様性条約事務局を訪問しました

環境省から生物多様性条約事務局に出向している野田さんにご協力いただき生物多様性条約事務局の方へのヒアリングを行いました。

 海洋・沿岸プログラム

Jihyun Leeさん(韓国のかた)からは、海洋沿岸のプログラムについて話を聞きました。

生物多様性条約の海洋プログラムとしては、科学的調査に関する情報の収集と集約に力を入れているとのことです。大きくは二つのことに力を入れているそうです。

生態学上または生物多様性上重要な海洋地域(Ecologically or biologically Significant marine Area(EBSAエブサ)の特定。海洋に関する科学的助言を与えることがCBDの役割というCOPの決定のもと、COP9で基準が採択された(あわせてCOP9では、Global Ocean Biodiversity Initiative :GOBI)。EBSAをどのように管理するのかということについては国連総会の管轄となっている。

COP8で採択された環境影響評価に関する自発的ガイドライン(Voluntary Guideline for Environment Impact Assessment)の海洋沿岸に特化した「指針」を現在専門家に回覧しており、COP11での採択を目指している。

アンドレ氏(自治体と生物多様性)

地方自治体と生物多様性

Andre Mader (ケープタウンから来たICLEIからの出向。若い方でした)さんからは、地方自治体の生物多様性地域戦略が注目を集めているという話を伺いました。

*  条約ではCity and Biodiversityという表現がされます。ここでいうCity(都市)というのは、ここでは国の下にある行政組織いわゆる地方自治体を指す。都市と聞くと都会(urban)と田舎(rural)という区分を想像しやすく誤解されやすいのだが、プログラムの対象はsub-national(日本の都道府県が相当する)やlocal city(日本の市町村に相当する)となる。以下の報告において使われる「都市」も、地方自治体とほぼ同義です。

地方自治体と生物多様性は、比較的新しい課題。自治体による生物多様性の取組み推進が2006年から国際的に進めてられてきたが、自治体の生物多様性の取組み推進には、国の施策による支援が必要ということもあり、COP9やCOP10の決議に至っています。

アンドレさんとしては、地方自治体の生物多様性戦略が非常に大事であるとそうです。自治体ならば国とは違って、すぐに行動に移せるというメリットがあり、たった一人の自治体職員のやる気で地域を大きく変えるという事例が世界にたくさんあるそうです。

愛知ターゲットチーム

生物多様性国家戦略

吉仲さん(環境省からの出向で、生物多様性日本基金の運用に携わっている), David Cooper, David Duthieさんらに話を聞きました。

生物多様性国家戦略は約150の国が策定し、50の国が改定(第二次戦略)している。生物多様性国家戦略については、地球環境ファシリティー(GEF: Global Environment Facility)第5次計画から途上国が策定する際の補助金がでることとなっています。

そのため、生物多様性日本基金(Japan Biodiversity Fund)によるワークショップやレクチャーを使って、どのように改定するか、愛知ターゲットを組込んだ改定はどのように考えていくか、GEFへの申請方法の教授など、その動きを加速させるというのが当面の目標だそうです。

COP11において各国から愛知ターゲットへの対応状況を報告することになっており、出来るだけ多くの国が報告できるように支援していきたい。 日本基金によるワークショップは、ほぼ全ての地域ワークショップを終えた状態で、これから第2回目の地域ワークショップを進めていく予定です。

ABSを国家戦略に位置づけて実施することは、条約事務局としても今後の課題となっているそうです。(生物多様性条約第6条では、生物多様性国家戦略は保全と持続可能な利用に関する戦略を作るとされてきた。COP9の決議で、ABSも国家戦略の対象とするよう決まったが、肝心のABS議定書(名古屋議定書)が出来るまで様子見というのが各国の状況であった)。

*本ブログ記事は、ヒアリング内容の一部を掲載しました。

報告者 道家哲平 日本自然保護協会