第7回8条j項とその関連する条項に関する作業部会~報告2日目~

2日目は、午前は全体会合で1日目に急遽取り扱うことになった10条(特にc項に着目) に関する新しい主要な要素、改定された複数年計画のタスク7、10、12、改定された複数年計画のタスク15の3つの決議案へのコメントを受けつけました。午後は、午前に取り扱った10条(特にc項に着目) に関する新しい主要な要素、改定された複数年計画のタスク7、10、12の実質的な言葉の交渉を行なうコンタクトグループが開催されました。

では、議題ごとに適宜、その概要と議論内容について触れていきたいと思います。

 

1.  10条(特にc項に着目) に関する新しい主要な要素

午前中の時間ではほとんど、コメントをすることなく(ただし、EUが、このテーマそのものが、愛知ターゲット14、18に貢献をすることを指摘したことや先住民族及び地域共同体が新たなタスクを提案するなど一部ありました)、午後にコンタクトグループを設立することになりました。コンタクトグループでは、タスクごとに1つ1つ、見ていきました。
特に、タスク3、4に関しては、各国、特に先進国から強い懸念が表明されていました。というのも、このガイドラインを作成するにあたって、まず、法律を作ることを支援するために、作ろうとしているもので、特に、タスク3、4がその法律に言及をしているタスクだったからです。また、ガイドラインで扱う問題・課題に関しても議論になりました。カナダは、持続可能な健康(Health)、土地利用、水などに関する扱うべきと提案をしている一方で、先住民族及び地域共同体からガバナンス(Governance)、気候変動の影響、ジェンダーを扱うことが提案されました。先住民族及び地域共同体による提案は、作業部会ルールに則って、1つ以上の締約国が賛成を表明しないと、その文言が挿入されないのですが、アフリカグループを代表して、エチオピアが賛成して、挿入されました(ただし、多くの国が懸念を表明していました)。

 

2.  改定された複数年計画のタスク7、10、12

タスク7、10、12 は主に、COP10で採択された遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する名古屋議定書(以下、名古屋議定書とする)の実行に関わってきます。タスク7は、公正かつ衡平な利益配分のためのガイドラインを開発することになっています。タスク10は、遺伝資源に関連する伝統的知識の違法な横領(unlawful appropriation) を予防(prevention)及びその報告のための基準やガイドラインの開発となっています。タスク12は、特別な制度(sui generis system)を含んだ8条j項と関連する条項の国内実施にも着目した幅広い範囲となっています。
ノルウェーなどいくつかの国が、名古屋議定書で残された課題を指摘しつつも、各国、概ねガイドラインを作成していくことに賛成をしていました。ただし、その作業過程に関して、先進国、途上国問わず、意見が割れていました。遺伝資源に関連する伝統的知識の保護に関しては、もちろんこの作業部会でも取り扱われているテーマですが、世界知的財産権機関(WIPO)でもテーマにしており、先進国(ノルウェー、EU、韓国、カナダ)や一部の途上国(メキシコ、エクアドルなど)が考慮する必要があることを指摘していました。

 

3.  改定された複数年計画のタスク15

タスク15は、生物多様性の伝統的知識の回復(recovery)を円滑にするために、生物多様性条約の第17条2項に従って、文化的な財産を含む情報の還元(repatriation)を円滑にするガイドラインを開発することを目的としています。そしてCOP11に向けて、タスク15を進展させるために、その付託条項(Terms of reference)( UNEP/CBD/WG8J/7/4/Add.1 )の採択を目指しています。
このタスクに関しては、まず、ブラジルがCOP10の決議にある附属書と現在の文書が異なることを指摘。結果、COP10決議の附属書を用いて、交渉をすることになりました。特に目立った対立などはなく、いくつかの国際機関、例えば、UNESCOなどと協力をして作業を進めていくことが指摘されていました。

報告 小林邦彦(IUCN-J アルバイト)

※なお、この作業部会のまとめの報告は、後日改めて、報告をさせて頂きます。