第15回科学技術助言補助機関(SBSTTA-15)~報告0日目~

先週の第7回8条j項とその関連する条項に関する作業部会に引き続き、今週は、第15回科学技術助言補助機関(SBSTTA-15)が開催されます。今週は、その会合の報告などをしてまいります。

2010年10月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議で採択された決議に基づき、2012年にインド・ハイドラバードで開催される第11回締約国会議までに2度の科学技術助言補助機関(Subsidiary Body on Scientific, Technical and Technological Advice ;以下、SBSTTA)がそれぞれ1週間ずつ開催されることになりました。SBSTTAは科学技術助言補助機関として締約国会議に向けて、決議(案)を作成することが、役割となっています。また、2012年4月30日からのSBSTTA-16終了後に第4回の条約の実施を評価するための作業部会(WGRI-4)が開催されます。今回のSBSTTA-15は、2回ある内の1回に相当します。なお、COP(Conference of Party)とSBSTTA / WG(Working Group;作業部会)などの関係は、EICネットで特集が組まれていた「もっと身近に!生物多様性(第2回)(http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu070816.html)」 をご確認下さい。

今回の会合では、

①2011年から2020年の生物多様性戦略計画(愛知ターゲット):技術的な解説と指標の改定、

②生態系回復を支援する方法と手段、

③地球規模分類学イニシアチブのための包括的な能力構築戦略(案)、

④侵略的外来生物:ペットなどとして導入された侵略的外来種に関する国際的な規準(International Standard)におけるギャップに対応するための方法と手段の提案、

⑤内陸水の生物多様性:水循環及びプログラムワークの実施における淡水資源における変化の影響、

⑥生物多様性の持続可能な利用:景観眺望における持続可能な利用の向上方法に関する報告と小規模な食糧及び所得代案のためのオプションを含む野生動物の肉に関する連絡グループの提案の改定、

⑦北極圏の生物多様性、⑧SBSTTAの効果性を向上させるための方法と手法、

⑨SBSTTA-16の議題(案)

といった計9個の議題に関して、5日間で議論・交渉をすることになっています。では、特に焦点を充てるべき議題について、いくつかピックアップして話し合われることを解説していきたいと思います。

まずは、①2011年から2020年の生物多様性戦略計画(愛知ターゲット):技術的な解説と指標の改定です。今回のSBSTTAでは、COP10の決議(X/2)に基づき、愛知ターゲットの技術的な解説、達成に向けたマイルストーン、目標の達成度合いを測るための指標について検討することになっています。また、上記と同様に、COP10の決議(X/9)に基づき、COP11で国、地域、地球規模レベルでの指標とマイルストーンの利用を含む2011年から2020年までの生物多様性のための戦略計画の実施のモニタリングのためのガイダンスとツールの開発を検討することになっている。議論のベースとなる資料は既に、条約事務局より準備がされており、 UNEP/CBD/SBSTTA/15/2 (目標を計測するための指標が附属書Ⅱ(AnnexⅡ)にあります)と UNEP/CBD/SBSTTA/15/3 (技術的な解説書、可能な柱となる指標及び2020年までのマイルストーン)となっており、この2つの文書を基本に、交渉が行われます。大きな論点としては、現在、検討中である生物多様性国家戦略にも関係しますが、1.2020年の達成に向けて、国又は地域(region)レベルで何年までに何を達成するべきなのか(マイルストーン)、2.愛知ターゲットの各目標に対してどのような共通認識・解釈が作られるかどうか、3.戦略計画の実施をモニタリングするために、どのような指標が作られるのか、の3点と思います。マイルストーンに関しては、2020年までに目指す目標が既にEUと途上国間で大きな隔たりがありますので、そのポイントがどうなるのか、大変気になる所です。また、2010年目標で最後まで作られなかったターゲットの指標がどうなるのか、気になる所でもあります(例えば、遺伝資源へのアクセスと利益配分)。

次に、④侵略的外来生物:ペットなどとして導入された侵略的外来種に関する国際的な規準(International Standard)におけるギャップに対応するための方法と手段の提案です。最近の国際的な基準がカバーしていない侵略的外来種の拡大を防ぎ、判明されたギャップに対応し、影響を防ぎ、そして、ペットなどとして導入された侵略的外来種に関連するリスクを最小限にするために国際的なレベルで利用されている適当な機関による可能な基準の開発に関する手段と方法を提案するために専門家会合が設置されました。今回のSBSTTAでは、SBSTTAの前に開催された専門家会合の報告書を検討することになっています(詳しくは、 UNEP/CBD/SBSTTA/15/6 をご覧下さい)。

 

これから、5日間、上記議題に関する議論、交渉を随時報告していきますので、ご関心のある方は是非、ご覧下さい。

 

報告 小林邦彦(IUCN日本委員会 アルバイト)