第7回8条j項とその関連する条項に関する作業部会~報告1日目~

今回の8条j項に関する作業部会では、COP11での合意に向けて8つの議題が議論に挙がっています。初日となる今日は、そのうちの2つと急遽次の日に議論するもの、計3つの議題を扱うことになりました。

まず、議論の前に、全体的な会合の場で、先住民族及び地域共同体を代表して生物多様性に関する国際的な先住民族フォーラム(International Indigenous Forum on Biodiversity;IIFB)などから今回の会合に対するステイトメントが発表されました。その中で、特に興味深かったことは、Indigenous and Local community からIndigenous Peoples and Local communityに変更して欲しいとするものでした。 この背景には、2007年の先住民族に関する国連宣言が国連に加盟する全ての国によって採択当時反対だった国も賛成に回ったことがあるからとのことでした。

では、議題ごとにその概要と議論内容について触れていきたいと思います。

1、 8条j項 と関連する条項のプログラムに関する進捗報告

この議題では、課題別(①遺伝資源へのアクセスと利益配分、②乾燥地及び湿潤地の生物多様性、③生物多様性と気候変動、④モニタリング、指標及びアセスメント、⑤森林研究に関する国際的な連合(IUFRO)による本作業部会のための進捗報告への貢献)及び地域別にこのプログラムがどう進んでいるのか、その進捗を報告します。第11回締約国会議への決議案では、第5回目の国別報告書(生物多様性国家戦略に相当)で、盛り込むべき内容(アグウェ・グー・ガイドライン(Awké: Kon Guidelines)の実施状況や国家戦略作りに先住民族及び地域共同体が参加をしているのか、など)をいくつか提案しています。
この議題における事務局で用意した決議案に関してはほとんどの国(EU、エクアドル、ヨルダン、中国、カナダ、イエメン、日本、ブラジル、マラウイなど)異論がなく、一部の国が新たな文書を提案していました。例えば、タイは、”ILCの効果的な参加をしていくためには、経済的な支援が必要であるということを記録(take note)する”、といったことを提案されていました。その他、多くの国が、自国の伝統的知識の取り組み、とりわけ名古屋議定書の署名及び批准に向けた準備を発表されていました。日本も”国内制度(domestic arrangement )を検討中”ということを話されていました。その他、マラウイが”農民の権利(Farmer’s Right)に関する政策を準備している”との話もあり、先住民族及び地域共同体の話にも、やはり農民は深く関わっているようでもありました。そして、最後に議長よりコメントを受けたドラフトは次の日に、事務局で改定したものを共有するということで、午前のセッションを終えました。

 

 2、 先住民族及び地域共同体の効果的な参加を促進する仕組み

この議題では、先住民族及び地域共同体の条約及び国内の意思決定への参加について状況を報告することになっています。先住民族や地域共同体の条約への参加に関しては、締約国が任意で拠出するボランタリー基金(通称“VB Trust Fund”と呼んでいる)が活用されており、その運用状況を報告しています。
1の議題と同様に、ここでもCOP11での決議案に対するコメントが行なわれました。基本的には、EUやノルウェーなど、原案を歓迎する旨を伝えるなどしておりました。しかし、一部の国や先住民族及び地域共同体から課題があることを指摘していました。例えば、国際条約への意思決定に関してその参加が認められつつも、いまだに国内ではその意思決定のプロセスの透明性や参加の確保が難しい国もあるとの報告や多くの途上国で生活をする先住民族及び地域共同体は電子媒体(例:インターネット)へのアクセスが閉ざされていることを指摘し、その改善に努める必要があるなどとしていました(なお、この議題のCOP11に向けた決議案においても翌日、コメントを受けたものを共有することになりました)。

 

3、 10条(特にc項に着目) に関する新しい主要な要素

8条j項と関連する条項のプログラムで新たな要素として、慣習的な持続可能な利用に焦点を充てた持続可能な利用が提案されています。そのサブの要素として、1.先住民族や地域共同体のための持続可能な利用及び関連するインセンティブ措置に関するガイダンス、2.10条(生物多様性の持続可能な利用に関する条文)と生態系アプローチの実行の中で、先住民族及び地域共同体と政府の関与(engagement)を中央及び地域レベルで高める措置、3.条約の様々なプログラム計画に10条(特に10条(c))を統合させる戦略、上記3点とそれぞれのサブ要素を達成するためのタスクを計16個挙げています。そのため、今回の作業部会ではこれから進めていく作業について議論を交わすことになります。
急遽議論が始まったこの議題ですが、まず、専門家会合の議長から専門家会合の報告が簡単に行なわれました。その後の議論では、特に法整備に関連したタスク(Task 3,4)に関して言及する国が多く見受けられました。詳細に関しては、翌日続けられることになりましたので、また改めて、報告をさせて頂ければと思います。

報告 小林邦彦(IUCN-J アルバイト)