生物多様性条約第15回科学技術助言補助機関会合報告(生態学的復元)
科学技術助言補助機関会合では、幾つかのテーマにわたって締約国間の検討を行い、合意事項とりわけ、次の締約国会議で何を決めるべきかをまとめます(COP決議への提言とよびますReccomendation to COP)。幾つかの大きな決議について紹介をしていきます。テーマの概要については、こちらを参照
<生態学的復元に関する決議案の紹介>
COP11の決議に先立ち、条約事務局の方に準備作業(initial work)として下記のことを指示しました。
1、政府や他の機関で作られている実践的な指針について情報を集めること、
2、多様な主体(政策決定者、復元に関係する機関や先住民)を利用者に想定し、実践指針の編集を行なうこと、
3、良い事例悪い事例も含めて特性生態系毎に関係するツールや教訓などに関する情報を編集すること、
4、構成生物学などの新しい技術に関する情報をまとめる、
5、主要な用語に関する定義や内容の整理などです。
6、締約国には、AHTEGが必要がどうか、COP11までに検討しておく
という提案が出来ました。
COP11での検討事項については、
加盟国に対して、愛知ターゲット14、15だけではなく、改定植物保全戦略の目標4と8(生態学的復元に関連する)にも、しっかり取組むこと、
加盟国や関係諸機関に対して、生態学的復元の実施を進めるために、①e-learningプログラムの提供や②ケーススタディ、優良事例、生態学的復元事業を評価するための手法などについての情報の編集、③地域トレーニングワークショップの支援、④生態学的復元が及ぼす経済的、社会的、生態学的影響および生態系の劣化がもたらす悪影響を伝えるためのコミュニケーションプログラムの開発と実施、などの検討を求めること
事務局長に対して、①地域トレーニングや専門家会合を開くことや、②生態学的復元に関する実施ツールや実践ガイダンスを開発すること、③生態学的復元に関する包括的なウェブサイトを作ること、④過去の復元に関する決議をまとめること、⑤他の条約等で行なわれている復元に関する諸決議、トレーニングツールをまとめたTEMATEAに「生態学的復元」の項を作ること、⑥国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、国連砂漠化対処条約(UNCCD)、ラムサール条約などの多国間条約との共同する機会を見つけること、などを求めること
資金提供機関に対して、資金的な協力を求めること
などが主要なコンテンツになりそうです。四日目午前の全体会合で文案が検討されたものが、最終文書にまとまると思います。
追記:ジオエンジニアリング(地球工学)と生態学的復元に関する情報収集が文案に入っていたのですが、政府間協議で削除することとなりました。
報告 道家哲平 日本自然保護協会